男性は、2015年3月6日頃、BSA加盟企業であるアドビ システムズ インコーポレイテッド(以下、アドビ システムズ)の「Adobe Creative Suite 6 Master Collection」をインターネットオークションサイトに出品し、落札者に対して、アドビ システムズより体験版として提供されていたプログラムを製品版として使用可能にするクラックプログラムとその使用方法を記載したマニュアルが保管されているストレージサイトのアドレスを教え、落札者にダウンロードさせる形で提供していました。長崎県警生活環境課サイバー犯罪対策室と長崎警察署は、この提供行為が不正競争防止法の禁止する不正競争に当たるとして、2015年10月6日に男性を同法違反で逮捕し、同月、長崎地方検察庁が起訴していました。
アドビ システムズを含む大手ソフトウェア企業は、製品をコンピュータにインストールする際に、プログラムとともに特定の信号等を記録させ、コンピュータがこれを検知しなければプログラムが実行されない仕組みを採用しています。クラックプログラムは、著作権者に無断で信号等を偽造することで、体験版として提供されたプログラムを何ら制限の無いプログラムとして実行可能にするものです。本件は、BSAの「不正コピー情報提供窓口」への報告を端緒とするもので、BSAは長崎県警・長崎地検に対し、加盟企業が用いるライセンス認証システムの仕組みや事案への不正競争防止法の適用に関し、鑑定書や意見書等を作成するなどの捜査協力を行っていました。
クラックプログラムの提供が不正競争防止法の禁止する不正競争に当たると判示するものに、既に2014年10月15日付け福井簡裁の略式命令、2014年12月5日付け宇都宮地裁判決及び2015年9月8日付け神戸地裁判決があります。今回の判決は量刑の事情として、クラックプログラムの販売によりメーカーは正規品の販売機会を喪失する被害を受けているほか、模倣性もあるとして一般予防の観点を軽視できないことを挙げています。
今回の判決を受けBSA日本担当共同事務局長の松尾早苗は、「今回の判決は、ライセンス認証システムが不正競争防止法上の定める技術的制限手段に当たることを前提としてクラックプログラムの提供を不正競争としたもので、これに関する不正競争防止法の解釈と適用が、既に揺るぎのない確定したものとなったことを端的に示すものです。インターネットオークションなどを通じたクラックプログラムの販売は未だ後を絶たず、BSAとしては今後も消費者への注意喚起を続けていきます」とコメントしています。
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