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STORY 自治体職員にとって欠かせないサービスとなることを目指して。生成型AIで調達事務を自動化する「プロキュアテック」開発のきっかけと自治体DXへの思い

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自治体職員にとって欠かせないサービスとなることを目指して。生成型AIで調達事務を自動化する「プロキュアテック」開発のきっかけと自治体DXへの思い

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個人のフルネームをそのまま社名にした奇妙な会社。


川口弘行合同会社は2017年12月に県庁の職員住宅の一室からスタートしました。目指すは全国の自治体が抱える課題を最小の投資で解決すること。

最小の投資を維持するために、会社の規模を限りなく小さく保ち、他社が手をつけられないニッチな課題解決に取り組んでいます。



代表社員の川口は全国の数多くの自治体でCIO補佐官を務めた情報政策のエキスパートであり、現在も東京都港区や埼玉県越谷市などの情報政策業務に携わっています。

その経験から、自治体DXの根幹が「調達事務」にあることを見抜いた当社は、これらの品質を向上させることが情報システムの投資対効果を高め、安定稼働を促し、行政サービスを向上させるキーポイントなのではないかと考えました。


このようにして、2019年にリリースしたのが、独自の理論に基づいて調達仕様書を自動的に作成するシステム「プロキュアテック」(https://www.procuretech.jp/)です。

しかし当時は当社の理論をプログラミングで再現することが難しく、自動生成できる割合は全体の70%〜80%に留まっていました。


※プロキュアテック


その後「プロキュアテック」は少数の自治体での利用に留まっていましたが、2023年に全国の自治体に向けた新サービスとして生まれ変わることになります。


そのきっかけとは? そして自治体DXに対する当社の思いとは?

このストーリーではそんな小さな会社が挑む「自治体の内側を変えていくサービス」をご紹介します。

成熟していない自治体の調達事務を変革する

近年、DX(デジタル変革)の波は自治体にも押し寄せてきています。総務省では「自治体DX推進計画」を掲げ、全国の自治体にデジタル技術を活用した業務改革を促しています。

しかしながら、自治体のDXは内部の職員が自ら手を動かし実現するケースが少なく、多くは公共調達によって選ばれた事業者と委託契約し業務を発注しています。


つまり、自治体DX=公共調達(入札、プロポーザル)ということです。


自治体側は自らがどのような課題を抱え、解決したいのかを調達仕様書として文書化し、それを適切に事業者に伝えなければ、システムによる投資対効果は得られません。

それどころか、不十分な品質のシステムのまま業務を継続するという、負の遺産を抱え込むことになり、結果的に自治体の基礎体力を奪っていくことになります。


ところが、自治体における調達事務は成熟しているとは言えません。

他自治体の事例を丸パクリしたり、数年前に使った調達仕様書の日付だけを変えて再利用したりと、その場しのぎの対応をしているケースが散見されています。

自治体の課題はその自治体固有のものであり、日々変化しているにも関わらず、です。


さらに自治体との契約を望む事業者は、「自治体営業」と称して自社に有利な機能提案を非公式に打診したり、職員に代わって調達仕様書の草案作成を引き受けていたりすることもありました。

これは違法行為であり、発覚した場合、職員は懲戒免職の対象となります。


※事業者から提示された機能要件の一部。赤枠の箇所で自社システムに誘導している。


自治体の職員は一般事務職として採用され、様々な部署を異動していきます。これは事業者との癒着を防ぐための方策の一つなのですが、一方で業務や情報システムに対する専門的知見が蓄積されにくい構造にあります。

さらに情報システムの調達は数年に一度というペースとなるため、ほとんどの職員が過去の自分の経験を活かすことができません。そのため、唯一残された、過去の調達事務に係る文書に職員が頼るのも仕方ないことなのかもしれません。

