産業・社会インフラに関わるさまざまな分野でグローバルな社会に貢献してきた富士電機株式会社は近年、製造業DXを実現するためのソリューションとして、「グローバルスマートファクトリー(GSF)」に関する製品を多数提供しています。GSF製品は、多くの企業が苦労している基幹システムと生産現場との情報連携を低コストで実現します。なぜ、そんなことが可能なのか。GSFの拡販を担当するDX技術部長の東谷直紀に話を聞きました。
どの企業でも起こり得る基幹システム導入時のトラブル
2024年、国内の大手メーカが、主力製品群の出荷を3カ月以上にわたって停止するという異例の事態が発生しました。経営資源の基幹システム「SAP」の導入に伴うシステム移行時に障害が発生したことが原因だと報道されています。
これは決して特異なケースではありません。どの企業にも起こり得ることです。
これほどの大規模ではなくても、デジタル化された工場を稼働させているメーカにとって、SAPなどの基幹システムと現場を繋ぐことは、必須でありながら大きなリスクを伴う難題なのです。
DX担当者が頭を抱える「ERPパッケージ連携」
経営におけるDXの必要性が叫ばれる中、ヒト・モノ・カネといった企業の経営資源を統合的に管理するERP(Enterprise Resource Planning)を導入する企業が増えています。中でも、ERPパッケージの世界市場でトップシェアを誇るSAPは、日本国内でも多くの企業が導入しています。
SAPは基幹システムをパッケージとして導入できるという利点がありますが、一方で厄介な問題がつきまといます。特にメーカにとっては、これまで工場で機能してきたMES(Manufacturing Execution System)などの既存のシステムとの連携・統合が難しいのです。
富士電機で製造業DXソリューションの拡販を担当する東谷はこれまでの経験を踏まえ、SAPなどのERP導入にあたって多くのお客様が苦労している課題をこう説明します。
「工程が細分化されている日本の製造現場では、ERPに合わせて現場の業務を変える必要があるケースもあるようです。現場の権限が強く部門ごとに違うシステムを導入していることが多い日本企業はシステム連携に苦労しています」
低コスト・スピーディー連携が実現する理由
富士電機のGSF製品は、このやっかいなERP連携も難なくクリアして、データ統合された分析基盤を構築することを可能にします。他社とは一線を画す独自のポイントは、SAPなどのERPパッケージを無理にカスタマイズしたり、現場のシステムを入れ替えたりする必要がないことです。“繋ぎ役”として富士電機のMES「MainGATE(メインゲート)」を導入するだけで済むのです。
「MainGATEはデータ形式を統合できるのが特徴です。各現場で既存システムなどに集まってくるデータを一旦、MainGATEに吸収して集約します。MainGATEはERPとスムーズに連携できるように設計されていますので、結果として現場のデータがERPと統合されるのです。既存システムをそのまま使えるので、コストも大幅に節約できます。状況にもよりますが、実際の導入額が予算額と2ケタ違うケースもありました」
コストをかけずに、企業の役員室と工場の現場が垂直に直結するシステムを構築できる基幹と現場をつなぐMES、MainGATE。ある化学メーカでは、実際にこの手法が効果を発揮しました。
このメーカでは、長年使用してきた基幹システムを刷新する業務改革の試みとして、SAPの導入が決定していました。ところが、計画を具体化していくうちに、工場側のMESとの連携が非常に難しいことが判明し、困惑が広がったといいます。
その後、複数のベンダーからの提案が検討された結果、SAPとともに富士電機のMainGATEを導入することが決定。基幹と現場をつなぐMESという手法のメリットや、今後のカスタマイズを見越したエンジニアリング力、複数のメーカを取りまとめてプロジェクトを行ってきた実績などが評価されました。
「価格や実績に加えて、リリースまでの速さにも注目していただきました。ERPの側をカスタマイズする方針で進んでいたら計画全体が2年ほど遅れていた可能性も大いにありましたが、私たちはもっとスピーディーに、要件定義から設計、導入までの一連の作業を1年余りで終え、リリースすることができました」
集めたデータは「ものつくり」のスマート化にも活用
MainGATEを導入すると、SAPとの連携実現だけではない、大きな「副産物」がついてきます。
基幹と現場をつなぐMESとしてのMainGATEは、富士電機が提供するGSF製品群の一部にすぎません。GSF製品群にはMESに加えて、エネルギーの運用状況を管理するEMS(Energy Management System)や、工場設備の維持管理に関するシステム、物流管理システムなどがあり、「ものつくり」に関わるすべての情報を統合し、一つの分析基盤に統合することを可能にします。
統合されたデータ分析基盤に集められた情報は、ERPに渡されて企業の管理部門で活かされます。同時に、こうした情報を製品の開発・設計を担当する部門にも渡すことによって、品質や生産効率の改善といった「ものつくりのスマート化」にも活用することができるのです。
「工場で日々の改善のために必要とされるのは、時間単位、分単位、秒単位での設備の稼働状況や在庫状況といった情報です。この点、ERPなど経営基幹システムが集める情報は日月単位ですから、工場から見たら実は粒度が粗い。データ連携の次のステップとして、経営側が細かいデータを収集し、リアルタイム経営をできる環境づくりを進めることをお奨めしています。経営と現場、それぞれが欲しい粒度の情報を横串を通して集められる状態が理想です」
富士電機(株) 情報ソリューション事業部 DX技術部長 東谷直紀
統合されたデータ分析基盤に集められた情報を、企業経営と「ものつくり」の現場の両方で活かしていくことがGSF製品によって実現する「工場DXプラットフォーム」の姿なのです。
「DXに必要なのは、企業としてめざす姿をしっかりイメージした上で、状況に合わせてできることを一つひとつ積み重ねていくことです。ERPとの連携もそうですが、実際にはいくつもの壁が待ち受けていて、困難が伴うことも多々あります。私たち富士電機が多くのお客様から信頼していただいている大きな理由の一つは『絶対に逃げない』ということです」
どんな困難に遭遇しても、富士電機は最後まで、経営者の皆さまに伴走して解決策を探していきます。
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