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STORY 誰もがクリエイターになれる現代。「自分ごと化」して考えるデジタルエチケットのあり方とは。これからのデジタル社会を担う若年層に向けたPBL型教育プログラム「10代のデジタルエチケット」誕生秘話

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誰もがクリエイターになれる現代。「自分ごと化」して考えるデジタルエチケットのあり方とは。これからのデジタル社会を担う若年層に向けたPBL型教育プログラム「10代のデジタルエチケット」誕生秘話

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一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)は、コンテンツの正規流通と知的財産権侵害に関する本質的な理解促進を目的として、2023年より若年層に向けた教育プログラム「10代のデジタルエチケット」の提供を開始しました。

このプログラムは、10代の若者たちがコンテンツの保護を自律的に「自分ごと化」して考え、個人として必要なことであると主体的に理解するための教育プログラムとして、経済産業省受託事業の一環のもとCODAと一般社団法人STEAM JAPAN、そしてCODA顧問弁護士である前田哲男弁護士(染井・前田・中川法律事務所)の監修により開発されました。

 課題解決型学習として欧米を中心に積極的に採用されているPBL(Project Based Learning)を教育プログラムの手法として採用し、「どうすればデジタルエチケットを守れるのか?」をテーマに、コンテンツを取り巻く諸課題について「なぜ問題なのか」「どうしたらいいのか」を実社会に紐付けて考えるプロセスを提供しています。


 日本コンテンツの海外展開の促進と海賊版対策を主な事業とするCODAが、コンテンツ保護に関する新たな教育・啓発プロジェクトとして取り組んだ教育プログラム。その誕生の舞台裏、そして開発に込めた想いについて、担当者が振り返ります。


「10代のデジタルエチケット」キービジュアル



現在の海賊版対策の主戦場はオンライン。若年層への教育・啓発が重要に―

 海賊版サイトや侵害コンテンツに対しては、従来からさまざまなシーンで広報やイベントが行われ、何となく多くの人が「海賊版はダメなもの」という認識は持っているように思います。では、すでに多くの人が「海賊版はダメなもの」という認識を持っていれば、海賊版サイトや侵害コンテンツを消費する人はいなくなり、啓発はもはや不要なのでは?というと、実はそうはいかないのですね。


 海賊版の問題は私が幼少の頃からありまして、80年代当時には日本国内でも多くの海賊版が店舗で販売されていましたが、今はデジタル化が進み、海賊版対策の主戦場はオンライン上となっています。近年はパーソナルなメディアデバイスが普及して、まさに「いつでも・どこでも」多くの情報やコンテンツに触れることができるようになりました。便利になった一方で、コンテンツの不正利用による侵害サイトが、若い世代に罪の意識もないまま蔓延することが懸念されています。


 このような背景にあって、コンテンツの正規流通促進と海賊版対策を展開しているCODAにとっても、海賊版サイトなどの侵害コンテンツ対策だけでなく、これらをカジュアルに消費する一般層、特に若年層への教育・啓発の取り組みが非常に重要性を増すようになっていきました。


問題を「自分ごと化」する!プログラム開発の命題―

 海外では”fear-based”な指導と言われていますが、つまり恐怖で縛る「~してはいけないよ」という指導は一時的な効果はあるが、持続性がない、という指摘がされています。日本でも、今は情報モラル教育の領域で「させない、触れさせない指導」ではなく「デジタル社会の負の側面を最小限にする」ために「自分たちの意思で自律的にデジタル社会と関わっていくためのデジタル・シチズンシップ教育」が必要、という指摘がされてます。

 そこでCODAの教育プログラムにおいては、「海賊版はダメなもの」という視点からさらに一歩踏み込み、「自分ごと化」して「自律的にデジタル社会と関わる」という視点でプログラムを開発することがプロジェクトの命題となりました。


 また、日本ではちょうど2022年から高校で「情報」の授業が必修になったこともあり、学校現場での活用の可能性も踏まえました。「情報」、「総合的な探求の時間」あるいは「キャリア教育」の一環で幅広く活用できるよう、PBL(Project Based Learning、日本語で「課題解決型学習」、「問題解決型学習」)の手法で、自分なりの問題や課題を見つけることのできるプログラムの開発ができないかと考え、STEAM教育(科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)。芸術・リベラルアーツ(Arts)、数学(Mathematics)の5つの領域を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念)のPBL型学習プログラムを日本国内で広く展開している一般社団法人STEAM JAPANに監修いただくことにしました。


コアとなる二つの概念。教育プログラム開発における重要な認識とは

 教育プログラムを開発するにあたって、まず一つ目のコアとなる概念として、「コンテンツについて考えることと、海賊版サイトの問題やコンテンツに関連する権利について知ることは、デジタル社会に生きる上で重要な責任である」という主軸を立てました。例えば授業内でも「どうしたら侵害コンテンツを減らせるのか」について考えたり、「海賊版サイト問題は私たちの生活や産業にどのような影響を及ぼすのか」について話し合ったりすることができるでしょう。


