左:Product Management Team マネージャー 後藤 耕大
右:Product Engineering Team3 吉田 直人
※2024年7月時点
採用活動の入り口として重要な役割を担う求人票。その良し悪しが採用の成否に大きな影響を及ぼします。しかし、75%の採用担当者が自社の求人票に課題を感じており、特に作成プロセスにおける問題が多いのが現状です(※1)。
これらの課題を解決するため、Thinkingsが2024年4月にリリースした採用管理システムsonar ATSの新機能『AI求人作成アシスタント』について、開発時のこだわりや目指す未来を、企画担当の後藤と開発担当の吉田が語ります。
AI活用で目指すのはインパクトある業務改革。単純作業からの解放だけではなく「人の思考」部分のサポート
後藤:『採用管理システムsonar ATS』は、AIを活用する前から既にさまざまな機能が備わっており、2024年4月時点で1,900社に導入され、企業の採用活動の成功に貢献してきました。
応募者情報の集約や採用業務のプロセス全体の見える化、自動化によって業務の効率化を実現しています。特に応募者への選考の案内やリマインドといったメール送信の自動化は高く評価されています。
とはいうものの、単に自動化だけではタスクの置き換えに過ぎません。AIを導入すればタスクだけでなく「人の思考」を代替できるようになり、大きな業務支援になり得ます。また、属人性や専門性の高いタスクを含め採用業務自体の改革ができるので、よりインパクトのあるものになるのではないかと考えました。
この背景のもと、まず2023年4月に採用のマッチング精度向上を支援する『sonar AI』、そして2024年4月に求人票作成を支援する『AI求人作成アシスタント』をsonar ATSに実装しました。
『sonar AI』は企業ごとの書類選考の評価モデルを作り、AIによる予測結果を提供することで選考業務の効率化を図ります。そして、『AI求人作成アシスタント』では、求人票作成の業務の中でも個別の担当者に依存しやすい部分にAIを活用しています。
難しい求人票作成がAIの力でスムーズに。AI求人作成アシスタントで実現できること
後藤:採用業務の中で求人票の作成はシンプルに見えますが、非常に難しいものです。ライティングスキルはもちろんのこと、他社の求人と比べて自社をアピールする点を見つけるリサーチ力やマーケティングスキルも必要です。社内のさまざまな部署から必要な人材の要望を調整するといった、プロジェクト管理能力も求められます。
求人票の作成から完了まで数週間もかかることがあるので、「AI求人アシスタント」は、多くの時間と手間がかかるという採用担当者にとっての課題を解決できる機能です。
この機能の特長は大きく2つあります。まず1つ目は、生成AIを使ったことのない人でも採用したい職種を入力するだけで、簡単に求人票のたたきが作成できることです。
2つ目は、人材要件や人物像のような、表に見えにくい採用の検討過程の情報を作ることができる点です。採用したい人物像と付随するスキル要件なども含めて、検討に必要な情報も一緒に出力できるため、これを叩き台として関係部署との議論などがスムーズに行えるようになります。
数百回のトライ&エラーを繰り返し上げていった、AIの「生成クオリティ」
吉田:『AI求人作成アシスタント』を実装するにあたり、フロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニアと生成AI担当エンジニアの3名で開発を行いました。
当時、生成AIに関する社内の知見はほとんどなく、ネット記事の収集やサービス(FastTrack for Azure)の利用を通じて知識を深めました。しかし、Azure Open AIを使ったプロダクトについての情報は少なく、手探りの状態でした。
開発で難しかった点は、AIの生成クオリティを上げることでした。開発当初は、生成AIを商用ベースで活用した事例がまだ少なく、私たちがやりたいことのベストプラクティスもあまり公開されていませんでした。そのため、理想の出力を目指しトライ&エラーを重ねていくしかなく、今回の開発では手動で数百回生成AIに読み込ませています。
また、生成AIが作る情報を、求人票のフォーマット通りに出力させるのに苦労しました。
読みやすさと、文章が正しいかどうかについては、機械的に生成AIの出力評価をすることが難しく「今の出力より、もう少し短くて端的な方がいいよね」 といった感じで、開発メンバーで逐一議論し試すといったことを繰り返しクオリティを上げていきました。この部分については、リリース後もPDCAを回し得られたフィードバックをもとにさらに改善しています。
