夜尿症の疾患啓発に取り組んでいる当社では、この世界夜尿症デーの趣旨に賛同し、当社が運営する「おねしょ卒業!プロジェクト委員会」のWeb サイト「おねしょドットコム」( http://onesho.com/ )内で世界夜尿症デーの下記日本語訳サイトを紹介しています。( http://www.worldbedwettingday.com/index.php?lang=jp )
■「夜尿症」とは?5歳を過ぎてのおねしょは病気かもしれません
生まれて2歳ごろまでの子どもは毎晩おねしょをしますが、その頻度は年齢とともに減っていきます。「おねしょ」と「夜尿症」の違いは年齢がポイントです。乳幼児期の夜尿を「おねしょ」といいますが、5~6歳(小学校入学前後)以降は一般的に「夜尿症」と呼びます。ときどきおねしょをしてしまう程度のお子さまの比率は5歳で約15%、小学校低学年で約10%と減少しますが、小学校高学年でも約5%にみられます。ごくまれに成人まで続くケースもあります*1。有病率は世界で非常に似通っており*2、夜尿症はアレルギー疾患に次いで、2番目に多い慢性小児疾患です*3。しかし、わが国における夜尿症患児約78万人のうち、実際に医療機関を受診している患児は推計で約16万人であり、そのうち治療を受けているのは約4万人にすぎません*4。
*1 河内明宏ほか:夜尿症研究に関する用語について. 夜尿症研究 6:19-22, 2001
*2 Lee SD, Sohn DW, Lee JZ, Park NC, Chung MK. An epidemiological study of enuresis in Korean children. BJU Int. 2000;85:869-873
*3 Hjälmås K, Barnklinikerna, Ostra sjukhuset, Göteborg, Nordisk Medicin [1998, 113(1):13-5, 15] http://europepmc.org/abstract/med/9465701
*4 厚生労働省. 人口動態統計, 2010、赤司俊二ほか. 夜尿症研究 1999; 4: 31-35、赤司俊二ほか. 綜合臨牀 2004; 53: 2161-2162, 社内資料より推計
■夜尿症が子どもに及ぼす精神的ダメージは、いじめより強くトラウマになりやすい
14日間のうち6回以上夜尿のある8歳から16歳の子ども98名に対して行った調査によると、夜尿症が子どもに与える精神的ダメージは、親の離別、争いに次いで3番目に強いということがわかっており*1、これはいじめより強いということが明らかになっています。しかし、夜尿が改善することで自尊心が回復することも分かっています。66人の患児を対象に行った質問調査によると、夜尿の治療を開始した後の自己評価のスコアが治療前と比べ上昇していることがわかっており*2、また治療開始から6ヶ月後には健康児のスコアよりも数値が高くなっています。実際に治療に励む子どもに話を聞いたところ、「(薬を飲むのが)初めは嫌だったけど好きになった」「おねしょをしなくなるから早くお薬が飲みたい」と治療に前向きで、早く治したいという気持ちであることも分かりました。
*1 Van Tijen NM, et al.: Br J Urol. 81: 98-9, 1998
*2 Hagglof,B et al.: Eur Urol. 1998:33(S3), 16-19[FP00893]
■子どもの夜尿症の苦しみが、3人に1人のママにしか届いていない
日本で夜尿症のお子さんを持つママに調査*をしたところ、子ども自身がストレスを感じていると答えたママは36 %に留まっており、おねしょをすることで普段の生活に良くない影響を与えていると感じているママも21%。治療意欲に関しても、「治したいがあまり通院はしたくない」と48%のママが感じているということが分かっています。
*2013年11月22日(金)~25日(月)の三日間、20~59歳の月1回以上おねしょをする5~12歳以下の子どもがいる女性(「薬品・医療用品」、「化粧品・トイレタリー・サニタリ―」、「教育・医療サービス・宗教」、「新聞・雑誌・テレビ・ラジオ・広告等マスコミ関係」、「マーケティング・市場調査関係」従事者ならびに従事者の家族・近親者を除く)を対象に行ったWeb調査
実際に受診した213人のママに受診してよかったか聞いたところ、「よかった」と答える親が62%、「よくなかった」6.6%、「どちらとも言えない」31.5%と、総じて受診してよかったと思う親が多いことも明らかとなっています。
■夜尿症はなぜ起こるのか?その原因
<原因>
夜間多尿:夜間の抗利尿ホルモンの分泌が不十分なため、就寝中に尿の生成が増加し夜間多尿となり、尿量が夜間の機能的膀胱容量を超えてしまうことにより夜尿が生じる。夜尿症の中で、これが最多の原因と考えられている。
就寝中の膀胱容量低下:就寝中は日中覚醒時に比較して膀胱容量が約1.5倍~2倍程度に増大することが知られているが、覚醒時と比べて膀胱容量が増大しないことや、反対に縮小することにより、就寝中に産生される尿を膀胱内に貯めておくことができずに夜尿が生じる。
上記のいずれか、または両方が組み合わさり、さらに尿意による覚醒ができない場合に夜尿症となる。
■夜尿症は治る!治療の方法と結果
夜尿症は生活指導、薬物療法、アラーム療法などの治療を行うことで、自然経過よりも約3倍治癒率を高めることができます。小学校低学年で生活指導などから夜尿症初期診療を開始することで、宿泊行事の増える小学校高学年までに夜尿を卒業させることも可能となります。
<治療方法>
夜尿症の治療には大きく分けて薬物治療と薬物を用いないアラーム療法がある。