 二つ目のコアとなる概念として、「クリエイターの権利は他人の問題でもあり、また自分の権利の問題でもある」という観点を入れました。今では誰でもデジタル技術を用いて簡単に、気軽に一人のクリエイターとして情報を発信できるようになりました。そこでは、クリエイターの権利というテーマが気軽に発信している自分にとっても権利の及ぶ大事な問題である、という認識が重要になります。また、同じように簡単に他人の権利を侵害しかねない、日常のメディア生活に隣り合わせの身近なテーマということを伝えるため、「10代のデジタルエチケット」というキーワードを立てて開発を進めて行きました。



実証授業による学校現場での反響と新たな気付き―

 プログラムの完成後、2023年初頭からいくつかの高校で実証実験を実施し、2023年4月から日本全国の数多くの中学校、高校で本プログラムを導入して授業を実施いただきました。

 学校現場からは「私たちの直面している問題は白黒はっきりしているものではなく、もっと複雑なものだと気づいた」「これまで著作権は引用の問題だったのが、クリエイターの視点や日常で意図せず触れるコンテンツとの関わりについて学ぶ貴重な機会だった」などの反響をいただきました。ほかにも「10代のデジタルエチケット」を通じて実社会の複雑な問題や、日常におけるコンテンツとの関わり方について考えるきっかけを得ることができたという評価を多くいただきました。


 PBL型教育プログラム「10代のデジタルエチケット」は中高校生をターゲットに開発されたものではありますが、実際に授業をしていても感じましたが、実のところコンテンツや海賊版サイト問題に対する日本の中高生の理解度は非常に高いです。デジタルネイティブと呼ばれる若い世代にとっては、「デジタルエチケットを守る」というメッセージは違和感なく受け止められるものなのかもしれません。一方、権利侵害で摘発されるのは、若者というよりはもう少し上の世代が多いように思います。「10代の~」と銘打ってはいますが、次第にコンテンツやクリエイターの権利、コンテンツ産業の仕組み、またそこに関わる多くの人の存在を、学校の中だけでなく外に対しても発信していく必要を感じていきました。


次なる展開、WEBラジオ「ようこそ☆コンクリ研へ!」配信開始

 そこで、授業プログラムと同様に、知識だけでなく疑問や気づきを得られるような情報発信の企画として、「10代のデジタルエチケット」放課後編「ようこそ☆コンクリ研へ!~部活でコンテンツをクリエイト♪~」というWEBラジオ番組を2024年3月にファーストシーズン全5話で発信しました。

 音楽を題材にして、「クリエイターの世界に一緒に飛び込んでみよう!そしてコンテンツをより豊かに楽しもう!」をモットーに、10代の若者たちが放課後の部活動を通じてクリエイションへの理解を深め、安心して積極的にコンテンツを楽しめるよう働きかけていく番組です。音楽産業に関わるさまざまなクリエイターや団体を交えて、実際に楽曲やミュージックビデオ、演奏してみた動画といったコンテンツを作りながら、著作権や著作者人格権などについて楽しんで見られる内容になっています。


 コンテンツの制作過程は、一般の方にとってはなかなか日常で知る機会がありません。10代の若者たちだけでなく、コンテンツ産業で働くことに興味のある方々や、音楽やアニメに関心のある一般の方々にも、ぜひコンテンツ制作や産業構造の裏側を見てもらい、日常のメディア生活の先にいる大勢のクリエイターの存在を感じ、ひいてはコンテンツを大事にする気持ちを育んでもらえたら嬉しく思います。


「ようこそ☆コンクリ研へ!」キービジュアル


監修:井上祐巳梨氏からのコメント―

 最後に、本プログラムを監修いただいた(株)Barbara Pool代表取締役/クリエイティブプロデューサー、一般社団法人STEAM JAPAN代表理事の井上祐巳梨氏から、コメントをいただいております。


 昨今では、教育業界全体でも、「知識をただ入れるのではなく、自分自身で考え捉え、自分なりの解を見出す」重要性が叫ばれています。

 PBL型の学びでは、受動的な学びではなく、「得た知識を活かし、主体的な課題発見や解決力」を養っていきます。

 「10代のデジタルエチケット」 は、この事例をあなたならどう思うか、自身の意見を持ちながらグループでも対話し、様々な意見交換を行い、そして見えた課題に対してどのようなアウトプットを行うか、というSTEAM /PBLに重要なプロセスが詰まったプログラムとなっています。

 物事を「自分ごと化」するために、WHAT(何を)・HOW(どうやって)・WHY(なぜ)の「WHY(なぜ)」を大切にし、本質を理解していくこと。今回のプログラムを通じて、これからの社会のデジタルエチケットの「在り方」を若年層の皆さんが当事者として考え捉え、そして自らのアウトプットに繋げていってほしいと思っています。



■「10代のデジタルエチケット」コンセプト動画

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■One And Only - ようこそ☆コンクリ研へ!Official MV

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