ユーザーの使い勝手が最重要。徹底したこだわりは細部にまで及ぶ
吉田:開発でこだわったのは、ユーザーが体感できる使いやすさです。例えば、チャットの履歴を追わなくても人材要件や人物の内容確認ができる履歴画面を作り、入力欄の自動フォーカスなどのユーザビリティを考慮しました。
また、生成AIのモデル選定も検討を重ねました。
モデルによって、スピード重視・クオリティ重視といった向き・不向きがあり、簡単な指示だとスピード重視でも回答が出力できましたが、前提条件が多い指示ではできません。その場合は、クオリティ重視を使うなど、指示内容に応じて適切な生成AIのモデルを使い分けることでユーザーの使い勝手を追求しています。
さらに、生成AIを使った経験がなく操作に戸惑うユーザーのために、最初に例を出したりわかりやすいチャットのメッセージを表示したりするなど、細やかな部分にこだわって工夫して作っています。
まだまだ進化する『AI求人作成アシスタント』
後藤:『AI求人作成アシスタント』が目指す大きな方向性は2つあります。1つは求人を検討する工程に沿った機能のバージョンアップです。工程を管理できる仕組みを作りながら、自然にAIに触れる体験をユーザーに提供したいと考えています。
もう1つは、1,900社以上の採用を支援してきたなかで培った弊社独自の求人票に関するノウハウと、顧客の業界や職種傾向をもとにした出力ができるようにしたいです。特に、専門職は業界的にも情報があまりありません。そういった部分を補完しsonar ATSの独自性を高め、ユーザーのあらゆる要望に応えられる仕組みを構築していきたいです。
企画と開発が一体で目指す未来は、企業の事業成長に貢献する「組織づくりのプラットフォーム」。
後藤:sonar ATSの今後の目標は、採用を起点とした組織づくりの業務やプロセスを集約・仕組化できるプラットフォームにすることです。
ATSの領域は、募集を開始してから内定承諾をもらうまでがメインとなっています。しかし、組織づくりという観点では、求人募集を開始する前に戦略を立て、入社後の継続的な活躍も含むより広い領域です。
組織づくりは企業の事業成長が前提なので、ただ人材を獲得して終わりではなくその前後の計画が重要になってきます。そういった部分も全て含めてsonar ATSで支援していくことを目標に、現在ロードマップを引いているところです。
吉田:開発チームでは、そのロードマップ通りに開発できる体制づくりを行っています。
具体的には、生成AIを使ったプロダクトアイデアを実現するノウハウを学ぶ勉強会を開いたり、エンジニア全員でハッカソンを行うなどアイデアを創出する取り組みです。前回のハッカソンでは、生成AIで実際にプロダクトに取り入れても良さそうなアイデアがいくつか出ました。エンジニアだから提案できるアイデアがあると知ったので、これからも続けていくつもりです。
人材業界のオピニオンによる『AI求人作成アシスタント』レビュー
『AI求人作成アシスタント』を、人材業界における知見と実績が豊富なオピニオンにご利用いただき、機能に対する専門的評価、今後の改善点や追加機能に関するご意見などをお伺いしました。
株式会社人材研究所 曽和 利光 氏
<プロフィール>
株式会社人材研究所
代表取締役社長 曽和 利光(そわ としみつ)
1971年、愛知県豊田市出身。灘高等学校を経て1990年に京都大学教育学部に入学、1995年に同学部教育心理学科を卒業。
株式会社リクルートで人事採用部門を担当、最終的にはゼネラルマネージャーとして活動したのち、株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株式会社など多種の業界で人事を担当。「組織」や「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法が特徴とされる。
2011年に株式会社人材研究所を設立、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開する。
<機能レビュー>
「AI求人作成アシスタント」は、募集要項を作る際に必要な項目を網羅しているので、情報が足りない部分は仮説ベースでたたき台を作成してくれるところが大変使いやすいと思います。
資格や経歴が書いてあってもパーソナリティなどの抜け漏れは、自分では確認しにくいですが、こちらのツールは情報の抜け漏れがありません。
