株式会社RoboSapiensは、代表取締役 長尾俊の学生時代からの夢や、結婚して子を持つ親として将来の社会課題を解決したいという思いで設立されたスタートアップです。このストーリーでは、『BambooBot(バンブーボット)』という製品が生まれたストーリーとともに、社名やロゴに込められた長尾の夢や思いもお伝えいたします。
「人とロボットの共生」する社会を目指して。RoboSapiensを設立した理由
今回、『BambooBot』という製品を語る前に、長尾がなぜRoboSapiens(ロボサピエンス)という会社を設立したかを先にご紹介できたらと思います。
株式会社RoboSapiens 代表取締役 長尾俊(ながお しゅん)
長尾は1988年7月3日、神奈川県横浜市生まれの35歳(2023年12月現在)。
東京大学工学部機械情報工学科では、胎児手術のための立体視技術の研究。東京大学大学院情報理工学系研究科では超指向性スピーカを用いた音声ガイドシステムや立体視展示ディスプレイの研究に従事しました。
手術や美術展示における、人とのインタラクションに主眼を置いたインタフェース研究というのを主としておこなったそうで、2012年度の「未踏クリエータ」に選ばれています。「未踏クリエータ」というのは馴染みのない言葉なのですが、毎年度、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が、未踏IT人材発掘・育成事業をおこなっており、長尾は2012年度に「超指向性スピーカを用いた実物体音像定位AR」というプロジェクトのチーフクリエータとなっています。
そして長尾は2012年、株式会社ヒトクセを設立、取締役CTOに就任し、主にインターネット広告におけるインタフェース開発に従事しました。
ヒトクセでは、天気やニュースに応じた広告を出せるFIT ADなど、主にインターネット広告におけるインタフェース開発に従事する一方、営業活動もおこない、年間売り上げで社内トップになったこともあるそうです。
株式会社ヒトクセ 取締役CTO時代の長尾
ヒトクセの事業は順調だったのですが、お子さんの誕生がきっかけとなり、徐々に老齢化や人口減少といった社会課題への関心を強め、自らの専門領域のスキルを活かし「人とロボットの共生」する社会の実現のため、2020年に株式会社RoboSapiensを設立したのです。
最近、2035年問題、2040年問題といって騒がれていますが、長尾は、自分の子供が大人になったとき、たとえ日本の人口が半分になっていたとしても、今以上の豊かさを維持するには、様々な場面で自動化が必要不可欠と考えたそうです。
そのためには、人は価値を発揮できる領域に集中し、ロボットに任せられることはどんどん任せていける「人とロボットの共生」する社会を実現しなくてはならず、長尾は自ら技術開発に取り組み、人を中心としたインタフェースを第一に置いた、人と共生可能なロボット開発に取り組むことを決断したのでした。
社名とロゴに込めたのは、ロボットが人と共生する存在となる未来への想い
人類は「ホモ・サピエンス」という種に分類されますが、新たな種とも言えるようなロボットの生態系: 「ロボ・サピエンス」を長尾は形成したいと考え、RoboSapiensという社名を思いついたそうです(下記社名ロゴ)。
今は機械やロボットは物として扱われていますが、ロボ・サピエンスは、ロボットが意思を持ち、生存や労働の権利を持ち、人と共生できるような存在になればと考えて
いるそうです。
株式会社RoboSapiensの社名ロゴ
会社ロゴの右の点は、黒色が猿から人、青色がロボットを示し、サルからヒトへの進化を示した図から発想したそうです。イラストで表現すると、下のイラストのようなイメージです。
「BambooBot」の誕生まで。特許を取得したロボット技術で課題解決へ
◇最初に目指したのは、「ラストワンマイル」のための自律移動ロボットだった
長尾が最初に開発しようとしたのは、「ラストワンマイル」のためのロボットでした。物流の世界では、車の自動運転がレベル4や5になり宅配が自動化されたとしても、マンションやビルの入り口から、自室やオフィスの入り口までのお客様へ商品を届ける物流の最後の区間のことを、「ラストワンマイル」といい、その自動化を実現する自律移動ロボットを開発したいと長尾は考えました。
大きな課題の一つに、エレベーターの乗り降りがありました。自律移動ロボットがエレベーターに乗り降りするには、二つの方法が考えられました。
1.通信でエレベータを呼び出す
2.物理的にボタンを押して呼び、行き先のボタンを押す