プロポーザル(企画競争)における自治体の誤解

公共調達には様々な手法があります。一般の方がイメージしやすいのは、定められた要求基準を満たした上で最も価格の安い事業者と契約する「最低価格方式一般競争入札」でしょう。


しかし、この方式は主に物品(モノ)を購入するために用いられるもので、発注者である自治体が対象となる「モノ」についてあらかじめ熟知している必要があります。

前述のとおり、業務や情報システムに対する専門的知見に乏しい状況では、この方式を採用するのは困難です。


そのため、調達の対象を「モノ」に限定せず、モノをとりまく活動やサービス(コト)までを含めて、自治体の課題を解決するための提案の良し悪しを評価し、適切な価格で良い提案を示した事業者と包括的に契約するという方式が主流となりました。


これを「プロポーザル(企画競争)方式業者選定」や「総合評価方式一般競争入札」と呼びます。


プロポーザルでは、自治体側は「効果的な課題解決策」を期待し、事業者側は「自治体に響く良い提案」を出したいという、双方の協力が不可欠です。

本来、そこには自治体と事業者との間の対立構造は存在しません。したがって、自治体側は解決したいテーマを事業者にわかりやすく示す必要があります。


ところが、自治体側が自身の課題をうまく言語化できず、それをごまかすために、


私は漠然と困っています。さて、何に困っているのか当ててごらんなさい


というような奇妙なプロポーザルが横行しています。

事業者側がこのゲームに勝つためには、


  • 自治体が認識している正解を様々な手段で入手する
  • 「自分たちの提案こそが正解である」と誘導する


のいずれかをしなければなりません。

その結果、自治体側に非公式な接触を繰り返し、逆に公正な調達を阻害する状況になっていることは指摘しておきたいと思います。

不慣れな調達事務の負担を減らし、公正な調達環境を実現する「プロキュアテック」

当社は自治体職員にとって不慣れな調達事務の負担を減らし、さらに公正な調達環境を実現させるために、情報システムを用いてこの事務を自動化することにしました。

こうして開発したのが「プロキュアテック」(https://www.procuretech.jp/)です。


自治体側で、解決したい課題や現在の状況、導入したいシステムの構成や制約条件などを入力することで、プロポーザルで必要な調達仕様書(提案依頼書)や情報提供依頼書(RFI)、見積書の様式までを自動的に作成するというシステムです。

入力された条件などから、仕様書の構成を自動的に組み替えられるような推論型の人工知能技術を使っています。


※仕様書自動作成のイメージ。3つのExcelシートを投入するだけ。


このプロキュアテックを使うことで、調達仕様書の初版作成に要する時間を「数日」から「数分」に短縮することができました。


それだけでなく、不慣れな事務に向き合わなければならない職員の心理的な負担を軽減することもできたのです。その結果、職員は苦手な作業の着手を先延ばしにせず、事務処理に要する期間を十分に確保することができるようになりました。

期間が十分に与えられたことで、調達仕様書の品質も向上し、導入するシステムの品質向上、その後のトラブルの抑止にもつながっています。


※自動的に作成された仕様書(素案)

ボトルネックとなる稼働時間を、ChatGPTを活用した仕組みで解決

「プロキュアテック」は自治体の調達事務を変える起爆剤になりえるシステムでしたが、いくつかの課題が残されたままでした。

当時のプロキュアテックは職員が入力した文言がそのまま仕様書の文面に反映される仕組みとなっており、自治体の抱える課題を言語化する部分は職員の力量に委ねられていました。


そのため、プロキュアテックを使う場合は、当社のコンサルタントが職員と対話しながら、一度「情報化企画書」を書き上げ、それらを初期条件として入力する運用としていました。

全体の70%〜80%は自動生成できるものの、残りの約20%の部分は人力で処理していたのです。その結果、コンサルタントの稼働時間がボトルネックとなり、多くの自治体にサービスが提供できない状態が続いていました。


