パーソルグループでは、中期経営計画2026において目指すべき方向性として「テクノロジードリブンの人材サービス企業」への進化を掲げ、グループ各社がテクノロジー活用の取り組みを加速させています。
今回は、転職サービス「doda」をはじめとした多様な人材サービスを通じて、転職・就職支援や採用・経営支援を手がけるパーソルキャリアのテクノロジー本部 本部長 上妻(こうづま)にインタビュー。同社が掲げるテクノロジー活用の方針や具体的な取り組みと、今後の展望について話を聞きました。
パーソルホールディングスが運営するWebメディア「TECH DOOR」では、パーソルグループ内で取り組んでいるITプロジェクトを紹介しています。本記事と併せてぜひご覧ください。
自分の役割を決めず、新たな役割やまだ存在しない仕事を作り出す
―これまでのご経歴をお聞かせいただけますか。
音楽スタジオでのレコーディングエンジニアやアパレル業界での販売員経験を経て、2005年にインテリジェンスITソリューションズ(現パーソルキャリア、以下旧インテリジェンス)に入社しました。
ヘルプデスクからスタートしてネットワークエンジニアやWebサービスエンジニアなどを経験した後、2012年に新設されたITの知見をもって会社全体の事業成長や収益向上に貢献する「BITA」組織のマネジャーに就任。そこから転職サービスの「doda」サイトやアプリ、新規サービスなどさまざまなシステムやサービスの企画・開発とそのマネジメントに携わってきました。
2022年から現職、テクノロジー本部の責任者を務めています。テクノロジー本部は、転職サービス「doda」をはじめとしたパーソルキャリアが手がける多様なサービスの開発や、それらを運営する事業のプロセス設計や業務システム開発、全社的な業務フロー改善や生産性向上の取り組みなどを担う組織です。
―テクノロジー本部はどのような組織体制になっているのでしょうか。
2023年4月から「職能」と「プロダクト」の要素を組み合わせた「マトリックス組織」を採用しており、メンバーはテクノロジー本部と現場組織の両方に所属する形になっています。
マトリックス組織イメージ図
転職サービス「doda」のブランド力と豊富なデータを活かし、ハイクラス領域の強化へ
―パーソルキャリアの事業を取り巻く市場環境について、どのように捉えていますか。
労働人口が減少する一方、一人当たりの転職回数が増えること、またはたらき方の多様化によって複業・兼業人材が増えることなどをふまえ、転職市場は継続的に高成長すると見込んでおり、パーソルキャリアとしてのお客さまに対するタッチポイントは法人・個人ともに増えていくと考えています。
―そうした状況をふまえ、パーソルキャリアとしてはどのような戦略を打ち出しているのでしょうか。
転職市場の高成長を背景に、すべての領域に対して網羅的にアプローチを強化していきたいところではありますが、中でも特に大きな成長が見られるハイクラス領域でしっかりと事業を伸ばし、提供価値を拡大していく戦略を掲げています。
―ハイクラス領域に注力していくにあたり、パーソルキャリアの強みになるもの、また強みにしていきたいものはどのような要素ですか?
