(株)Insight science(インサイトサイエンス、以下「ISC社」)は、コピーや広告文や長文記事が書けるAI搭載のマーケティングアシスタント「UniCopi(ゆにこぴ)」を開発する企業です。
2023年4月にプロトタイプ版、2023年11月にベータ版としてリリース、その後、2024年1月にSEO記事が書ける機能をリリース致しました。
今回は、なぜ、「UniCopi(ゆにこぴ)」の開発に至ったのか、どんなことを考えているのかについて、お伝えできればと思います。
(1) クリエイティブの改善がやりきれない自分自身への"いらだち"がきっかけに。
〜事業のきっかけはクリエイティブの改善をやりきれない自分自身への"いらだち"〜
ISC社は、代表村上の過去にやり残した悔しさ、不甲斐なさという経験に基づき、「クリエイティブ×テクノロジー」のドメインにフォーカスした事業を行っています。
代表:村上の経歴紹介
その経験というのは、村上がWeb広告代理店で広告運用を任せて頂いていた時のことです。その会社には、2006年から2015年(最後の2年は子会社取締役で、自動入札ツールの仕入れ・販売の仕事)まで在籍していました。当時、リスティング広告が非常に伸びていつつ、今のように自動入札などが整備されていなかった状況もあり、大量のキーワードの管理や入札業務などで、日々の業務に追われていました。
その中で、「クリエイティブ(※)」に関しては、入札などの施策に比べて即効性がない、確実性が低い、時間がかかる、コストがかかるという状況(これは今も変わっていない)で、どうしても優先順位は3番目以降(入札、入稿などが優先される)となってしまっておりました。
※(ここでいうクリエイティブは、「広告制作物」を表しており、バナーやランディングページなどはもちろん、テキストだけの広告文も含めた概念として使っております。)
しかし、「クリエイティブ」は、本来広告主様にとって最も重要なはずです。入札や入稿は、企業に依存しません(数学的な解決が可能です)が、「クリエイティブ」は広告主の目指すもの、伝えたい想いによって変わりますし、強いクリエイティブを作ることは、事業自体を筋肉質に強化することでもあると思うのです。その意味で、広告主様にとって、非常に重要なものであると考えたのです。
それにも関わらず、そのような重要な部分に、なかなか時間がかけられないというのは、村上自身が振り返ってみて、非常に悔しく、反省すべきと感じていました。
(2) 「同じような想いを持つ同志を助けられるソリューションを創りたい」
〜苦労し、やるせなさを感じている同志を助けたい想いからクリエイティブ業務の自動化〜
このような経験から、村上は「同じように、苦労しているにも関わらず、どこかやるせなさを感じている同志がいるに違いない。自分自身の開発経験と、広告運用経験を生かすことでこのような人たちを救えるのではないか」、と考えました。
もちろん、救う対象はWeb広告代理店にいる人だけではありません。広告主サイドにいる方も同様です。上述の通り「クリエイティブ」は広告主の想いを、「如何にユーザーに伝えられるか」であり、「その伝わりやすい表現が何か」を考えつくし、ひたすらテストを繰り返すことで絞られていきます。
その作業はとても地味で、かなりの気力と根気が必要とされる、いわば長い長い暗闇を抜けるような業務になります。一部の天才たちを除き、効果の高いクリエイティブを一発で当てるということは、そうそう起きることではないのです。そのため、多くのケースで成果が上がらない難しい段階(失敗を確認していく段階)を耐え抜かなければなりません。これは、作業に関わる方、意思決定に関わる方すべてにとって大変でストレスフルな業務となります。
今後、Web広告はますます競争が熾烈になります。1つの理由は、多くの企業がマス広告から予算をシフトしてくるからです。他にも、3rdPartyCookieが使えなくなることにより、ターゲティングの精度を落とさざるを得ないという点や、ユーザーがネット閲覧する可処分時間が増加するコンテンツ量により相対的に減っていっているという理由もあるでしょう。
