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Release 職場のハラスメントについて「被害認識」「加害認識」の観点から調査を実施。周囲からの被害行為の認識は31.9%に対し、当人による加害行為の認識は22.2%にとどまる

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職場のハラスメントについて「被害認識」「加害認識」の観点から調査を実施。周囲からの被害行為の認識は31.9%に対し、当人による加害行為の認識は22.2%にとどまる

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被害認識が最も高い年代は30代前半で41.5%。30代前半より若い層では被害認識・加害認識がともに高い一方で、45歳以降では当人の加害認識が低くなる傾向

 
民間調査機関の一般財団法人労務行政研究所(本社:東京都品川区、理事長:猪股宏)は、筑波大学働く人への心理支援開発研究センターの学術指導を受けて「職場におけるハラスメント」に関する調査研究を行い、このたび結果を取りまとめましたのでお知らせします。

本リリースでは、予備調査に基づきオリジナルに定義した「職場のハラスメント言動」の測定項目に関して、1.周囲(被害認識)と2.当人(加害認識)の観点から実施した調査結果をご紹介します。



職場のハラスメント言動の測定項目

 予備調査(自由記述式アンケートおよびインタビュー)に基づき「職場のハラスメント言動」を構成する概念を抽出し、2度のアンケート調査の結果を踏まえて、職場での発生頻度が高いハラスメント言動を選別しました。
 このたびの調査では、次の17項目をハラスメント言動として位置づけています。
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調査結果概要

 「職場のハラスメント言動」の測定項目について、1.周囲(被害認識)と2.当人(加害認識)の観点からそれぞれ調査を実施し、「過去6カ月間」にそれらの言動・行為を行ったかどうかについて尋ねています。

1.周囲調査:職場のメンバーが自身を含む同じ職場内の人々に対して、それらの言動・行為を行ったか
2.当人調査:自分自身が同じ職場内の人々に対して、それらの言動・行為を行ったか


1.ハラスメント言動の現状
 現状として、〈周囲調査〉ではハラスメント言動の全項目平均で31.9%となり、約3人に1人が職場のメンバーによるハラスメントがあったことを認識している結果となりました(図表1-1)。特に見られる言動は「相手が嫌がるような皮肉や冗談を言う」(36.2%)、「陰口を言ったり、悪い噂を広めたりする」(35.5%)であり、法的には明確にアウトと言いづらい間接的な内容ほど発生の可能性が高いと言えます。

図表1-1. 〈周囲調査〉におけるハラスメント言動の現状(n=519)

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 一方、〈当人調査〉では全項目平均で22.2%となり、約4~5人に1人が自分自身によってハラスメント言動を行ったことがあると認識している結果となりました(図表1-2)。特に見られる言動は「陰口を言ったり、悪い噂を広めたりする」(25.7%)、「相手が嫌がるような皮肉や冗談を言う」(24.7%)であり、周囲調査と同様の2項目となっています。これらの項目は周囲で発生する可能性が高い一方で、比較的、加害者当人のほうも意識しやすいものであることが考えられます。

図表1-2. 〈当人調査〉におけるハラスメント言動の現状(n=514)
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2.年代別のハラスメント言動の現状
 全項目平均に関して年代別で見ると、〈周囲調査〉では30代前半が41.5%と最も高く、60代前半が21.8%と最も低い結果となっています(図表2-1)。一方、〈当人調査〉では20代後半が27.8%と最も高くなりますが、45歳以降では加害認識が低くなり、特に50代前半が15.0%と最も低くなっています(図表2-2)。おおむね30代前半より若い層は、周囲のハラスメントへの認識も高く、また自分がハラスメント言動を行ったという認識も高い傾向にあります。一方、50代前半の層に関しては、周囲への認識は高いものの、当人がハラスメント言動を行ったという認識は小さく、そのギャップが大きくなっています。


図表2-1. 〈周囲調査〉年齢別のハラスメント言動

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図表2-2. 〈当人調査〉年齢別のハラスメント言動

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3.職位別のハラスメント言動の現状
 職位別で見ると、〈周囲調査〉では主任・係長および課長相当職が34%台とやや高く、その後、部長相当職30.4%、役員相当職19.9%と役職があがるほど、周囲のハラスメントへの認識は低くなります(図表3-1)。一方、〈当人調査〉では、主任・係長相当職が27.1%と最も高く、課長相当職以降の職位では20%台前半で推移しています(図表3-2)。主任・係長相当職は、周囲のハラスメントへの認識が高く、また自分がハラスメント言動を行ったという認識も高くなっていますが、部長相当職以降は、自分のハラスメント言動への自覚はあるものの、周囲のハラスメントに対して認識しづらくなっていることが考えられます。

