多くの企業で推進されているDX(Digital Transformation / デジタル変革)の取り組み。当社も例外ではありません。なかでも最近は「ロボットの市民開発」というキーワードが飛び交っています。
ITの専門家ではない各部門の社員自身がロボットを開発し、日頃の業務を自動化していく。当社ではそんな風景が当たり前のものとなりつつあるのです。現在までにつくられたロボットは約600台、年間約30万時間分の業務を自動化するという成果も現れ、DXが社員にとって身近な取り組みとなりました。なぜ当社はボトムアップのDXを追求するのか。どのようにして実現しているのか。ロボットの市民開発を主導するRPAサービス課の責任者、塚本康平(BS本部 RPA&セールスフォースCOE部長)に聞きました。
営業活動におけるリストアップも、ロボットによって自動化
「ロボット」と聞くと人型やペット型、産業用の大きな機械などをイメージする人も多いかもしれませんが、実際には幅広い業務でロボットが活躍しています。当社では、オフィスワークで使用されるパソコンのソフトを人間の代わりに操作する「ソフトウェアロボット」が多方面で活用されるようになりました。
「大企業では、こうしたロボットをIT専任部門が開発したり、外注によって調達したりすることが多いのではないでしょうか。しかし当社は異なるアプローチを取っています。私たちの“市民開発”では、グループ全体の1万人以上の社員に呼びかけ、手を挙げた人に自らロボットを開発してもらっているのです」(塚本、以下同)
塚本は現在の開発体制をそう説明します。
RPAサービス課の呼びかけに応じて手を挙げた社員からは、まず「ロボットを開発することで何を実現したいのか」をヒアリング。その上で、どんなロボットを開発していくのか、具体的なディスカッションを進めていきます。
「たとえば営業部門では、新規のアプローチ先を探すために社員が定期的にグルメサイトをチェックし、新店のオープン情報を集めていました。こうした作業にロボットを活用すれば、常時自動で対象サイトをクロールしリストアップしてくれます。このレベルの仕組みであれば、最初に相談をもらってから概ね2〜3ヶ月あれば実現可能です」
こうして開発されたロボットの事例は、社内SNSで「ロボット台帳」として共有されています。同じような作業が別部署や別拠点で発生している場合は、ロボット台帳を参考にして、誰かがつくったロボットを導入することもできるのです。RPAサービス課に新規の相談が寄せられた際にも「似たような課題解決方法があれば、既存ロボットを紹介するだけで済むこともある」といいます。
現在、当社で稼働しているソフトウェアロボットは2023年11月末時点で約600台。そのうち半数にあたる300台強のロボットが市民開発によって誕生しました。
市民開発モデルでITプロジェクトの課題を乗り越える
塚本が管掌するRPAサービス課は、RPA(Robotic Process Automation / ソフトウェアロボットによる事務作業の自動化)の名を冠していることからも分かるように、社内でのロボット活用・普及をミッションとしているチームです。
現在のメンバーは12名。中には営業部門出身者や中途入社者など、IT部門以外の出身者も少なくありません。リスキリングによって多様なメンバーが活躍するチームをつくり、「現場での困りごとや中途採用者の戸惑いをよく理解できる」体制としました。
RPAサービス課が生まれた背景には、2017年に複数のボトラー社が集結した経営統合があったといいます。
「統合前、各社のバックオフィス業務を集約する中で、IT開発やデジタル活用のニーズが膨らんでいきました。また、部署によってはアナログな業務がまだまだ残っている部分もあります。非効率な業務をいかに改革していくか。そうしたテーマの中で取り組んだのが、人の業務をロボットに置き換えて自動化することでした。
自動化に適しているのは、反復的かつ定型的な人間の手作業です。毎日発生し、何十人もの社員が同じようなことをやっている作業をリストアップし、生産系のデータ照合業務など、大きな効果が期待できる領域から進めていきました」
ただ、ITエンジニアの増員は簡単ではありません。拡大する社内の開発ニーズに優先順位を付けて対応していかざるを得ない状況となり、案件によっては1年待ちや2年待ちとなってしまうことも。
