定員割れの状況から一転し、人気校となった東葉高校で行われた学校改革とICTを活用した英語授業の秘訣について、西村校長と英語教員の菅原先生にお話をお聞きしました。
崖っぷちの状況、失敗は許されない覚悟で臨んだ学校改革
——どのような経緯で学校改革を始められたのですか?西村校長:当校は女子校としてスタートし、2005年に共学になりましたが定員割れが続き、今後の少子化問題を考えた結果、生き残りをかけて学校改革を始めることにしました。
それが、5年前のことになります。当時、千葉県内有数の進学校である市川高校の進路部長や広報部長をしておりましたが、姉妹校の東葉高校の学校改革の旗振り役として赴任することになりました。
偏差値70の高校からの転任ということで、少し不安はありましたが、失敗は許されない覚悟で学校改革に臨みました。
——どのようなプロセスで学校改革に着手されたのですか?
西村校長:学校改革でまず大切なことは、現状把握です。現状を把握せずに、改革を起こすと必ず失敗します。
最初の1年間は副校長として、先生方の性格や適性、そして生徒が求めているものを肌で感じながら、東葉高校の特色に合った学校改革をしていくことを大切にしました。
東葉高校の担任の先生方は若くてやる気があるのですが、学校改革に向け、組織的に動いた経験はまだありません。良い提案があっても、声の大きな人に遠慮してしまうところがあり、ジレンマを感じました。
また改革前の生徒の様子も良い状態ではありませんでした。欠席遅刻が多く、授業中に寝てしまう生徒も多かったです。クラブ活動はバレー部が3人、サッカー部が8人といった状況で、人数が足りず練習試合もできませんでした。
年度途中に部活を辞めてしまい、時間を持て余すとアルバイトにはまります。その結果、生活が不規則になり、授業に集中できなくなるという悪循環が生まれます。この風土を断ち切るのに約3年はかかりました。
——現状を把握された上で、どのような改革に取り組まれたのでしょうか?
西村校長:学校改革に「例年通り」という言葉はないと考え、「わくわくする学校・楽しい学校を追求すること」をキーワードに、毎年100の改革を行うと決めました。
クラス編成やカリキュラム、設備、購買部のお弁当に至るまで、あらゆるところで改革を進めてきました。
特に生徒に人気があるのは、「よしもとライブ in 東葉」です。よしもとの旬の芸人さんの和牛、ニューヨーク、トレンディエンジェル、ミキ、マヂカルラブリー、インディアンス、コットンなどが来てくれました。
また、毎年生徒にアンケートを取って、制服やバッグなどは少しずつマイナーチェンジしていき、生徒の要望に近づけています。
スマートフォンも最初は没収していましたが、生徒会と話し合い「便利なものは使った方が良い、ルールを守って使おう」というかたちで休み時間や放課後、さらには授業でも使うようになりました。購買の自販機も160円と高かったので値下げし、お弁当も改良しました。
図書館改革としては、なかなか生徒が図書館に来てくれなかったので、芸能人の写真集を前面に出し、また漫画本も導入しました。今では図書館にたくさんの生徒が来るようになり、明るい雰囲気となりました。
このように、固定観念を変えなければ学校改革はできないと思っております。
学校改革の大きな目玉は英語の授業
——授業カリキュラムについてはどのような改革を実施されたのでしょうか?西村校長:「超攻撃的なカリキュラム」というものを作りました。東葉高校には英数国が苦手で入学してくる生徒が大半です。ですから、まずは高校から習う科目で勝負をしていきます。例えば文系の日本史や政治経済といった1教科に特化して、入学時から一般的なカリキュラムの倍の時間を取り組んでもらいます。
そして高校2年生の後半の模試で、社会の偏差値が60〜70くらいの高い結果が出ると、生徒は非常にやる気が出ます。
そのようにモチベーションを上げてから、苦手教科の古典や英単語といった部分も固めていくことで、大学に合格していくという作戦です。
英国数の中でも、特に英語に関しては学校を上げて注力しています。
——東葉高等学校では、なぜ英語に力を入れているのでしょうか?
