Polimill株式会社(以下、ポリミル)で自治体向け生成AI「コモンズAI」の導入・教育担当として活躍する谷口野乃花さん。社会人学生でありながら、同社の正社員として奮闘する日々を送っています。
中学生の頃から複数の起業を経験し、高校生で地方創生に興味を持った彼女の軌跡と、AIが地方創生にもたらす可能性をうかがいました。
【プロフィール】
慶應義塾大学経済学部在学中。中学時代から起業家精神を発揮し、幼児教育事業やオンライン音楽教室を展開。高校卒業後、ITベンチャーでの経験を経て、地方創生への思いからPolimill株式会社に入社。同社では自治体向け生成AI「コモンズAI」の導入・教育担当として活躍中。持ち前のコミュニケーション能力で、AIを通じた地方創生に挑戦している。
初起業は中学生!一度社会人を経験して大学へ進学
――はじめての起業は、なんと中学生の頃だったそうですね。
はい(笑)。その頃から「みんなが幸せになる企画」を立てては実行していました。
幼児向けのカードゲームをつくったり、オンラインの音楽教室のサービスを立ち上げたり。学校で勝手にイベントを企画して先生に怒られたこともありましたね。イベントの企画では、常に仲間集めを大切にしていました。
私はアイディアを思いつくのは得意なのですが、ひとつのものを1から10まで構築するのは苦手です。ですから「これやってみたい人―!」と私が目指しているところを説明して、それに共感してくれる人を仲間として迎え入れることを繰り返してきました。
そういった経験を通じて、人を巻き込んで何かを成し遂げる楽しさを学んできたように思います。
――大学にストレートで進学せず、一度社会人になったそうですね。
私たちの世代は高校生のときコロナ禍がありました。文化祭がなくなるなど、急に色々なことがうまくいかなくなって、将来自分が何をしたいのか、わからなくなりました。そのまま大学に行っても、時間を無駄にしてしまうかもしれない。そこでまずは実社会を経験し、自分の適性や本当にやりたいことを見つけた上で大学に進学した方がいいと思ったのです。
――1社目でベンチャー企業を選んだ理由は?
ベンチャー企業なら、大企業と違ってマルチに様々な業務を経験できると考えました。また組織が小さい分、自分の意見や行動が会社に直接影響を与えられる。そんなダイナミックな環境に惹かれました。
――ベンチャーでの経験はいかがでしたか?
1社目の不動産ベンチャーでは、営業部隊のメンターを務めました。メンバー1人1人の特性や希望を理解することを学びました。コミュニケーションが得意な人、SNSマーケティングが強い人など、それぞれの強みや持ち味を活かすカウンセリングをしたら、不動産初心者でもすぐに案件が取れるような結果になりました。そのため営業部全体の成績が上がりました。
自治体行政を変革したい!社会人学生としてポリミルに入社
――地方創生に興味を持ったのは、何がきっかけだったのですか?
高校1年生の時、経済の授業の一環で高知県を訪問したのがきっかけです。そこで見た現実は、教科書で学ぶ以上に衝撃的なものでした。
高知県では若者の流出が深刻な問題となっていました。でも、よく話を聞いてみると、本当は地元が大好きで、できれば残りたいという気持ちがあるのです。ただ、やりがいのある仕事や教育の機会がないから、仕方なく出ていく。その現状をなんとかしたいと強く思いました。
(経済の授業(高知県訪問含む)でのフィールドワークの様子)
1社目の経験を通じて、少しずつ「本当にやりたいこと」がわかってきました。そしてITリテラシーの向上を通して「誰もが住みたい場所で、やりがいを持って働ける社会」の実現を目指したいと考えるようになりました。そんなとき、ポリミルに出会いました。
――現在の勤務先・ポリミルは、どのような事業を展開しているのでしょうか?
ポリミルはAIを活用した地方創生に取り組むベンチャー企業です。主力サービスの「コモンズAI」は、自治体業務にも最適な生成AIで、行政の効率化と市民サービスの向上を支援します。また、社会課題への参加と対話のためのSNS「Surfvote」も展開し、市民と行政をつなぐプラットフォームを提供しています。
私は主に「コモンズAI」の普及に携わっています。具体的には、自治体への導入支援や、職員の方々への教育プログラムの開発・実施を担当しています。
(展示会でコモンズAIの説明をする様子)
――コモンズAIについて、もう少し詳しく教えていただけますか?