また、初期のRPAは外部ベンダーに頼って開発を進めていましたが、大きな外部委託コストが発生することによって、社内には「コストに見合った効果を期待できるのか」という費用対効果の議論も生まれていました。
「『この業務を改善したいけど採算が合わないかもしれない……』という発想になってしまうと、本来のRPAの目的を果たすことができません。一定の閾値があって、費用対効果を見られてしまうことが従来型のIT開発の問題点でした。その発想を転換したのが市民開発モデルだったのです。
以前から通常のシステム導入を続けてきた中で残っている現場の課題は、従来型のITプロジェクトでは費用対効果の判断が難しかったものばかりでした。ならば、現場の社員自らが開発に取り組み、自らで課題解決できるようにしたいと考えたのです」
IT未経験者のロボット開発を支える「RPA研修」
とはいえ、ITの知識・スキルが乏しい現場社員が、本当に自らの力でロボットを開発できるのでしょうか。
「もちろん、いきなりロボット開発を進めることはできません。一歩踏み込んで新しいスキルを学んでもらうためには最初のトレーニングが重要です。そこで私たちは独自のRPA研修を企画し、実施しています。
まず全社員を対象に30分間のeラーニング講座を配信し、『RPAとは何か』の基本を知ってもらうことからスタート。興味を持ち、より学びたいと考える人に対しては、3時間の個別研修を用意してロボット開発を体験してもらいます。開発の流れが分かってきたら、いよいよ実際の業務課題の自動化に取り組んでいきます」
3時間の研修は1回あたり最大で5名が参加。RPAサービス課のメンバーがハンズオンで丁寧に指導し、身近なExcelを使ったトレーニングや、部門で実際に使っているデータを活用したトレーニングなどを行っています。
2021年からスタートしたRPA研修は、現在までに約850人が受講。年代問わず、若手でもベテランでもスキル習得のスピードに差は見られないといいます。
「研修実施後のフォローも重要です。研修を受けたからといって、必ずしも参加者全員がすぐにロボット開発に取り組むわけではありません。そこで私たちは研修参加者にアンケートを取り、『自動化したい業務があるか』を聞いて、あると回答した人にはRPAサービス課からアポを取って打ち合わせを行っています。現場のニーズを聞き、課題解決の方向性を提案することで、一気にロボット開発への熱量が高まるんです」
市民開発モデルによって全社のデジタルリテラシーが向上
近年、業界・業種を問わず多くの企業でDX推進が課題となり、それを担うDX人材の育成もまた急務となっています。当社の市民開発モデルは、こうした人材育成の面でも大きな意味があると塚本は話します。
「RPAを進めるだけで全社的なDXが進むとは考えていません。ただ私たちの取り組みは、現場の実務を担う社員のデジタルリテラシー向上に確実につながっていると感じます。
DXは、改革の旗振り役を担うリーダーや、秀でたスキルを持つエンジニアがいるだけでは進みません。ITの利用者として現場の業務を変えていく社員がいるからこそDXが実現するのではないでしょうか。ボトムアップで現場の課題を解決する市民開発モデルがあることで、この先トップダウンで大きなシステムを入れる際にも、現場の理解や反応は格段に早くなるはずです」
RPAの取り組みが始まって約3年、そして市民開発モデルが動き出してから約1年。塚本は今、自身のチームメンバーの成長にも大きな手応えを感じていると話します。
「IT未経験だったあるメンバーは、今では部署ごとにカスタマイズした研修開発も担うようになりました。ロボットを介して市民開発を広めることで、社内における『人と人のつながり』も強化されています。私たちの取り組みの本質は、ロボットをつくることではなく、ロボットを活用する仲間を増やしていくことにあるのかもしれません。
実際に社員の学習意欲は非常に旺盛で、私たちが教えている範囲にはないツールについても質問されるようになりました。その意欲に応え、現場のニーズに向き合い続けていきたいと考えています」
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