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Release 内部通報制度の整備状況に関する調査2018年版を公表

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内部通報制度の整備状況に関する調査2018年版を公表

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・グローバル内部通報を運用する企業は、昨年に続きおよそ5割
・内部通報制度の高度化は停滞
・直近1年で不正の告発を受信した企業は2割未満
・グローバル内部通報制度においてリニエンシー制度(※1)の導入は少数、報奨制度は0

デロイト トーマツ リスクサービス株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長 丸山満彦)は、「内部通報制度の整備状況に関するアンケート調査」の結果を公表します。本調査は、2018年6月に経営企画/総務/法務/内部監査/国際管理の担当者、および内部通報サービスに関心のある企業の担当者を対象に行い、上場企業266社を含む330社から有効回答を得ました。

総括
ほぼすべての企業が通報窓口を設置済みで、グローバル内部通報制度の運用をすでに開始している企業も約半数に達しています。その一方で、内部通報制度の高度化を示すと考えられる「グローバルで統一の内部通報制度の規程や体制を定義」20%(2017年21%)や、「通報対応の意思決定機関に社外取締役、社外監査役を含む」28%(2017年30%)といった割合は、2017年版の前回調査と比較して上昇していません。また、今回初めて不正の告発の受信比率を聞いたところ、最多の回答は「直近1年で不正の告発を受信していない」(81%)となりました。

主な回答結果

1. 通報窓口の設置状況
「通報窓口がある」との回答は、307社93%となり、特殊な状況で窓口を設置しているその他(6%)を加えると、2017年の調査時の99%と同様となり、ほぼすべての企業が窓口を設置しています(図表1)。外部通報窓口の設置は72%に上り、こちらも特殊な状況で外部窓口を設置しているその他(6%)を加えると、2017年(79%)と同様です。外部通報窓口は組織内の人員ではないため通報者の安心感を高めるとともに、匿名通報を可能にすることから、多くの企業が採用していると考えられます(図表2)。

なお、特殊な状況とは、単体としては有していないが親会社等が設置する窓口(外部を含む)を利用可能といったことを指します。
画像1:

2. グローバル内部通報の状況
回答企業で海外に進出していると推定される企業「以下、海外進出推定企業(*1)」159社のうち、海外からの通報を受け付ける窓口を有しているのは85社54%でした。海外通報の窓口の設置は道半ばですが、特殊な状況で窓口を設置しているその他(9%)を加えると2017年(60%)より微増となります(図表3)。グローバル内部通報を運用しているという企業も2017年とほぼ同様の比率となっています(図表4)。
画像2:

3. 不正を告発する通報の受信状況
日本国内の通報に関しては、窓口はないと回答した33社をのぞく297社のうち、239社81%が直近1年間で不正の告発を受信していません(図表5)。海外進出推定企業159社における海外通報においても、窓口はないと回答した64社をのぞく95社のうち、72社76%が直近1年間で不正の告発を受信していないと回答しました(図表6)。このことから、日本企業の内部通報制度は制度の本来の目的である不正の告発とは離れ、待遇や人間関係に対する通報者の個人的な不満を多数受信しているものと推察できます。そういった状態が継続すると、通報者が不満の表明を行う場合も公益通報者保護法により自分が保護されると誤解して通報対応に強い不満を抱く、あるいは企業とのトラブルが発生する、といった弊害が懸念されます。この状況が長期的に続くと、日本企業の内部通報制度の品質や信頼性が徐々に低下していくことが予測されます。
画像3:

4. 内部通報制度の高度化は停滞
外部窓口が顧問弁護士以外の事業者である企業は、外部受付窓口がないと回答した82社をのぞく248社のうち115 社46%となり、2017年の54%より8ポイント低下しました。顧問弁護士は企業を擁護する立場にあるため、通報者と企業の間で外部窓口としての中立性を保持することが困難と考えられ、その中立性の重要性を再確認する必要があると言えます。