しかし、これらの治療を行う前の生活改善の取り組みが何よりも重要である。夜間の飲水制限や規則正しい生活リズムが確立されていないと、薬物療法による副作用も誘発しかねないので、患児と保護者に繰り返し指導し、遵守させることが必要である。
生活改善指導
1.規則正しい生活をする、2.水分/塩分の摂り方に気をつける、3.寝る前に必ずトイレに行かせる、といった生活改善の取り組みを行うことで、1~2割程度の子どもの夜尿が消失することを経験する。
薬物治療:抗利尿ホルモン製剤
2010年に発表されたICCSのガイドラインでは1)、生活指導で効果不十分な場合の第一選択治療として、デスモプレシン(Desmopressin:DDAVP)もしくは夜尿アラームを使用することを推奨している。どちらを選択するかは、患児や保護者の希望に沿ったものでよいとされているが、排尿日誌により夜間多尿があると確認された場合はDDAVPが選択される。
アラーム療法:夜尿アラーム
夜間就寝中の水分を感知して警報が鳴る装置であり、1930年代より使用報告例がある。夜尿アラームに接続されているセンサーをパンツが濡れそうな部分に取り付けることで、センサーが濡れるとアラームが鳴り、バイブレーションが生じるように設計されている。
出典:池田裕一、【特集=小児科診療の話題】夜尿症~ガイドラインに基づく治療~、「Medicament News」、ライフ・サイエンス、2015年
■夜尿症啓発の取組み
動画による啓発
「おねしょ卒業!プロジェクト」では、 2月10日(水)よりWeb限定動画『ママには言えない、おねしょの悩み。』を公開いたしました。本動画は、おねしょの悩みをもつ子どもとその悩みを知った母親の体験を紹介した内容となっており、動画を通じてより多くの人に夜尿症で悩む子どもたちの声を届け、関心を持っていただくきっかけとなるよう制作いたしました。おねしょ卒業!プロジェクト/おねしょドットコムの公式YouTubeサイト( https://youtu.be/kBAi_vjF7r0 )よりご覧いただけます。
動画の再生回数は公開から約3ヶ月で135万回以上を達成しており*(5月19日時点)、現在でも継続的に再生回数を伸ばしております。
* Facebook上での再生回数を含む
医療施設検索ページの設置
「おねしょ卒業!プロジェクト」WEBサイト内には、夜尿症に悩む患児とその保護者が夜尿症の診療を行っている医療施設を手軽に検索できるよう、医療施設検索ページ( http://onesho.com/patient/clinic/ )を設けております。「どこのお医者さんに相談すればよいのかわからない」「できればかかりつけ医で診てもらいたい」という方でも、こちらから「おねしょの相談」ができる近隣の医療施設を調べ、気軽に相談することができます。
おねしょ卒業!プロジェクト委員会
池田 裕一氏(昭和大学藤が丘病院 小児科 准教授 医学博士)
実際に小児科で夜尿症の患者さんを診ていらっしゃる池田先生に、お母さんが気づいてあげるべきポイントや、どのようにケアしてあげるのが良いか等、アドバイスをいただきました。
■お母さんが気にすべき夜尿以外のポイント
夜中におねしょをしていれば、当然お母さんが気づくことが多いかと思いますが、それ以外にも昼間のちびりなど少しもらしてしまうことに気づいた場合は早めに受診しましょう。夜尿症の子どもの中には、発達障害のあるケースもありますが、障害のある子でもきちんと治療をすれば治ります。夜尿を克服すると、子どもの自信にもなりますので、まずは受診をしてほしいと思います。また、普段の生活の中で、以下の項目に当てはまる場合は、夜尿症を疑いましょう。
【チェックリスト】
昼間も失禁することがある
熱中しているときにもらしてしまうことがある
おちつきがない
寝る前にいつもトイレに行くのを忘れてしまう
■治療の際に気をつけてあげること
自分の子どもが夜尿症である・疑われる場合でも、子どもを責めてはいけません。逆に、おねしょをしなかったときや、寝る前にきちんとトイレに行くことができたらほめてあげるようにしましょう。子どもは気にしていなさそうと思っていても、実際に克服するとみんな嬉しそうにしています。親もそれを見て初めて「うちの子、気にしていたんだ」と気づくことが多いです。子どもは病院に連れて行ってと自分ではなかなか言えないので、お母さんが気をとめてあげるようにしましょう。また、病院にいき相談すること自体がハードルになるケースもあるので、「宿泊行事までにおねしょを卒業する!」などの目標を立て、それを達成するために治療をするのが良いでしょう。受診・相談は目標の3ヶ月前が理想的ですので、夏の宿泊行事に向けて治療を始めるなら5月が良いですね。
■治療の内容
病院では年齢や症状によって、一人ひとりにあわせたオーダーメイド治療しています。宿泊行事の際も、オムツを持っていくか尿取パットにするか、夜何時に教員に起こしてもらうようにするか、など具体的な対策を親子と一緒に考えていきます。
【宿泊時の対策】
就寝時にパンツを履かせるべきか、オムツを履かせるはかせるべきか迷う保護者の方はいるかもしれませんが、本人が嫌がるようでなければオムツを着用し、回数が少なくなっている場合は、パンツで宿泊行事にのぞむと良いと思います。
【メディアの皆様へ】
多くの患者さんを見てきましたが、皆さん「早く受診すればよかった」と口をそろえておっしゃいます。おねしょを克服した子どもから感謝の手紙をもらうことも多々あり、より多くの子どもたちを笑顔にしてあげたいと日々感じています。この機会に、より多くの方に夜尿症について知っていただき、「おねしょは治療できます!」「おねしょが小学生になっても続く場合は、一度医療機関に相談を!」というメッセージを、ぜひ一般の方へ伝えていただきたいと思います。
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