株式会社ジェーシービー(以下、JCB)が2023年6月16日にリリースした「包括店子登録システム」は、順調にEC決済代行サービス事業者様に広がりつつあります。このサービスは、AIを活用して審査のスピードを向上させ、安全性を維持しつつ迅速な対応が可能になりました。
完全自動化によって加盟店の審査・登録プロセスが最短4時間に
――「包括店子登録システム」とはどんなシステムですか?
光山さん:JCBは、カード会員様に安全・安心にキャッシュレスを利用していただくために、不適切な商材を扱っていないか、問題のあるお店ではないかを審査した上で、お店様にJCBの加盟店になっていただいています。「包括店子登録システム」とは、クレジットカードを取り扱っていただく加盟店(店子と呼ばれます)を取りまとめている決済代行サービス事業者様(以下、事業者様)からの加盟店の申請を受けて、審査および登録のうえ、回答を行うまでの一連のプロセスを実行・管理するシステムです。
これまではメールで申請情報を送付いただき、そこから加盟店の審査・登録の大部分を人の手で行っていたため、事業者様へのご回答には最短でも2営業日かかっていました。今般一連のプロセスを自動化したことで最短4時間程度でカードのご利用が可能となりました。
具体的な流れは、事業者様がクレジットカードのお取扱いを希望する店子の申請を取りまとめます。その上で、「包括店子登録システム」に申請情報をアップロードします。システムは自動的に審査を行い、問題がなければ店子を加盟店として承認して加盟店番号を発行します。承認されなかった場合は、その理由も簡単に結果情報として返却します。
――リリースが2023年の6月でしたが、滑り出しはいかがですか?
光山さん:既存の包括事業者様の新システムへの切り替えは順調に進んでいます。新システムを利用いただくことは、事業者様に様々なメリットがあります。例えば、審査結果が早く出ることで事業スピードを上げることができるなどです。多くの事業者様がこのようなメリットに賛同し、積極的に新システムに切り替えていただいています。
サービス開発のきっかけはコロナの影響によるEC利用者の増加とキャッシュレス化の加速
――このサービスはどういうきっかけからはじまったのですか?
光山さん:コロナ禍において外出が不要なECの利用者が急増したことや、業界としてキャッシュレス決済市場の拡大という背景があり、私たちのプロジェクトは2021年4月に開始しました。包括事業者様の取引件数も大きく伸びており、より簡易でシームレスなやりとりとスピードの向上がニーズとしても高まっておりましたので、まずはEC決済包括事業者様を対象にしたサービスを開発に着手しました。
遠藤さん:私たちの開発手法として、まずは小さな範囲から実験的にスタートし、うまくいったら次々に機能を追加してサービスを大きくしていくという「アジャイル開発」を採っています。
テスト段階でも事業者様からのご意見や要望を取り入れ、より良いサービスとなるように工夫して機能改善を図ってきました。
――サービス開発にあたって、どのような想いで取り組みましたか?
森川さん:コロナによる環境の変化もありますが、近年は人手不足による業務の自動化のニーズが高まっています。私たちは、新しいIT技術も活用したシステム処理による業務の自動化を進めることによって、世の中により便利で効率的なサービスを提供し、事業者様のDX化や業務効率化にも寄与していきたいと考えています。
文脈まで読み解くAIの機能でより正確な審査が可能に
――「包括店子登録システム」では、具体的にAIがどのように活用されているか教えてください。
光山さん: AIを導入した主な目的は、審査精度の向上にあります。AIの活用により審査精度を上げることは、不適切な商材を取扱うサイトの加盟抑止に繋がり、結果的にカード会員様に対する不利益の低減にも繋がっていきます。
具体的には、サイトで使用している商材に関する情報を確認する際に、AIを利用したWebクローリング(プログラムがWebサイトを定期的に巡回し、情報を取得・保存する技術)を行っています。
AIの導入によって、不適切な商材の取扱いを排除し、問題のないサイトはスムーズに承認できるようになりました。
JCBの持つ「安全・安心」で差別化
――同業他社さんも似たようなサービスを始めていると思うのですが、貴社ならではの差別化ポイントはありますか?
森川さん:JCBは、安全・安心という面が強みだと認識しています。これまでの審査品質は落とさず、その上で審査・登録のスピードと利便性を向上させています。また、事業者様が申請情報をアップロードするWEBサイトも安全・安心なサービスを提供するため、多要素認証の導入などセキュリティの強化を行いました。
――あくまでも安全・安心という部分を大切にされていて、すべてはそこに基づいて行われているのですね。それを知れば、これからこのサービスを利用したいと検討されている方や加盟店になることを考えている方々は、安心して申請していただけるのではないでしょうか。
光山さん:キャッシュレス決済のニーズが高まっていることで、加盟店の申請件数は急激に増加しています。具体的には2022年10月から2023年10月の一年間でおよそ30%の増加が見られます。このような状況下においても新システムを活用することで品質よくスピーディーな対応ができていると認識おります。またスピードが求められる中でも丁寧さを失わないことが、JCBらしさにつながっていると感じています。
サービスの今後に向けて
――実際に本サービスを導入した事業者様の声はどうでしたか?
遠藤さん:「自分たちのシステムに取り込めそう」とか「RPAと組み合わせて使えるかもしれない」といった声はよくいただきます。安全性を最優先に考えるカード会社にとっては、なかなかスピードを追求するのは難しい部分もあります。しかし、人手に依存せずにスピードを向上させるためには、有効なシステムの導入が必須です。今後は実店舗の包括事業者様への展開を行うほか、将来的には他のカード会社様との協力も視野に入れ、業界全体の効率化と安全・安心の向上をめざしています。
※ 2023年12月にインタビュー実施。情報はインタビュー当時のもの。
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