実際には不正の告発は少なく、通報の多くが人事評価や上司との人間関係に起因する個人的な不満の表明です。個人的な不満の表明には、特に内部通報制度で強く求められる匿名での対応が困難となり、処理のプロセスが根本的に異なります。そのため、通報の性質に応じて複数の窓口を設けることが望ましい一方、実際にはその割合は21%にとどまっています(図表7)。

通報のエスカレーション判断を受信部署とは別機関に委ねることができれば不正をもみ消すことがより難しくなりますが、その体制を整えている企業は29%にとどまります。受信する通報の大多数が個人的な不満の表明であるという前提に立てば、エスカレーションの判断を受信部署と別機関に委ねる必要はなく、単なる非効率となる可能性があります。

また、個人的な不満の表明に類する案件をすべて社外取締役や社外監査役に共有することは実務的とはいえません。そのため、図表7に示されるように「通報対応の意思決定機関に社外取締役、社外監査役を含む」が、内部通報制度はないと回答した3社をのぞき91社28%(2017年30%)にとどまっていると推察できます。いわゆる公益通報につながるような不正の告発と個人的な不満の表明を明確に分割し、不正の告発は内部通報制度で対応し、不満の表明にはそれとは異なるプロセスで対応することを明確に宣言する等、制度を適切に設計し直す時期が到来していると考えられます。

また、グローバル内部通報の運用は過半数に達している一方(図表4)、グローバル統一で内部通報制度の規程や体制を定義している比率は20%にとどまっており(図表7)、調査や通報者保護といった対応品質のレベルを各拠点の独自運用に委ねることを前提としたグローバル内部通報制度が多いことが読み取れます。

図表7 内部通報制度の高度化を表すと考えられる取組みの変化の度合い


[表1: https://prtimes.jp/data/corp/202/table/170_1.jpg ]



5. グローバル内部通報制度におけるリニエンシー制度と報奨制度の導入状況
グローバル内部通報制度を構築・導入・運営する上で検討すべき課題として、リニエンシー制度(※1)および報奨制度(※2)の導入があります。実際に米国では行政が内部告発者に対して数十億円にも達する高額な報奨金を支給する事例が報告されていて、日本国内においても司法取引制度の実例が発生しています。企業としてこういった社会情勢に対応していく必要がある一方で、不正の主体者を許容することにつながるリニエンシー制度や、密告した者を報奨する制度が風土や文化に与えるマイナスの影響を懸念する声も多くあります。海外拠点はないあるいは内部通報制度はないと回答した64社をのぞく95社のうち、リニエンシー制度を導入する企業は12社13%(図表8)にとどまり、報奨制度を導入する企業はありませんでした(図表9)。

※1 リニエンシー制度:自ら不正を告発した者への懲罰の減免が検討される制度
※2 報奨制度:通報者への謝金や昇給等の付与が検討される制度

画像4:



調査概要


[表2: https://prtimes.jp/data/corp/202/table/170_2.jpg ]



(*1)「海外進出推定企業」は、下記のC,D,Fのいずれか1つを選択した企業を指し、今回調査では159社が該当しました(2017年調査時は132社)。

内部通報制度以外に、組織の要員の不当行為あるいは不正行為の可能性を能動的に情報収集する以下のような活動を実施していますか(複数回答可)

A) 定期的に実施する国内内部監査
B) 随時実施する国内内部監査
C) 定期的に実施する海外子会社の内部監査
D) 随時実施する海外子会社の内部監査
E) 国内のコンプライアンスサーベイ(広範な要員を対象とするもの、ローテーションで数年に一回を含む)
F) 海外子会社のコンプライアンスサーベイ(広範な要員を対象とするもの、ローテーションで数年に一回を含む)
G) これらの活動は実施していない

*本調査結果に係る割合は小数点以下を四捨五入しており、合計値が100%にならないものがあります。



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