例えば、人事部に求人票を依頼して、出てきた情報に対してダメ出しするのは簡単ですが、それを最初から自分で作成するとなると難しいですよね。そこで、最初から求人票を作成する工程を短縮して、AIで出力した情報をたたき台として、企業の採用担当者をはじめとした関係者が作り上げることができるというのがポイントだと思います。
また、私自身の経験としても、人事部の人から「○○○できる人材が欲しい」と言われて、人材紹介会社に広告を打っていても、実際のところ、指示された内容と異なるタイプを採用したことがあります。つまり、「人間は発言していること」と「行動していること」が異なることがあるのです。人間がやっていることだけを見て、ビッグデータから拾ってAIが作成してくれるというのは期待の機能だと思います。
改善点で言うと、AIは人間の表現する言葉をまだ少し曖昧なニュアンスで捉えてしまうところがあります。例えば、「チャレンジ精神」と言っても、好奇心なのか、改善なのか、向上心なのか、会社によって採用基準としているものが異なります。加えて、「コミュニケーション能力」にしても、表現力や論理的に表現すること、空気を読むこと、人と仲良くすることなどで捉え方が異なるので、言語化がさらに進化すると良いでしょう。
また、募集要項とセットで、自社の売りをまとめてくれる機能があると良いですね。紹介会社に求人を出す場合、私たちが「こういう人材が欲しいです」と伝えると、「御社の売りは何ですか?」と聞かれることがあります。そういう場合に、自社の中で売りになる部分は一体何なのかというのが、求めるタイプ別に募集要項とセットになって表示されるようになると便利だと思います。
株式会社fanphare 高橋 麻菜美 氏
<プロフィール>
株式会社fanphare
執行役員 高橋 麻菜美(たかはし まなみ)
新卒でホテル業界の法人営業を経験したのち、キヤノングループで人材開発に転身。
その後、ウェディング上場企業であるノバレーゼにて人材開発部長を務め、中途・新卒など年間採用500名程度の採用責任者として従事。子会社の教育、人事制度などにも携わる。
同社で約10年勤めたのち、リクルートグループの海外ブランドであるRGFにて、両面型の人材紹介エージェントへとキャリアチェンジ。IT領域ゲーム業界特化チームのマネージャーを務め、2020年に株式会社fanphareを共同で創業。
現在は執行役員として、主に若手向けの転職支援、人事・採用コンサルティング、教育研修に従事。
<機能レビュー>
「AI求人作成アシスタント」のデモ画面で実際に求人票を作りましたが、思った以上に精巧にできていると感じました。
新しいポジションの募集仕様を考えたくても、何から始めていいかわからない方にとって、「AI求人作成アシスタント」があると便利だと思います。その中でも、ジョブ型雇用のエンジニアやデザイナーなど、職種やポジションを明確に募集している中途採用の領域においては、特に使いやすいと感じました。
また、新職種を設ける場合、現場の人とのミーティングやターゲティングの時間がありますが、その時間が短縮できたのを実感しています。事業会社側やエージェント側の観点からも、議論のスタートが早くなるというのは、最大のメリットですね。
他方で、欲しいと思うのは、自社に必要な人間的要素がベースの中に組み込まれている機能です。これによって、会社のミッション・ビジョン・バリューといった、全職種に共通しているものをあらかじめ登録すれば、求人票を作成するたびに再度登録する必要がなくなると思います。
また、「働き方がフルリモート型ではなく、ハイブリッド型です」という情報を全部統一で求人票に入れる企業も増えているので、入力する内容の標準設定があるといいですね。それから、職業法の改正があった場合、それに伴って必要な求人の項目を増やすといったサポート機能が備わっていると助かります。
私の場合、エージェントと人事の2つの観点で拝見しています。エージェント側が多くの求人票を作るので、人事担当者に代わって詳細な求人票を作成したり、内容の差別化を図ったりできるエージェント向けの機能が加わるといいと思います。AI求人作成アシスタントは、マンパワーが足りていない人事担当者の方はもちろんのこと、担当企業が多いエージェントにとっても必要となる機能だと思いました。
関連リンク
プレスリリース:採用管理システムsonar ATS、「AI求人作成アシスタント(β)」をリリース
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