中国など海外では1.の方法が普及していたのですが、日本ではセキュリティなどの関係からそれは難しく、2.の方法で進めることにしたそうです。
長尾はロボットアームでスイッチを押す方法を開発しようとしましたが、エレベータの広い範囲のスイッチを押すためには、ロボットアームが大きく重くなってしまい、エレベータ内でアームが思うように動かせません。
その時、長尾が思いついたのが、大学の研究室の先輩が東京大学総長賞を受賞した、巻尺機構のアクチュエータでした。その先輩とは、nomenaの設立者で、東京オリンピック・パラリンピック聖火台の機構設計も担当された武井祥平さんでした。
長尾は武井さんの協力を得て、巻尺機構を利用することで省スペース化・軽量化を実現し、スイッチを押す動作をおこなうことができる巻尺アクチュエータを開発。
エレベーター押下の機構
そして、開発した武井さんとともに、2021年に特許を取得したのでした。
取得した特許証
そして、巻尺アクチュエータを採用し製品化されたのが、Karugaroo(カルガルー)でした。
自律移送ロボットKarugaroo
◇戸田建設様からのお声掛けからスタートした『BambooBot』開発
しかしながら、物流の「ラストワンマイル」には競合が多く、なかなか厳しい状況でした。そんな時、戸田建設様からお声掛けがあり、巻尺アクチュエータの縦と横のxy軸までは必要なく、高さ方向で伸縮する機構を利用して、建物内の空気質の計測をできるようにしたいというお声掛けがありました。
それまで戸田建設様では、ビル内環境を最適に保つため、空気質などの環境計測を固定センサや移動ロボットでおこなってきたそうです。しかし、高さを変化させて計測することができないことが課題となっており、この巻尺アクチュエータの機構を使うことで解決ができるのではというお考えだったそうです。
戸田建設様との共同研究のフィードバックもあり、2022年11月、環境計測や設備点検などの施設管理を人の代わりに行うロボット『BambooBot』が発表されました。
この『BambooBot』は、3次元のあらゆる位置での計測を可能にするセンサーロボットです。巻尺アクチュエータの機構を用いた伸縮機構で40cmから2mの高さまでセンサーやカメラを昇降することができ、自律的にルートを巡回することが可能です。
取得した温度・湿度・空気質・映像などのデータを3次元マップに描画することができたり、設備のシステムと連携することができ、設備のランニングコストを下げ、入居者の満足度を向上させることにも寄与するというものです。
ところで、この『BambooBot』の名前の由来ですが、ニョキニョキ伸びてくるものということで、タケノコからの連想での命名したそうです。下の写真にもあるように製品ロゴにもそのイメージが反映しています。
3次元のあらゆる位置での計測を可能にする自律移動ロボット『BambooBot』
あらゆる場所での計測・撮影機能で広がる「BambooBot」活躍の場
PR TIMESで、『BambooBot』をプレスリリース配信したのは、2022年11月末でした。1年ちょっとが経過し、最近の状況を少しご紹介すると、
・倉庫やスーパー、図書館などの高い位置まで棚がある環境で、『BambooBot』を活用して高い位置での撮影をおこない棚卸し確認する。
・データセンター(これも高い位置の棚)でのサーバー監視やアナログ計機読み取り。
・非接触生体センサを『BambooBot』に載せて、病院内での人の健康状態見回り。
といったニーズで、共同研究をしたり、実際に使い始めていただいています。
今後も高所作業などの危険な作業の代替や、見回りなどでの活用で『BambooBot』の活躍の場をひろげていきたいと考えています。
親として、次の世代に豊かな生活を。ロボットを通して実現したい未来
長尾は当初、孤独死など高齢化社会での独居老人問題を解決するような、独居老人の見守りや、荷物や食べ物を部屋まで持ってくるような、人と心を通い合わせられ、生活をサポートをするロボットをつくりたいと思っていました。
また、子供ができてからは、将来日本の人口が半分になったとしても、親としては子供には今より豊かな生活が出来ればと考え、社会インフラを自動化することで子どもの未来を豊かにしていきたいと考えているそうです。
『BambooBot』、そして今後、長尾が開発し世に送り出していく製品が、日本や世界の社会課題を解決し、人口が減少してもなお豊かな生活が維持・向上できる「人とロボットの共生」する社会が実現することを楽しみにしたいと思います。
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