そのような時、「差」をつけるのはクリエイティブだと、村上は考えました。そのような競争が激しい時代では、このような業務の一部または全部を自動化することで、ナレッジを(半)自動的に蓄積してクリエイティブ改善・制作業務の難しさやハードさを軽減することができ、多くの潜在的に困っている人を救えるのではないか、と考えたのです。
また、良いクリエイティブには、良いアイデアが必要です。良いアイデアには大量の思考実験が必要です。1本の短いコピーを依頼するのに、数百万円という費用がコピーライターに支払われることがある点を不思議に思う方がいるかもしれませんが、背景に見えない無数の努力があるのです。
この点は、訓練していない方にはかなりのハードワークとなります。この点で、生成AIは大きな役割を果たしてくれるでしょう。
また、ここでいう、クリエイティブのナレッジとは、「いつ」「誰に」「なぜ」「何を」「どのように」伝えるべきかという再現性を持った知見になるのです。この情報が手元に残ることが、企業のWeb戦略の方向性や成功確率を大きく左右するようになるでしょう。事業の生死を分けることにすらなりかねないと思います。
(3) Web広告の世界から感じた、強烈な危機感
〜Web広告の世界から感じた、双方向の伝達が活かせていない日本マーケティングへの危機感〜
しかし、Web広告に造詣が深い皆様は疑問に思われた方もいるのではないでしょうか?「それって、放っておけば広告プラットフォーマー(GoogleやMetaなど)が作ってくれるんじゃないの?」と。
実際、村上も今の事業を始めてから、このような質問を幾度となく受けました。その都度、村上はその質問に回答しつつ、同時に「日本のマーケティングにおける、危機が始まっている」とも感じていました。
もちろん、GoogleやMetaはそのようなツールを提供してきます。実際に既に提供され始めており、非常に簡単にクリエイティブができる世界は目の前に見えています。その何に、村上は危機感を抱いたのでしょうか。
それは、村上が目指す世界観を表す次の言葉をみていただければ、伝わりやすいかもしれません。
現在、多くのコピーを含めたクリエイティブ制作ツールが世の中に登場してきましたが、村上は「良いコピーを書くことではなく、書いたコピーが反応されたかされていないかというナレッジを残すことに価値がある」と自社の進むべき方向性を考えています。
つまり、「広告を出せたらいい」「成果が出たらいい」ではなく、「なぜその成果が出たのか?」「それは再現可能なのか?」というナレッジデータにこそ価値があると考えたのです。なぜなら、それこそが、商品やサービスの"ベネフィット"を表すものでもあり、ユーザーの声を知ることだからです。広告プラットフォームは、成果が上がれば目的を達成するため、わざわざこのような困難な領域にサービスを提供してくることは考えづらいと思われます。
マス広告が、一方通行の情報の伝達ツールだったことと比較すると、Web広告は、反応が得られる、つまり、双方向の伝達が可能です。そこからユーザーを知り、新たな提案をする、を繰り返していくことが可能です。しかし、この特性をうまく扱えているとは現状言えません。
ただ、それを「媒体に任せればいいのでは?」という意見がでることに対して、強い危機感を感じたのです。つまり、この意見の背景には、「広告主は商品を提供する役割」であり、「売るのは媒体プラットフォームの役割」である、という表現とも捉えられます。
しかし、村上は現代においては、製品を市場の反応に合わせてチューニングをするプロセスも含めてマーケティングであると考えているのです。
一部のプラットフォーマーの昨今のサービスでは、結果データをブラックボックス化して、広告主に返さないという機能が出てきています。これは本当に懸念です。
その背景から、このままでは日本の広告主が、最悪ただの工場のようになってしまう(「これが売れるから作ってください。理由は聞かないでね」という状態になる)ように感じ、「なんとかしなければ」という想いが村上を突き動かす1つの理由でもあります。
(4) 「生成」に苦しんだ起業初期
〜「生成」をどのように行うか。試行錯誤で苦しむ起業初期〜