図表3-1. 〈周囲調査〉職位別のハラスメント言動

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図表3-2. 〈当人調査〉職位別のハラスメント言動

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4.企業規模別のハラスメント言動の現状
 企業規模別で見ると、〈周囲調査〉では「10~49人」「5000人以上」が40%台と高く、また「10人未満」は22.9%とかなり低い結果となっています(図表4-1)。一方、〈当人調査〉では「50~4999人」の各層が25%前後であるのに対し、「10~49人」が21.2%、「5000人以上」が19.4%とやや低い結果となっています(図表4-2)。なお、「10人未満」は7.8%とかなり低くなっており、周囲調査と同様に低いことから、「10人未満」の企業規模では、ハラスメント言動自体の発生が少ないことが考えらます。一方で、特に「10~49人」「5000人以上」の層では、自身がハラスメント言動を行ったという認識は少ないものの、周囲のハラスメントへの認識が高いことから、ハラスメント言動に対する受け止め方に関して周囲(被害認識)と当人(加害認識)の間でギャップが存在する可能性が考えられます。

図表4-1. 〈周囲調査〉企業規模別のハラスメント言動

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図表4-2. 〈当人調査〉企業規模別のハラスメント言動

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5.職種別のハラスメント言動の現状
 職種別(図表5)で見ると、〈周囲調査〉では「製造・生産工程職」が48.4%と最も高く、次いで「サービス職」が39.4%と高くなっています。また「管理職」は29.3%と最も低く表れています。一方、〈当人調査〉では「製造・生産工程職」が12.3%と最も低くなっており、高い順では「管理職」が24.5%、次いで「サービス職」が23.8%となっています。このことから、1.「製造・生産工程職」ではハラスメント言動に対する受け止め方に関して周囲(被害認識)と当人(加害認識)でギャップが存在し、潜在的な被害者が多い可能性があること、2.「サービス職」では、周囲のハラスメントへの認識が高く、また自分がハラスメント言動を行ったという認識も高くなっており、自覚できるハラスメントが顕在化していること、3.「管理職」では当人のハラスメントへの認識は大きいものの、周囲のハラスメントに対して認識しづらくなっている可能性があることが考えられます。

図表5. 職種別のハラスメント言動

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6.職場の人数別のハラスメント言動の現状
 職場の人数別で見ると、〈周囲調査〉では「5人未満」が26.5%で最も低く、その後、「5~9人」が32.3%と最大で、「10~14人」「15~29人」「30人以上」と人数が増えるにつれて、ゆるやかに低下していきます(図表6-1)。一方、〈当人調査〉では「5人未満」が15.9%で最も低く、その後、「5~9人」「10~14人」「15~29人」と人数が増えるにつれて上昇し、「30人以上」が33.7%と明らかに大きくなっています(図表6-2)。したがって、「5人未満」の人数では、ハラスメント言動自体の発生が少ないと考えらますが、それ以降は、人数が少なくなるほど、ハラスメント言動に対する受け止め方に関して周囲(被害認識)と当人(加害認識)でギャップが生じており、潜在的な被害が多い可能性があります。他方、「30人以上」の人数になると、自身がハラスメント言動を行ったという認識は大きいのに対して、周囲のハラスメントへの認識は低くなっており、周囲のハラスメントに対してやや認識しづらくなっている可能性が考えられます。

図表6-1. 〈周囲調査〉職場の人数別のハラスメント言動


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図表6-2. 〈当人調査〉職場の人数別のハラスメント言動

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7.上司・部下の人数別のハラスメント言動の現状
 上司・部下の人数別で見ると、〈周囲調査〉では上司人数に関して「3人」が38.5%で最大、次いで「4人以上」が35.0%となり上司の人数が多いような立場にあるほど、周囲でハラスメント言動があるという認識が高くなっています(図表7-1)。また部下人数に関しては、どの人数区分でもおおむね30%前後となっていますが、部下「10人以上」が27.9%とわずかに低くなっています(図表7-2)。

図表7-1. 〈周囲調査〉上司人数別のハラスメント言動

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図表7-2. 〈周囲調査〉部下人数別のハラスメント言動

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 〈当人調査〉では、上司人数が増えるほど自身のハラスメント言動への認識も高くなり、「1人」が17.3%と低い結果となったのに対して、「4人以上」が26.7%と最も高くなっています(図表7-3)。また部下人数に関しては、部下「0人」が16.2%と最も低くなり、部下がいない場合は、自身の加害言動も起こりづらいことが考えられます(図表7-4)。一方で、部下「10人以上」は31.6%とかなり高く、10人以上の部下を持つようになると、自身がハラスメント言動を行ったという認識が大きくなると考えられます。
 上司の人数は「4人以上」になると周囲・当人がともに高く、自覚できるハラスメントが顕在化していることが考えられますが、上司「1人」のときは周囲・当人がともに低く、そもそもハラスメント自体が少ないと認識していることが考えられます。
 また、部下の人数は「10人以上」になると、周囲のハラスメントへの認識は低くなっていくのに対して、当人がハラスメント言動を行ったという認識は大きくなっており、周囲のハラスメントに対してやや認識しづらくなっている可能性が考えられます。

