配筋検査システムのサービスを開始。建設業界の業務効率化で、カーボンニュートラルにも寄与
建設業界では、熟練技術者の高齢化や若手技術者の入職減少、さらには品質の厳格化などに伴い、現場における技術者の人材不足が大きな課題となっています。2024年4月1日からは、建設事業等を対象とした働き方関連法案による時間外労働の上限規制に対する適用猶予期間が終了し、労働環境の見直しや業務効率化がより一層、求められています。
こうした中で、プライム ライフ テクノロジーズ株式会社は、最新の技術を活用するDX化で業務の負担を軽減し、建設現場で働く人々が快適にものづくりに集中できる環境の実現を目指す「CONSAIT※1(コンサイト)」事業の開始について発表しました。その「CONSAIT」事業の第一弾として、プライム ライフ テクノロジーズの事業会社である松村組を含む「配筋検査システム協議会」に参画するゼネコン21社※2を対象に、AIを活用して鉄筋の立体配置を認識する「配筋検査システム」のサービス提供を2024年4月からスタートしました。同サービスの利用により、検査品質の向上と検査業務時間の短縮や業務の効率化、ひいてはカーボンニュートラルへの寄与が期待されます。サービス開始の発表後は、複数の建設企業や報道関係者からの問い合わせが相次ぎ、注目度の高さが伺えました。
今回、「CONSAIT」事業の狙いや「配筋検査システム」がカーボンニュートラルにど
のように寄与するかについて、プライム ライフ テクノロジーズ㈱ 建設ソリューション事業統括部 CONSAIT事業推進室 室長の塚本政介と、共同開発を進めてきたパナソニック㈱ エレクトリックワークス社 現場・ものづくり革新本部 現場ソリューション開発部 部長の岡田啓介さんに話を聞きました。
時間と労力を要するコンクリート構造物の配筋検査
コンクリート構造物は、鉄製の細長い部材である鉄筋を組んでからそこにコンクリートを流し込み固めていくことで強度や耐久性を持たせています。その鉄筋を適切な位置や本数で配置することを配筋と呼びます。「ワンフロアずつ配筋し、コンクリートを流し込んで固めていくのですが、コンクリートを流し込む前に建築基準法などに求められた通りに配筋がなされているかをチェックするのが配筋検査です」と塚本は説明します。
プライム ライフ テクノロジーズ㈱ 建設ソリューション事業統括部 CONSAIT事業推進室 室長 塚本政介
配筋検査では、鉄筋が正しく配置されているか、本数に間違いはないか、ずれはないかといった点をチェックするのですが、たくさんの鉄筋を図面や仕様書と照らし合わせながら確認し、記録していく作業はかなりの時間と根気が必要で、見逃しが発生する恐れもあります。今回、共同開発することになった「配筋検査システム協議会」に参画するゼネコン21社は同協議会ができる以前から21社が共同でAIを活用した独自の配筋システムの開発に向けた研究を進めていましたが、鉄筋の⽴体配置を認識する技術のハードルは高く、特にハードデバイスであるAIカメラの開発先を検討されていました。21社の中に、プライム ライフ テクノロジーズの事業会社である松村組も含まれ、同社を通じた情報交換から共同開発がスタートしたのは2020年9月のことでした。
AIと最新技術を組み合わせ、建築現場の課題解決を目指す
CONSAIT事業推進室のCONSAITとは、Construction(建設)、AI、ITを組み合わせた造語です。CONSAIT事業推進室は、元々パナソニックグループに所属していた部隊が前身であり、パナソニックが持つAIをはじめとする先進技術とデジタル技術の活用により、建設現場で働く人たちの業務負担を軽減し、快適にものづくりに集中できる環境の実現を目指して発足。その後、2020年1月のプライム ライフ テクノロジーズの発足とともに同社の事業として再出発した経緯があります。
CONSAIT= Construction (建設) × AI (人口知能) × IT(情報) (造語)
CONSAIT プラットフォーム イメージ図
CONSAITロゴ
CONSAIT事業推進室とこれらゼネコン21社は、「建築現場の課題解決を目指す思い」を双方で確認し、共同開発がスタート。技術面では、以前から共同検討していたエレクトリックワークス社に協力を仰ぐこととしました。
「CONSAIT」の開発当初から関わっているエレクトリックワークス社の岡田さんは「パナソニックの商品である配線器具、照明器具などは施工が伴う商材であることから、もともと建築、設備工事会社とは密接な関りがあり、施工現場の抱える課題については以前から把握していました。これらは我々が関わらせて頂いている建設業界全体の課題と認識し、何とか解決したいと思っていました。人手を要する作業については、パナソニックグループが持つデジタル、AI技術を掛け合わせることで現場の業務効率化に貢献できると考えました。今般の配筋検査システムの開発においては、当社が持つ、テレビの開発で培った画像認識技術とAI技術が生かされています」と話します。
開発時より苦労を共にしてきた二人。
パナソニック㈱ エレクトリックワークス社 現場・ものづくり革新本部 現場ソリューション開発部/PRMプラットフォーム開発課 主任技師 長田佳周さん(左)
