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STORY ドローンと宇宙で描く新たな未来——女性たちの可能性を広げるコミュニティの軌跡

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ドローンと宇宙で描く新たな未来——女性たちの可能性を広げるコミュニティの軌跡

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「ジェンダー平等の実現に貢献することをミッションに、成長産業で女性が活躍するきっかけをつくる」――この理念のもと、男性が9割以上と言われるドローン業界と宇宙業界で、女性限定のコミュニティ「ドローンジョプラス」と「コスモ女子」を運営する株式会社Kanatta。その代表取締役社長である井口恵(いぐちめぐみ)氏が、2024年9月にForbes JAPANの「WOMEN AWARD」パイオニア賞を受賞しました。この賞は、女性が少ない分野で道を切り開いた先駆者に贈られるものです。


井口恵氏は、女性コミュニティの形成と初の人工衛星打ち上げ成功、次世代の女性への宇宙への興味喚起と可能性の拡大、さらに育児と仕事を両立するロールモデルとして高く評価されました。なぜ彼女は、女性が少ないドローン業界や宇宙業界でコミュニティを立ち上げ、今なお拡大を続けているのか。その想いに迫るべく、井口恵氏に話を伺いました。


株式会社Kanatta 代表取締役社長 井口恵(いぐちめぐみ)氏

株式会社Kanattaの起業に至った経緯と、その想いをお聞かせいただけますか?

Kanattaを立ち上げたのは、自分自身の経験から、女性のキャリアには様々なハードルがあることを感じ、そのような社会課題を解決したいと思ったためです。


私は7歳から13歳まで父の仕事の都合でアメリカに住んでいたのですが、そこで日本ではなかなか経験しないような貧富の差を目の当たりにし、将来は自分も父のように家族を養えるような経済力が欲しいと思うようになりました。女性が稼ぐには資格を持っていた方が良いという両親からの勧めもあり、大学在学中に公認会計士試験に合格し、新卒で監査法人に入りました。


監査法人での仕事はとにかくハードで、入社初日から終電帰りでした。入社2年目からは朝まで働くようになりましたが、私は仕事が好きだったので、そのような働き方自体に不満はなく、むしろ好きなだけ働ける環境が有難いと思っていました。しかし、30代40代の上司も同じような働き方をしていたことや、結婚や子育てを理由に離職する女性が多く、結果的に女性の管理職がほとんどいなかったことを理由に将来への不安を感じ、転職を決意しました。


会計士時代の井口恵氏、同僚たちとの撮影


転職先のLVMHは基本定時上がりで、所謂ホワイト企業でした。それまでとは真逆の生活になり、最初のうちは楽しかったのですが、バリバリ働くことが好きな私はだんだん物足りなくなってしまいました。また、従業員の8割が女性にも関わらず役員は全員男性という状況を見て、ここでも女性がキャリアアップするにはハードルがあることを感じました。


2社での経験を経て、自分自身が感じた女性のキャリアに関する社会課題を解決するような仕事がしたいと思い、Kanattaを創業しました。

コミュニティでは具体的にどのような活動を行い、これまでにどのような成果を上げてきましたか?

ジェンダー平等の実現に貢献するというビジョンを達成するため、Kanattaではテクノロジーを活用した成長産業で、女性が活躍するきっかけをつくっています。具体的にはドローン業界および宇宙業界で、それぞれ「ドローンジョプラス」と「コスモ女子」という女性限定コミュニティを運営し、未経験のところから仕事に繋げるためのサポートをしています。


ドローンジョプラスでは、毎月ドローンの実技および関連する法律などの座学の講習を行いながら、農業や物流などの産業ドローン、子供向けのドローン操縦体験など案件の紹介をしています。コスモ女子では毎月宇宙の基礎的な知識を学べる講座を開催しながら、宇宙関連のプロジェクトを多数立ち上げています。宇宙の魅力をより多くの方々に発信するため、宇宙の仕事を紹介するメディアである「コスモ女子宇宙のお仕事図鑑」の運営、バーチャル宇宙旅行などのイベント開催をしながら、人工衛星の打ち上げにも挑戦しました。


初心者からのスタートでしたが、技能講習会や勉強会を通じて情報や知識を獲得し、産業ドローンの案件に参加することで現場の業務経験を積むことができています! — ドローンジョプラスメンバー