一般的な生成AIとは異なり、行政特有の専門知識や文脈を理解できるのが大きな特徴です。
たとえば、「ふるさと納税」や「地方交付税」といった自治体特有の制度を理解し、関連法規や運用実態まで把握しています。また、議会への報告資料作成や補助金申請書のチェックなど、自治体職員の日常業務を直接サポートできます。
専門知識を社会実装できる革新的な生成AI「コモンズAI」で省庁・自治体を改革!
――コモンズAIは地方創生にどのように貢献するのでしょうか?
まず、業務効率の大幅な向上が期待できます。コモンズAIが定型業務を代替することで、職員の方々はより創造的な業務や住民との直接的なコミュニケーションに時間を割けるようになります。
また、専門知識の補完も重要です。地方では専門職の採用が難しいケースが多いのですが、コモンズAIが法務や財務などの専門的アドバイスを提供します。
さらに、データに基づく政策立案の支援も行います。人口動態や産業構造の分析、他自治体の成功事例の調査など、エビデンスに基づいた政策形成をサポートできるのが特徴です。こうした効果が相まって、最終的に市民のウェルビーイング向上につながると考えています。
――自治体には一般企業とは異なる文化があります。特有の文化や問題に対してはどのように対応していますか?
コモンズAIはこうした自治体の特性も考慮に入れて設計されているのが強みです。過去の行政文書や他自治体の類似事例を簡単に検索できる機能により、より柔軟な意思決定をサポートします。
また、組織の壁を越えた情報共有も促進します。複数の部署にまたがる課題に対して、関連する全ての情報を横断的に分析し、総合的な解決策を提案できます。
包括的な教育プログラムの提供を通して自治体業務の効率化を目指す
主な課題は職員のAIリテラシー向上です。生成AIは便利なツールですが、使いこなすにはAIへの適切な指示(プロンプト)の出し方が重要になります。私たちは「上司が部下に指示を出すように」具体的で、明確な指示を与えることをアドバイスしています。
生成AIの活用は、自治体ごとにスタートラインが違います。まったく使ったことがないところと、利用経験があるところとでは、前提が異なるからです。抱える課題も自治体によって違いますので、ポリミルは導入時の課題抽出や研修に力を入れています。操作方法だけでなく、コモンズAIを活用した業務改革の考え方まで、包括的な教育プログラムを提供していきます。
そこで役立つと考えているのが、私の前職での経験です。以前、不動産系ITベンチャーのメンターとして学んだのは、人と人とのコミュニケーションの重要性です。どんなに優れたサービスも、使う人の心に寄り添えなければ十分に活用できません。
前職で培った「観察力」「コミュニケーション能力」「人の才能を引き出す力」が、現在のコモンズAI導入教育に活きていると思います。
たとえば、自治体職員の方々の業務スタイルや課題を細かく観察し、それぞれに合わせた生成AI活用方法を提案できます。同時に生成AIという新しい技術に対する不安や抵抗感を和らげ、前向きに取り組んでもらうことも大切です。そのため、きめ細かなコミュニケーションを心がけています。
市民のウェルビーング向上で「みんなを幸せに」
――コモンズAI導入の効果は、どのように評価していく考えですか?
コモンズAIは業務効率化だけでなく、最終的には市民のウェルビーング向上にまで貢献できます。すでに大阪府の阪南市では大学と連携してコモンズAI導入の効果を科学的に検証するプロジェクトも進行中です。
コモンズAIの導入前後で、職員の業務効率がどう変わったか、さらには市民サービスの質がどう向上したかを測定するといったこともやっていきます。こうしたエビデンスを積み重ねていくことで、生成AIの真の価値を示せるはずです。
――今後、ポリミルでどんなことに取り組みたいですか?
コモンズAIの企画開発・導入からサポートまで一気通貫で関わりたいですね。このサービスは、導入して終わりではありません。継続的に使ってもらい「導入してよかった」と思ってもらうことが大切です。
そのためには、各自治体の課題感と目標をしっかり理解し、長期的な関係を築いていく必要があります。ツールの提供だけでなく、地方創生のパートナーとして自治体と共に歩んでいきたいです。
――最後に谷口さんの夢を教えてください。
私の夢はテクノロジーの力で、誰もが住みたい場所で幸せに暮らせる社会を作ることです。それは中学生の頃からの「みんなが幸せになる企画」の延長線上にあります。
コモンズAIを通じて、地方自治体がより効率的に、そして創造的に運営されるようになる。その結果、地方でも都会と変わらない、あるいはそれ以上の充実した生活が送れるようになる。そんな未来を、一歩一歩実現していきたいと思います。
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