そのような状況の中、OpenAI社が発表したChatGPTのニュースは衝撃でした。

すぐにChatGPTを試用して、そのポテンシャルに驚愕したことを覚えています。


この技術が、プロキュアテックで欠けている最後の1ピースを埋めることができるかもしれない


早速、プロキュアテックの中に生成型AIの機能を組み込みました。最初のプロトタイプはわずか一週間で開発しました。


※プロキュアテックと生成型AIの組み合わせを思いついた場所は、台北市の公園でした。


この時点で世の中でのChatGPTの受け止められ方は「チャットによって様々な質問に答えてくれる人工知能サービス」だったかと思いますが、当社は自社開発の推論型AIと相互連携し、性質の異なるAIがデータをキャッチボールしていく仕組みを独自に構築することにしました。


職員の頭の中にある漠然とした考えをメモ書きしていただき、そこからメモ書き→仮説→推論を繰り返すことで文章を自動的に書き直していきます。

現在ではReActと呼ばれる方式かと思いますが、これにより生成型AIによる自由な文書生成を行いつつ、全体の調達仕様書の構造を破綻させない仕組みが実現できています。


また初期条件の入力をExcelのワークシート(情報化企画書)を読み込ませる方式に変更しました。

これは、生成型AIを利用する上で懸念材料となっている「不用意な情報の流出」を抑止するためです。一般の職員にWebの画面での直接入力を許してしまうと、気づかないうちに不用意な情報を入力していた場合に、それをチェックすることができません。


※情報化企画書の例。Excelのワークシート形式。


一見、センスの悪い方法かと思われるかもしれませんが、自治体の経営層の関心事はリスク対策の方にあるのです。自治体の現場を熟知している、当社ならではの配慮と言えるでしょう。

提案書審査にかかる負担も解決し、人間の意思決定を支援する役割を担う

生成型AIを組み合わせた「プロキュアテック」は全国の自治体に驚きを持って受け入れられました。


うまく言えなかったけど、自分が解決したい課題はこういうことだったんだ


プロキュアテックから出された仕様書の改善提案は、自分の中に無かった新しい気づきを与えてくれた


調達仕様書という形で文書が生成されるので、複数の事業者に同じ条件で意見照会ができるようになった


事業者からの機能提案に対しても、客観的な判断を下せるようになった


また、プロキュアテックのもうひとつの機能である「事業者からの提案書の自動審査機能」にも大きな期待が寄せられています。


※提案書自動審査のイメージ。事業者からの提案書をプロキュアテックが読み取る。


これは、プロポーザルにおける審査事務において、生成型AIが事業者からの提案書を読み取り、「この提案書が調達仕様書で要求された内容を満たすのか、点数をつけるのならば何点ぐらいなのか」を評価するというものです。

調達仕様書作成と併せて、この提案書審査は自治体側の大きな負担となっていました。

もちろん最終的に意思決定するのは人間の仕事となりますが、それを支援する役割もプロキュアテックでは果たすことができるようになっています。

自治体職員にとって欠かせないサービスになることを目指して

プロキュアテックは自治体職員にとって欠かせないサービスになることを目指して、現在も進化し続けています。

その上で、自治体の役割のひとつである「地域産業の育成」にもプロキュアテックを使った取り組みは有効なのではないかと考えています。


都市部ではあまり気づきませんが、地方ではデジタル技術で地域の課題解決を担う事業者が減少傾向にあります。

地域の中で大手の事業者や外資の事業者と狭い領域ででも戦っていけるような事業者を育成するためには、自治体は実際の委託業務案件を通じて経験を積んでもらうことぐらいしかできないかもしれません。


そのためには公正な調達環境のもとで、自治体側は課題を言語化して広く示す訓練、地域の事業者は自治体から示された課題を元により良い提案をする訓練、そして受託した業務を着実に完遂させる経験を積み重ねることが必要なのだと思います。


プロキュアテックを通じて、自治体の未来が、そして地域産業の未来がさらに広がることを願って。




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