東洋製薬化成株式会社は「心もからだも輝く健康づくりをめざして」を企業理念に、100年を超える歴史の中で蓄積してきた経験と最新のテクノロジー、全社員の熱意と創意工夫をもとに、医薬品の製造、受託製造及び研究開発を行っています。
今や多くの製薬企業が日本国内にとどまらず、グローバルへ医薬品を供給するようになってきました。
グローバルへ供給するには、米国FDAをはじめ、各国のGMP(Good Manufacturing Practice)適合の認証を取得する必要があります。グローバルGMP対応には品質保証体制の再構築とIT化による業務の電子化が必須だと考えました。業務フローを徹底的に見直し、国内GMPおよびグローバルGMP遵守を御旗に掲げ、従来は手書きで記入していた入出庫等の記録や手順等の電子化も強力に進めました。その結果、製造拠点で稼働しています11のコンピュータ化システムのほとんどを内製化させ,2023年6月12~16日までに行われた米FDA査察で軽微な指摘事項を2件受領したのみでデータインテグリティ対応など含めて合格することが出来ました。
コンピュータ化システムの内製化に深く関与した3名、水谷顧問、森竹課長、品質管理部の井戸氏 に話を伺います。
グローバルGMP対応への第一歩。文書管理と在庫管理のシステム化
IT戦略部 水谷顧問
―― コンピュータ化システムの内製化にむけて、まず取り組んだことは何でしょうか?
まず紙で運用されていた膨大な種類の文書を整理して、GMP文書配布管理システム「TGDDS」を開発しました。最新の手順書や製造手順と一体となった未記入の記録類はPCやタブレットで電子的に参照できます。オリジナル文書が改変されていないかを24時間毎に監視する仕組みになっています。また、監査証跡により各手順書を誰がいつ、何回参照しているかについても確認でき、教育訓練資料としても活用できます。
―― これらが整備された後に取り組んだことは何でしょうか?
原料や資材の保管管理を行う在庫管理システム「TIM」を開発しました。自動倉庫の管理システムと連携させ、倉庫の原料や資材などすべての品目にQRコードを出力し、それを読み取るだけでその原料資材が品質試験に合格し出庫可能かどうかを瞬時に確認できるようにしています。また試験に合格しないと、その後の工程に割り当てることがシステム上できないため、ヒューマンエラーの防止にも役立っています。
さらにトラブルの再発防止や予防措置(CAPA)を管理するシステム「CREAMS」では、不具合の原因や対策の概要をWord文書として作成し、サーバーに格納するだけでシステム内に記載内容を自動で取り込み、CAPA対応が現状どこまで進んでいるか、またはどの担当者が対応を遅延させているのかなどが一目で確認できるようにしました。CREAMSによって手入力する必要がなく、製造作業者のみならず経営陣含め社員全員がリアルタイムで状況確認ができ、マネジメントレビューにも活用できるシステムにしています。
コンピュータ任せにせず、ヒトの理解を大切にしたシステムの構築
IT戦略部 IT戦略化 森竹課長
―― 内製システムによって高度な電子化に成功していますが、その苦労されたことは何でしょうか?
コンピュータシステムの導入は、どうしてもコンピュータが主役になりがちですが、高い精度の品質管理を行うためにはコンピュータまかせではなくヒトの理解、ヒトの運用が重要になってくると考えています。そのため、将来的なコンピュータシステムの使用を想定しつつも、コンピュータシステムの使用を前提としない形で業務フローを整理するといった難しい作業を担当者にやっていただきました。例えばCAPA管理システム「CREAMS」では、WordでCAPAの報告書を作成するところまではシステムは登場しません。変更履歴やメールに添付できるなどのWordファイルの便利な点は利用しつつ、そのファイルをそのまま取り込むことで、システム上で参照や分析ができるようになります。すべてをシステム上で運用するのではないこの形は運用の手間はあるもののシステムの完成形のひとつではないかと思います。もちろん最初からこの形をイメージしていたのではなく何度もの検討や試行錯誤の結果たどり着いたのですが、このような経験によって品質管理や電子化への理解が深まり、開発する側も運用する側も成長したと感じています。
システムの有効活用のためのQA部門の取り組み
品質管理部 品質保証課 井戸氏
―― CAPA管理システム「CREAMS」作成にQA部門として深く関わったそうですね?
CREAMSは逸脱などのCAPA対応状況がリアルタイムにトラッキングでき、事象や対応実績が蓄積されていくシステムです。このシステムを最大限に有効活用するにはどのようなCAPA運用をし、どのようなデータを収集したいか、そうして蓄積されたデータをどう生かすか、IT部門とQA部門間で何度も話し合いを重ねました。今では弊社の医薬品品質システムの運用になくてはならないシステムとなっています。
内製システムである利点を活かした様々なシーンでの活用と、Quality Cultureの醸成
―― では最後に、今後の抱負をお聞かせください
水谷顧問:業務の多くをシステム化することによって、各システムの管理者だけではなく、社員の多くが非常に正確にシステムを運用している状況も「見える化」することができました。 電子記録と電子署名に関する指針 (ERES指針) 対応のシステムは監査証跡としてユーザーの操作を記録する必要がありますが、トラブルの原因究明といった使い方だけではなく、監査証跡から手順書をよく確認している人といった目立った発言はしないけれど、まじめに取り組んでいる人材の掘り起こしにも活用できます。 また、そういう人に意見を求めると非常によい提案をしてもらえることもあります。 わが社のような中小規模な組織だと判断が非常に早くできますし、内製化だと機動力もあります。中小規模の企業でもグローバル対応が可能だということが証明できたと思います。 今後も業務の質と効率の改善に取り組んでいきたいと考えています。
森竹課長:現在いくつものコンピュータシステムを開発し運用できているのは、それぞれの担当者が精度を高めることを目標にして取り組んでくれているからです。コンピュータシステムも、ヒトの運用する力が育っていくのと同じように育てていくことができると考えています。内製のメリットを活かし、これからもコンピュータシステムを成長させていきます。
井戸氏: グローバル基準のCAPA運用に達するまで、根本原因調査や是正・予防措置への取り組み、有効性評価の仕方など大きな壁がありましたが、CREAMSの導入や従業員への教育など社員一丸となって取り組み乗り越えてきました。今後も社内のQuality Cultureの醸成のため、各種システムを用いたより精度の高い医薬品品質システムの運用を目指して、日々取り組んでいきたいと考えます。
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