人材紹介や求人媒体などをはじめ、転職希望者や法人企業のニーズに応えるべくご提供してきた多様なソリューションがあること、また国内最大級の規模を持つデータベースがあることは、強みになり得るのではないかと考えています。
また転職サービス「doda」では、ご登録いただいた転職希望者の経験や希望などをもとに「適切なキャリアアドバイザーグループを自動でアサインする仕組み」や「求人情報を自動でご紹介する仕組み」など、機械学習を活用したマッチング機能をご提供しています。こうしたデータやテクノロジーによって転職希望者に適したマッチングを導くロジックも、私たちの強みの一つとしていきたいところです。
―具体的に、どのようにハイクラス領域を強化していこうとお考えですか。
以前はハイクラス向けキャリア戦略プラットフォーム「iX」というブランドを個別に立てていましたが、2022年に「doda X」へとリブランディングしました。今後は「doda」のブランド力を活かしたアプローチを実施していきたいと考えています。
これを実現するために、パーソルキャリアのサービス群をしっかりと繋ぎ、適切に活用できるデータを生み出していくことが私たちテクノロジー本部に求められると考えています。
セキュリティ・ガバナンス強化との両輪で進める、新たなテクノロジー活用の取り組み
―続いて「新たなテクノロジーの活用」をテーマに、パーソルキャリアにおける取り組みの状況をお聞かせいただけますか。
多様なテクノロジーが登場している中で、特に生成AIについては現場でも経営としても力を入れていくべきテーマとして認識しており、これを活用する取り組みが社内で同時多発的に進められてきました。
現在は、こうした現場起点のさまざまな取り組みを可視化して “会社として” 活用を進めていくために、現場の事業責任者や企画責任者が運営委員として集まり、方向性の確認や情報共有をしています。
―具体的に、どのような形で生成AIが活用されているのでしょうか? 主な事例を教えてください。
まずは第一段階として社内の各個人の生産性を高めるべく、社内向けのチャット型サービスを展開し、各事業のさまざまな業務で使ってもらっています。
さらに次の段階では、「doda」や「dodaダイレクト」をはじめお客さまにご提供しているサービスに生成AIを組み込むことを考えており、事業ごとに検証を進めているところです
―そうした新たなテクノロジーの活用を進めることによって、お客さまにどのような価値を提供できるとお考えですか。
お客さまにとっての、選択肢の幅を広げることができるのではないでしょうか。一人ひとりのキャリアアドバイザーや、サービスの決められたフローやロジックに依存することなく、自分自身に合った転職の仕方やはたらき方を選んでもらえるようになれば嬉しいですね。
―新たなテクノロジーの活用を推進するにあたって欠かせない、「セキュリティやガバナンスの強化」という観点で取り組まれていることがあれば教えてください。
お客さまの大切な情報をお預かりするという事業の性質上、これまでもセキュリティやガバナンスは特に重要なものとして取り組んできましたが、今後その重要度はさらに2倍、3倍になるものと認識し、体制強化を進めています。
具体的に、これまで「エンジニア」や「ITコンサルタント」などの職能によって分かれていた組織体制から、セキュリティやガバナンスを含む「ITマネジメント」の機能を切り出し、これらの領域を専門とする組織をつくりました。この組織を主体として、実行計画を立てて今後取り組みを進めていきます。
“一人ひとりがキャリアオーナーシップを発揮できる社会” の実現に向け、サービス開発や新たな顧客体験の創出に挑戦
―最後に、今後についてのお話を聞かせてください。テクノロジー本部としての今後の展望をどのように描いていますか?
パーソルキャリアが掲げる “人々に「はたらく」を自分のものにする力を” というビジョンは、私たちテクノロジー本部としても本当に目指したいものなので、まずはこれを実現するためのサービスづくりをしっかりと進めていきたいなと。その中で新たなテクノロジーも活用しながら、新たなサービスや顧客体験を生み出すことにも挑戦していきたいと思っています。
またパーソルキャリアとして提供するサービスが多様化してきた中で、求められる品質を担保するための整備、全体としての統制も必要になってくるはずです。今後のさらなる拡大を見据え、こうした取り組みを実行支援する機能づくりにも取り組んでいければと思います。
―パーソルグループにおいて、パーソルキャリアのテクノロジー部門として今後どのような役割を果たしていきたいとお考えですか?
テクノロジー本部の本部長に着任し、グループ各社のテクノロジー活用をリードする方々と接する中で、皆がグループのビジョンに共感して同じ方向を目指していることを改めて実感しています。これからもグループ各社の皆さんを信頼して一緒に取り組んでいきたいと感じています。
その中でパーソルキャリアとしては、グループとしての実施が難しい取り組みにも先駆的にチャレンジし、グループ全体の勢いをリードする “トップバッター” や “フォワード” と言える存在になっていければ嬉しいなと思います。
※2024年3月時点の情報です。
パーソルホールディングスが運営するWebメディア「TECH DOOR」では、パーソルグループ内で取り組んでいるITプロジェクトを紹介しています。本記事と併せてぜひご覧ください。
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