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Release 主要アパレルのコロナ禍3年目は仕入れ抑制からの脱却が鮮明に/2022年3~5月決算まとめ

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主要アパレルのコロナ禍3年目は仕入れ抑制からの脱却が鮮明に/2022年3~5月決算まとめ

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フルカイテンが調査レポート公表

フルカイテン株式会社(本社・大阪市福島区、代表取締役・瀬川直寛)は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が日本で始まってからちょうど3年目に入った2022年3~5月における大手上場アパレル企業16社の決算を調べ、各社の在庫効率(在庫を効率よく利益に換える力)がコロナ前と比較してどう変化しているかを考察するレポートを作成しました。
PDFファイル版は下記リンクからダウンロードできます。
https://full-kaiten.com/news/report/5254


売上高は全16社のうち15社が前年を上回った。営業損益は13社が改善した(増益、黒字転換、赤字幅縮小のいずれか)
少ない在庫で多くの粗利益を稼ぐ力の指標であるGMROIは13社が前年より改善した。コロナ禍前の2019年を超えた会社も9社あった
13社が仕入れを前年同期よりも増やし、うち7社は2桁パーセントの割合で増加している



仕入れ抑制と在庫削減による粗利益改善という過去2年で普及した手法からの脱却が進む。今後は在庫を効率よく利益に換える「販売力」の強化が急務


画像1:



全16社のうち15社が増収。13社で営業損益が改善

本稿の調査対象は主に2月期決算の主要アパレル企業16社の2022年3~5月における決算となる。決算短信を基に売上高、営業損益、当期純損益をまとめたのが表1だ。

画像2:



売上高は全16社のうち15社が前年同期を上回った。2022年の3~5月は、3年ぶりに行動制限がない大型連休を迎えるなど、総じて実店舗の集客が大きく回復した。これに伴い5月の売上を大きく伸ばす会社が多かった。

唯一減収となったオンワードホールディングスは国内事業は増収増益だったが、欧州における不採算事業からの撤退の影響で全社ではわずかながら減収となった。
営業損益をみると、13社が前年同期から改善している。前年が黒字だった9社は全社が増益となり、前年に赤字だった4社のうち3社は黒字転換、残り1社も赤字幅が縮小した(下表)。

画像3:

各社ともコロナ禍2年間で店舗の統廃合をはじめとした固定費の削減を進めてきたが、売上高の回復によって販管費を賄うだけの粗利益(売上総利益)を得られるようになったため、営業黒字になっている。

一方で、良品計画とTSIホールディングスは営業減益となり、TOKYO BASEは赤字に転落した。
 

大幅な仕入れ抑制を継続したのは1社だけ

表3は各社の仕入れ額増減率と5月末の在庫高増減率、粗利益率とその昨対比をまとめたものだ。

画像4:

まず、期中仕入れ額(発注額)を前年同期から減らしたのは3社だった。2桁パーセント減少した会社はバロックジャパンリミテッド(-15.5%)のみで、他のオンワードホールディングスとパレモ・ホールディングスはそれぞれ-2.4%、-2.9%と小幅な減少となった。
2020年、2021年の過去2年は仕入れを抑制する会社が比較的多かったが、コロナ禍も3年目に入り、事業の縮小均衡を招く仕入れ抑制の継続から脱却する会社が大半を占めるようになったことが分かる。

次に5月末の在庫高を見ると、前年同期よりも減らした会社は7社、増やした会社は9社となった。減らした7社のうち、ライトオンとパレモ・ホールディングスを除く5社は粗利率が0.14~3.81ポイント改善している。各社とも値引き販売を抑えながら在庫の消化を進めることができたとみられる(下表)。

画像5:

一方、在庫高を増やした9社の中で、増加率が大きいのが良品計画とTSIホールディングス、ハニーズホールディングス、TOKYO BASEの4社だ(下表)。
このうちTSIホールディングス、ハニーズホールディングスは期中仕入れを増やし、かつ粗利率が大きく改善しているため、値引きを抑制して販売しつつ6月以降に売る夏秋物の在庫を十分に積んでいることが窺える。


画像6:

なお、良品計画とTOKYO BASEは営業損益が大きく悪化しており(表1参照)、販売不振が在庫高の増加の一因になっている。
2022年2月期(2021年3月~2022年2月)を対象にしたレポート(2022年4月25日公表、https://full-kaiten.com/news/report/4825)でも触れたが、仕入れ抑制と在庫削減による粗利率改善は、あくまでコロナ禍2年目までの緊急避難的な手法であり、これを何期も続けていては事業が縮小均衡になっていく恐れがあると本稿はみている。