西村校長:英語は、文系も理系も大学受験に必須であり、逃げられない科目です。また、語学は積み重ねが必要で、習得に時間がかかります。こういった英語学習を担当の教員だけに任せていては負担が大きいと考え、私が先頭に立ってユニークな英語教育に取り組んでいます。
菅原先生:近年、大学入試における受験英語が複雑化しており、外部試験の利用など幅広い受験スタイルが広がっているという現状があります。英語4技能をはじめ、長文読解や文法などの学習のためにも、単語の習得をしっかり行うことが大切だと考えています。
——Monoxerを導入して、英語の成績は変わりましたか?
菅原先生:Monoxerを導入してから、目に見える成果が出ています。Vテストでは連続して満点をとる生徒数が増えました。2021年度を通じて、特進クラスでは年間平均スコアが96.7点、進学クラスは昨年度の75点弱から5点以上アップして80点を超えるようになりました。
また、模試や英語検定でも結果が伸びてきました。英検2級合格者が104名(3年49名、2年46名、1年9名)出ております。準1級も7名出ました(2023年2月時点)。今までからすると考えられない結果です。今後はもっと合格者が出るのではないかと楽しみしています。
5年で偏差値が13上昇して人気校に
——改革の成果はいかがだったのでしょうか?西村校長:改革を始めた翌年から定員を超える出願があり、千葉県では人気度がトップクラスになりました。偏差値は5年で13上昇しました。
また、生徒に向けて授業評価アンケートも毎年実施しており、改革1年目は最高値4.0中3.5以上の先生が28%だったのですが、4年目で53%にまで増加しました。先生の間でも、授業はお互い自由に見学して高めていこうという風土ができ、頻繁に授業研修をやっています。
偏差値UPの先に目指す学校の未来
——今後は、東葉高等学校をどのようにしていきたいとお考えでしょうか。私は小学生の時からヤクルトファンなんですが、昔のヤクルトはとても弱かったのです。下位の球団が順位を上げるには、3連戦を2勝1敗で戦っても差は縮まりません。3連戦連勝しないと逆転できないのです。
偏差値も同じで、少し上がると学校も安心してしまい、改革の手を止めて元に戻ってしまうことが多いです。また、偏差値が上がると難易度も上がるため、受験生が減って次の年は偏差値が下がってしまい、1勝1敗となることが多いです。しかし、私は3連勝しか考えていません。
そのためには、毎年連続して100個の新しいチャレンジをしていくことが大切です。これが偏差値アップの秘訣だと考えております。
また、当校は飛躍的な成績の伸びを見せていますが、進学校にしようとは思っていません。
これからの時代を生き抜くためには、ただ大学に合格することだけではなく、起業してビジネスができる人間になって欲しいと私は考えています。
「お金を儲ける」というと、日本ではイメージが良くありませんが、国際社会においてもっと貪欲さが必要だと考えています。その延長線上に大学進学があるのです。それには、勉強だけでなく部活動にも力を入れていきたいと考えています。
現在、ダンスドリル部は全国優勝、テニス部は全国大会出場など結果を出している部活が増えてきました。限られた時間の中で部活動を行うためには、効率的な学習が必要です。そのためにも、MonoxerをはじめとしたICT教育の存在が必要不可欠だと思っています。
<インタビュイープロフィール>
西村 桂 先生
東葉高等学校
校長
市川中学校・高等学校に33年間勤務。同校で広報部長、学年主任などを歴任。2016年4月、東葉高等学校に副校長として着任。翌年、校長に就任。2018年3月、千葉大学教職大学院スクールマネジメント科修了。
菅原 直弥 先生
東葉高等学校
英語科教師
中央大学文学部英語文学文化専攻卒業。Monoxer導入。グローバル教育責任者。当校の英語教育の発展に貢献。現在は英語教授法(TESOL)など応用言語学を研究。
<著者プロフィール>
中村大志
モノグサ株式会社
広報
2013年新卒で株式会社マイナビ入社。求人広告の営業に従事した後、2015年より食品・ヘルスケア専門のPRエージェンシーに入社して食品やサプリメント等の商材のPR業務に従事。2020年にモノグサ株式会社へ1人目の広報担当として入社後、自社と提供しているプロダクト「Monoxer」の認知向上と支持者の増加に向けて、PR活動を担当している。