図表7-3. 〈当人調査〉上司人数別のハラスメント言動

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図表7-4. 〈当人調査〉部下人数別のハラスメント言動

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分析のまとめ~健全な職場づくりのためには、知識を深め、自身にあてはめて内省することが必要~

 今回実施した調査結果のポイントをまとめると、大きくは以下の3点となります。

1. 昨今の職場におけるハラスメント言動は、本調査で扱った17項目のように多岐にわたるものであるとともに、約3人に1人がハラスメントの被害を自分の周囲で目の当たりにしているほど多く生じています。
2. しかし、当人自身がハラスメント言動を行っているという認識は必ずしも高くないことも示され、加害者の認識は約4~5人に1人という割合に留まっています。
3. この結果については、当人がハラスメントに当たる行為を行っていることについて自覚しておらず「見えていない」という可能性も考えられますし、あるいは、ハラスメントに当たる行為を行っていると自覚していてもそのことを回答せず「見せていない」という可能性も考えられます。しかしいずれにせよ、当人と周囲の認識および報告にはギャップが生じていることがわかりました。

 つまり、当人と周囲のあいだにある認識上のギャップが、ハラスメントという問題をより深刻にしていると考えられます。
 また、そうした当人と周囲のギャップは、企業規模や職種、職場の人数などによって大きくなる場合もあるようです。その結果を整理して考察すると、図表8のようになります。
 
図表8. 〈周囲調査〉と〈当人調査〉の結果の考察

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 自覚できるハラスメント言動そのものに対処することはもちろん重要ですが、「自分がハラスメントを行っているのではないか」という点について注意を払えるようになることも同じくらい重要です。また、自身の言動だけでなく、周囲には目に見えていないハラスメントが起きている可能性があり、そうした認識を高めていくことも重要です。
 “気づかないうちに自分が加害者になっているのでは?” “周囲にはハラスメント被害に遭っている人がいるのでは?”という意識を持てるように、ハラスメントに対する知識を深めていくこと。そして、その知識を自分自身に当てはめて内省する機会を持つこと。これらが、健全な職場づくりのために必要となるのではないでしょうか。

 2020年施行のパワハラ防止法をきっかけに、職場内でのハラスメント防止に向けた対策がますます重要となってきています。
 今後は、本リリースでご紹介した内容に加えて、職場のハラスメントにつながる加害者の意識や組織風土に関する調査項目を踏まえた追加分析を行っていく予定です。
 また、企業内での活用を想定した尺度開発を進めるとともに、その尺度を用いて、株式会社労務行政が提供するeラーニング教材「ハラスメントシリーズ」<https://www.rosei.jp/static.php?p=el_list#har>の受講効果の検証を行っていきます。


※本調査を引用いただく際は、出所として「一般財団法人 労務行政研究所 × 筑波大学 働く人への心理支援開発研究センター」と記載してください。
※「職場のハラスメント言動」の測定項目について使用・転載される場合には、目的の如何を問わず、必ず労務行政研究所にお問い合わせくださいますと幸いです。


調査概要


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<調査手順>
1.予備調査として、自由記述式アンケートによる「昨今、日本の職場でのハラスメントに該当すると思われる行為や言動として、どのようなものがあると思いますか」という設問に対して得られた回答を分析し、ハラスメント言動を構成する概念(初期仮説)を抽出。
2.初期仮説に基づくインタビュー調査を実施。測定項目を改良・追加し、項目内容を確定。
3.確定した測定項目を用いて第1回調査を実施。発生頻度が高い項目を選別し、探索的因子分析を実施。17項目による「職場のハラスメント言動」因子を導出。
4.第2回調査を実施し、上記の因子構造を確認的因子分析により検証。
※本リリースでは第2回調査の結果を抜粋して掲載している。


■一般財団法人 労務行政研究所<https://www.rosei.or.jp/
1930年7月設立(2013年4月、一般財団法人に移行)。1.人事労務の専門情報誌『労政時報』ならびに WEB コンテンツの編集、2.人事・労務、労働関係実務図書の編集、3.人事・労務管理に関する調査などの事業を通じて、人事をめぐる課題解決を支援。
<本リリースに関するお問い合わせ先>
TEL:03-3491-1320 Mail:solution_info@rosei.or.jp(ソリューション開発部)

■筑波大学 働く人への心理支援開発研究センター
http://www.human.tsukuba.ac.jp/counseling/t-one-lab/
2019年4月に設立。働く現場の急速な変化とともに高まる「心の理解」「働く人への支援」「指導・支援する人材の高度化」などのあらゆるニーズに関して、研究・コンサルテーション・教育研修・カウンセリングの観点から総合的に対応し、働く人を取り巻くあらゆる環境の改善をめざすワンストップでのサービス提供拠点。
<本リリース・その他のお問い合わせ先> t-onelab_info [at] un.tsukuba.ac.jp (事務局)

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