売る商品が減る分だけ売上高や粗利益額の減少を招き、固定費の縮減も並行して進めない限り営業黒字を確保できなくなるからだ。
今回の2022年3~5月期をみると、16社中13社が仕入れ抑制の継続から脱却する動きを見せている。ただ、在庫を効率よく利益に変える「販売力」が従前から変わらないままで仕入れを増やせば、売れ残りが生じて値引き販売の頻発と残在庫の評価減というコロナ禍前の惨状を招きかねない。
 

GMROIは16社のうち7社がコロナ前に届かず

次に、GMROIの2019年以降4年間の推移を示したのが次のグラフだ。
※GMROI:小売業などの在庫ビジネスにおいて、保有する在庫を用いて効率的に粗利益(売上総利益)を上げる力を表す指標。(粗利益額) ÷ (期中平均在庫高)で求められる

画像7:

本稿がGMROIを重要な指標とみている理由は次の通りだ。
ファーストリテイリングや良品計画、バロックジャパンリミテッドなど海外展開が進んでいる或いは進みつつある一部の会社を除き、多くのアパレル企業は国内事業が売上高の多くを占めている。その国内は縮小市場であり、売上規模ばかり追求すると過度の価格競争に陥る。

そうした市場では、販売力を超える量の在庫を持つことは大きな経営リスクとなるため、在庫の「物量」に頼ることなく、限られた量の在庫を効率よく利益に換える(売上・粗利益・キャッシュフローを最大化させる)経営が求められると本稿はみている。
グラフに話を戻すと、良品計画とマックハウス、TOKYO BASE以外の13社のGMROIは2021年3~5月よりも改善している。

また、オンワードホールディングス、三陽商会、ナルミヤ・インターナショナル、しまむら、マックハウス、西松屋チェーン、TSIホールディングス、ハニーズホールディングス、ファーストリテイリングの9社はコロナ禍前の2019年を上回っている。
今後、仕入れ抑制から通常の発注規模へと各社が方針転換していく中で、一部の売れ筋商品に頼って売上を作るのではなく、売れ筋以外の“隠れた売れ筋商品”の活用によって効率よく在庫を利益に変える手法の浸透がカギを握る。


まとめ:一部の売れ筋商品に頼らないビジネスモデルへ

第4章の終わりで触れたとおり、各社が仕入れ(発注)を増やしていくに当たり、販売力を強化できなければ、再び値引き販売の頻発と残在庫の評価減というコロナ禍前の状態に戻りかねない。ここで言う「販売力」の意味するところは、在庫を効率よく利益に変える力を指す。販売力が高ければ、同じ在庫消化を図るにしても、無駄な値引きをすることなく、より多くの利益とキャッシュフローが得られる。

示唆に富むデータがある。コロナ禍が始まって直後の2020年4~6月において、アパレル企業は平均で全SKUのわずか20%の商品で粗利益総額の8割を生み出していることがデータ解析で裏付けられたのだ。残りの下位80%のSKUは粗利益総額の2割分しか貢献していないことになる。
※詳細は右記を参照(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000087.000025713.html

しかし、販売力が高ければ下位80%のSKUの商品からも利益を取れる売り方ができるようになる。そうすると、仕入れを増やしても値引き頻発や残在庫の償却といった事態を回避できる。

アパレル産業では従来、一部の売れ筋商品に売上と利益を依存し、前年踏襲で売上を確保するために仕入れありきで販売力以上の発注を行い、計画通りに売れなければ値引きして消化を図るという手法が主流となっていた。この手法の下では、値下げが増えても利益が出るよう製品原価を下げることが経営の主眼となってきたが、原価低減は商品の同質化という弊害が出るほどまで既になされている。
仕入れ原価率を数ポイント下げられたとしても利益感度は低く、何十%もの値引き販売と残在庫の大幅な評価減を抑える方が利益感度が高いことは自明だ。限られた量の在庫でも、今ある在庫を効率よく利益と現金へ換えるビジネスモデルへの変革が求められている。

※本レポートのPDF版は下記リンクからダウンロードできます(無料)。
https://full-kaiten.com/news/report/5254

※本調査は、対象となった企業の経営成績や財政状態の優劣を評価するものではありません。

【本レポートの引用について】
 本レポートの内容は自由に引用していただけますが、その際は下記へご連絡ください。
  フルカイテン株式会社
   戦略広報チーム 南昇平
   電話: 06-6131-9388
   Eメール: info@full-kaiten.com

【会社概要】
社名: フルカイテン株式会社
URL: https://full-kaiten.com
事業内容: 在庫を利益に変えるクラウドシステムの開発
本社: 大阪市福島区福島1-4-4 セントラル70 2階B
設立: 2012年5月7日
代表者: 代表取締役 瀬川直寛

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