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Marketing 【COOインタビュー】米シアトル発のATOMO COFFEEが切り拓く、ビーンレスコーヒー市場の今とこれから

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【COOインタビュー】米シアトル発のATOMO COFFEEが切り拓く、ビーンレスコーヒー市場の今とこれから

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気候変動に伴う地球温暖化によって、コーヒー豆の栽培に適した土地が約50~60%減少してしまう「コーヒー2050年問題」。栽培適地が減り、コーヒーの供給が難しくなることが危惧されている。

こうした問題の解決のカギを握るのは、気候変動にも対応可能なコーヒー品種や、コーヒー豆を使わない代替コーヒー“ビーンレスコーヒー”の開発、環境負荷の少ない持続可能なコーヒーの生産だという。

このビーンレスコーヒー市場で急成長が期待されているのが、米国・シアトル発のスタートアップATOMO COFFEEだ。

今回は同社COO(最高執行責任者)を務めるEd Hoehn氏に、コーヒー豆を使わないビーンレスコーヒーの将来性や、パートナーシップ型のビジネスモデルで展開する理由について話を伺った。

リバースエンジニアリングの手法を用いて開発した“革新的な代替コーヒー”

——まずは2019年にATOMO COFFEEを創業した背景を教えてください。

Hoehn:ATOMO COFFEEの共同創業者であるAndy Kleitschは大のコーヒー愛好家で、その彼が「コーヒー業界において地球に優しい事業ができないか」と考えたのが原体験になっています。しかし、コーヒーの消費者としての立場からは、持続可能性やエシカル・ソーシング(倫理的な調達)といったコーヒー業界の直面する大きな問題に気付いていませんでした。

事業の立ち上げを検討していくなかで、フードサイエンティストと出会う機会があり「コーヒー豆のリバースエンジニアリング(既製品の構造や仕組みを理解するための分析手法)をやってみてはどうか」と助言いただいたのです。

そこから農業廃棄物処理のアップサイクルを経て、コーヒー豆の持続可能性を追求する一連のプロセスを構築し、ビーンレスコーヒーのプロトタイプ開発を始めました。

こうしたなかで、2つの重要なポイントがあります。

まず1つ目は、ビーンレスコーヒーというカテゴリーを作るのではなく、リバースエンジニアリングでコーヒーの分子構造と同じ自然由来の材料を見つけ、28の成分からコーヒー・フレーバーの香味を開発し、新たな嗜好性飲料を生み出したということです。

実際のコーヒー豆と同様に焙煎して、限りなくコーヒーの味わいに近いクオリティまで引き上げることができたのは、他社との明確な差別化要因になっていると考えています。

2つ目は、既存のコーヒー業界を置き替えるというのは全く考えていないことです。

我々はコーヒー業界に対して“ラブレター”を送っており、持続可能な商品を提供することで、コーヒー業界を支援していきたいという思いを強く持っています。

コーヒー豆の生産に大量の水が必要になること、CO2の排出など、コーヒー業界が抱えるさまざまな課題に対して、我々とパートナーシップを結んで、コーヒーの持続可能な生産の仕組みを作っていくことを念頭に置いています。

コーヒー業界のインフラを活用して商品を広めるパートナーシップ戦略

——コーヒーショップを開くのではなく、リバースエンジニアリングを用いてコーヒー豆を開発し、新たな嗜好性飲料を広げていく構想はどこから着想を得たのでしょうか?

Hoehn:コーヒーショップを最初に開業しようとすれば、非常にコストもかかりますし、インフラも必要になってきます。加えて、コーヒーチェーン自体もすでに寡占状態になっているため、そこにATOMO COFFEEが参入していくのはベストな選択ではないと捉えていました。

そこで、既存のコーヒー業界のインフラを活用して、地球に優しい商品を届けていくというビジネスモデルになったわけです。

我々はコーヒーショップチェーンのほか、コーヒーの流通メーカーやコーヒー豆の焙煎・加工を手がける事業者など、多様なコーヒー業界の企業とパートナーシップを組んで事業展開していくことを目指しています。

スターバックスやラッキンコーヒーといった巨大コーヒーチェーンも、我々のライバルだとは思っておらず、むしろパートナーだと捉えています。

コーヒー2050年問題でコーヒー供給量の減少が懸念されていますが、コーヒー豆だけではなく、ほかの農作物においても地球温暖化の影響でカカオ、オレンジなどの価格が非常に高騰しています。

そういった状況を見据えて、現在我々は世界中で約30社ほどのコーヒー企業と商談を進めておりまして、彼らの提供するコーヒーとATOMO COFFEEのコラボレーション商品の展開も企画していきたいと考えています。

たとえば、パートナー企業のコーヒー豆を50%、ATOMO COFFEEのコーヒー豆を50%を使用し、ブレンドコーヒーやエスプレッソとして提供することも可能なわけです。

こういった企業とのコラボレーションやパートナーシップを増やし、BtoBtoCの形でビジネスの拡大につながっていくのではと予測しています。

サイエンスに基づいた商品開発は大きな差別化要因に

——ビーンレスコーヒー市場では、ほかにもPeak State Coffee(キノコを使用した機能性コーヒー)やMinus COFFEE(ナツメヤシの種、レンズ豆など植物由来の原料を使用したコーヒー)といった企業も台頭してきています。このような状況下で、どのような勝ち筋を見出していく予定なのでしょうか?

Hoehn:我々の製品は、サイエンスに基づいて開発されたものとなっています。先述したように、コーヒーの分子構造を徹底的に分析し、植物由来の成分からコーヒーの香りや味を再現するために、何度も何度もテストを重ねました。

今の製品にたどり着くまでに5年という歳月を費やし、製品の開発や生産拠点の準備などを含めて約5500万ドル(約80億円)を投資したのです。

現状は、さまざまなコーヒー企業とパートナーシップを結んでいくフェーズであり、さらに規模を拡大していけるのは我々の優位性につながると思っています。

——まだ日本には、ビーンレスコーヒーはほとんど根付いていませんが、日本市場におけるビジネスプランについて教えてください。

Hoehn:日本市場のビジネス展開については「どうすればビジネスゴールを達成できるか」という形で、色々な方面から戦略を模索している段階です。日本の消費者の方と、どのようにエンゲージメントを深めていくかを考えていますが、1つの例として大手の小売企業とパートナーシップを結ぶことで、販路拡大していけないかと考えています。

さらにほかのチャネル開拓も検討しておりまして、ホテルチェーンと連携するなど、我々の持続可能な商品に興味を持ってくれるパートナー企業をより一層増やしていければと思っています。

—— それでは最後に今後の展望について教えてください。

Hoehn:直近では、スペシャルティコーヒー好きの方に向けて、コーヒー愛好家のインフルエンサーを巻き込んだマーケティングを企画している段階です。その取り組みを成功させるために尽力していきたいですね。

また、アメリカのGumption Coffeeや日本のash zero waste cafe & bar(æ)といったコーヒーショップにATOMO COFFEEの商品を販売し、スペシャリティーコーヒーのコミュニティにアプローチして、ファンを増やしていくことにも挑戦していきます。

(取材/文・古田島大介)

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