パナソニック㈱ エレクトリックワークス社 現場・ものづくり革新本部 現場ソリューション開発部 部長 岡田啓介さん(右)
1つずつ課題を潰し、走りながら商品を育てる
できあがった配筋検査システムは専用のカメラで撮影した画像をもとに、配筋状況(本数、鉄筋径、間隔、配置)の計測を実施。あらかじめ登録した設計データと計測結果を自動的に照合することで、設計通りに配筋されているかどうかをチェックします。検査結果はクラウドサーバーにアップロードされ、関係者と共有できるほか、検査記録を検査帳票として出力できるようになっています。
試作品は2022年7月に完成し、共同研究参加各社の施工現場で実証実験がスタートしました。しかし、想像していた以上に生みの苦しみを味わいます。「夏場の施工現場の環境は過酷で、装置が熱を持ってしまい稼働しなくなってしまいました。それ以外でも会社によって求める指標や、帳票の仕様が異なっているために調整、統一を図らなければならず、これらを標準化する作業も必要でした」と塚本。装置には熱を逃がす部材を組み込み、計算についても簡易化することで熱の発生量を抑えるなど改良を加えたほか、共同研究参画各社とCONSAIT事業推進室の担当者でワーキンググループを作り、仕様の検討など課題を一つずつ潰していきました。「現場を何度も踏み、走りながら製品として育てていきました」と塚本はその苦労を振り返ります。すでにAIカメラの導入が進む「土木現場」よりも、さらなる正確性が求められ、導入が難しいとされる「建築現場」を対象としたAIカメラを用いた「配筋検査システム」が約2年間の現場での検証を経て、実用可能となりました。
CONSAIT Eye AI カメラ外観
CONSAIT Eye AIカメラ使用イメージ
■「CONSAIT」サービス内容
「CONSAIT Basic」(基盤・記録アプリ)、「CONSAIT Pro 配筋検査」(専用アプリ)、「CONSAIT Eye」(AIカメラ・専用デバイス)の 3 つのサービスで構成しており、システム開発には、パナソニック コネクト株式会社なども関わっています。
◎「CONSAIT」の詳細はこちら
やり直しのリスクを避け、カーボンニュートラル(CO2削減)に貢献
建築現場で「配筋検査システム」を導入することによるカーボンニュートラルへの効果として、岡田さんは4つを挙げます。まず、ペーパーレス化です。「現場事務所には帳票類がずらり並んでおり、指示書の数も計り知れません。これらの書類をデータ化することによって削減できる紙の量は相当数に上ります」。2つ目が、人、クルマの移動を減らすこと。「情報はクラウドで共有し管理することができるので、わざわざ担当者が現地に足を運ばなくても確認できます」。3つ目は、工事のやり直しという無駄がなくなることです。「検査漏れにより品質不良が生じた場合には、いったん建てた構造物の該当箇所を解体し、改めてコンクリートを打ち直さなければならないケースもあります。システムに任せればそうした漏れがなくなり、材料を無駄にすることがなくなります」。そして4つ目が、過去のデータの活用です。「例えば鉄筋やコンクリートの調達について、過去の失敗例を教訓に、正確な鉄筋本数の調達につながり、材料ロスの削減につながります」と説明します。
「CONSAIT」事業では、建設業界における「配筋検査サービス市場」を皮切りに、今後は「内装仕上げ検査サービス」、「クラウドデータ保管サービス」など、効率化、遠隔化、自動化をキーワードにさまざまなサービスやアプリケーションを展開していくことで、建設業界におけるDXパートナーとして業界全体をサポートする取り組みを進めるとともに、さらなるカーボンニュートラルの推進に貢献していきます。
※1:CONSAITは、プライム ライフ テクノロジーズ株式会社の登録商標です。
※2:配筋検査システム協議会 ゼネコン21社(2024年3月現在)
青木あすなろ建設 株式会社、株式会社 淺沼組、株式会社 安藤・間、株式会社 奥村組、北野建設 株式会社、株式会社 熊谷組、五洋建設 株式会社、佐藤工業 株式会社、大末建設 株式会社、髙松建設 株式会社、鉄建建設 株式会社、東急建設 株式会社、戸田建設 株式会社、飛島建設 株式会社、西松建設 株式会社、日本国土開発 株式会社、株式会社 長谷工コーポレーション、株式会社 ピーエス三菱、株式会社 松村組、村本建設 株式会社、矢作建設工業 株式会社
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プライム ライフ テクノロジーズグループは、カーボンニュートラル達成に向けて事業で使用する電力の再生可能エネルギー化による「RE100」を目指すなど、あらゆる可能性を探り、取り組みを進めていきます。
*カーボンニュートラル宣言*
プライム ライフ テクノロジーズ(株) 建設ソリューション事業統括部 CONSAIT事業推進室 室長 塚本政介
パナソニック(株) エレクトリックワークス社 現場・ものづくり革新本部 現場ソリューション開発部 部長 岡田啓介さん
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◎関連プレスリリース
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