人工衛星の打ち上げは、コスモ女子立ち上げ当初から取り組んできた4年がかりの一大プロジェクトでした。宇宙開発未経験の自分たちがが人工衛星の打ち上げにチャレンジする姿を通じて、より多くの方が宇宙に興味を持ったり、自分も何かに挑戦したいというきっかけをつくりたいという想いから、様々な困難を乗り越えながらなんとか打ち上げに漕ぎ着けました。そして、2024年8月には、日本で初めて女性中心のコミュニティで人工衛星の打ち上げ、そして通信に成功したというニュースを様々なメディアに取り上げていただきました。


人工衛星打ち上げプロジェクトは未経験からの挑戦で、たくさんの壁もありましたが、その分、打ち上げに成功したときの感動は言葉に表せませんでした!楽しい仲間と貴重な経験を積むことができ、自身のキャリア形成にも役立っています!— コスモ女子メンバー


今後もドローンジョプラスおよびコスモ女子の活動を通じて、より多くの方々にドローンや宇宙の魅力を届け、業界の発展に貢献することが目標です。

ご自身の出産・育児経験から、女性が働き続ける上で感じた課題や、それを乗り越えるためにどのような取り組みをされていますか?

私自身、昨年の5月に第一子を出産しました。ずっと子育てをしながら仕事をすることが目標だったので、とても嬉しかったものの、妊娠中はとにかくつわりがひどく、2ヶ月ほど仕事から離脱してしまいました。その後は幸い体調も改善し、「お産中以外は仕事します!」と宣言していたのですが、周りの仲間から、「絶対無理だから、とにかく自分が持ってる仕事を全部他の人に引き継いで!」と説得され、出産の1ヶ月前に引き継ぎをしました。


子どもが産まれてからは、子育ての大変さを思い知り、出産前の自分の発言を全面的に撤回したい気持ちでした(笑)。それまでは出産後に仕事を辞めてしまう同僚を見て、せっかくのキャリアがもったいないと不思議に思っていましたが、自分で経験してみて初めて仕事と子育ての両立がいかに難しいかを理解しました。


それと同時に、Kanattaで取り組んできたことに改めて価値を感じたのも事実です。出産、育児を通してよりコミュニティの必要性を感じました。一人でできることは限られているので、チームで仕事をして、自分以外にも同じ仕事ができる人がいる状態をあらかじめ作っておくことの大切さを痛感したのです。実際子どもが1歳になった今でも、子どもの突然の発熱などを理由に仕事をキャンセルせざるを得ないときもあります。そんなときに安心して任せられる仲間がいることは幸せなことですし、急遽子連れで職場に行った際もみなさんが快く迎えてくださることは有難いです。


井口恵氏の周りには安心して仕事を任せられる仲間が多くいる


女性が働きやすい会社は男性も働きやすく、離職率が低いという調査レポートが数年前に発表されましたが、その通りだと感じます。ライフステージの変化によって働き方が変わるのは女性だけではないので、Kanattaの発展を通じて、性別関係なく誰でも柔軟な働き方を選べる社会を実現できればと思っています。

今後、コミュニティをどのように発展させていきたいとお考えですか?

今後もドローンジョプラスとコスモ女子を拡張し続けて、それぞれの業界で性別関係なく誰もが活躍していることが当たり前の状態をつくることが私のビジョンです。2016年にKanattaを立ち上げた当初、ドローン業界は9割以上が男性と言われていましたが、市場全体が約10倍に伸びてきた今でも男女比率は当時からほとんど変わっていません。宇宙業界もここ数十年女性の比率が2割に留まっていることが国際的にも課題になっています。


そのような状況なので、今は敢えて女性限定コミュニティを運営し、より多くの女性が活躍するきっかけ作りをしていますが、理想はドローン、宇宙業界が男女関係なく活躍できる業界になることです。そういう意味では、私たちの活動がいらなくなったときに本当の意味でビジョンを達成したことになると思っています。


Forbes JAPANの「WOMEN AWARD」授賞式の様子




井口恵氏の情熱は、多くの女性に新たな可能性と勇気を与えています。彼女が築いたコミュニティは、女性たちの自己実現の場となっています。


「一歩踏み出せば、未来は変わります。私たちはその一歩を全力でサポートします」と井口恵氏は語ります。


ドローン業界や宇宙ビジネスで活躍したい方、育児と仕事を両立したい方は、ぜひ「ドローンジョプラス」と「コスモ女子」にご参加ください。


コミュニティへの参加方法やお問い合わせ先


あなたのご参加を心よりお待ちしております。




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