村上は、いざ自動化に取り組もうとし、分析やデータ取得などの自動化を進めつつも、広告文の生成をどのように行うかでかなり苦しんできました。結局ここに時間がかかってしまうので、施策数が一向に伸び悩んでしまうのです。
それを解決すべく、最初に取り組んだのは「人工無能」と呼ばれる技術でした。小さな企業でデータを大量に抱えたり学習したりすることが難しいため、少ないインプットから次の単語をランダムに割り当てるというマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC法)と呼ばれる手法で文章を作らせてみたのです。
しかし、当然、インプットが少ないのもあり、出来上がる文章はそのまま使える状態では到底ありませんでした。その後も、データは少ないもののLSTMと言われる手法などを活用して「人工知能」も試してみましたが、やはり実用化には程遠い状況が続きました。
当時の村上には、大企業が出すAIツールが疎ましくも、羨ましくも見えていました。やはり資本力を持たないと解決ができないのか、と無力感に駆られる日々でした。
(5) 2023年に衝撃が走った!「ChatGPT」の登場とその精度の高さ
〜「ChatGPT」の登場と精度の高さに衝撃を受け、ナレッジを残せるAI開発へ〜
上記のような苦労をしてきた村上にとって、衝撃的であり、運命的に感じたのが2022年末に登場した「ChatGPT」でした。
村上が、どんな苦労しても、書けなかったような自然な日本語言語がすらすら書けるだけではなく、知性ともいうべき賢さを備えたChatGPTを目の前にして、今まで成し得なかったあらゆることを実現できる時代の始まりではないかと感じたのです。
これまで大企業にしかできなかったことが、零細企業でもできるようになったのです。
一方で、世の中には生成AIを活用した「作るだけのツール」が乱立していくのも目にしました。村上はその都度、「そうじゃない。成果を上げ続けるためにナレッジが必要であり、ナレッジを残すために作るのであって、作れば良いというものではない」、と感じました。そこで「自分がやらなければ」という使命感のようなものが、日に日に強くなっていき、UniCopiのプロトタイプ版の開発に取り組み、2023年4月のリリースに至りました。
おかげさまで、実際のご利用者からは以下のような反応を頂けております。
・「自分からは絶対出てこないコピーだったので、新鮮。生成されたコピーが似通ったものではなく、多様です。」(広告代理店 ネット広告運用者様)
・「工数削減になり、業務効率化に繋がりました。広告文の作成に時間がかかっていたので、複数案くれるだけでも大変助かりました。」(広告代理店 ネット広告運用者様)
・「いつもコピー考案に時間がかかり、苦手意識がありましたがたくさんアイデアをくれるので時短になり、楽に。分析・アイデア・提案まで一貫していて、すごく心強いツールです。」(Webデザイナー)
・「訴求軸が分かれているので、広告文作成が苦手な人はアウトプットを元にブラッシュアップができる印象。」(広告代理店 営業担当者様)
(6) AIを「最高の外注先」ではなく、「最高のアシスタント」に!
〜AIを「最高の外注先」ではなく、「最高のアシスタント」に。テクニックを共有していく「UniCopi」〜
繰り返しにもなりますが、言い方を変えると「AIを丸投げ先にするのではなく、AIを最高のアシスタントにする」というのがISC社が目指す目標です。
UniCopiには、「Co-pilot (that) unites Insights」(インサイトを統合する副操縦士(=アシスタント))という意味が込められています。この意味について説明します。
Insight(インサイト)とは、「顧客自身が気づいていない商品サービスの購入などの行動の背景にある意識」です。様々なクリエイティブ(広告や記事など)への反応データをまとめる(統合する=Unites)ことでインサイトをより高確率で推定できるようにするためのアシスタント(Co-pilot)であるという意味です。そのフィードバックループを繰り返し回すことで、その組織にナレッジが蓄積されます。このナレッジは、例え担当者が休んでも、変わっても、変わらずに誰もが使える知識になります。
また、これまでのAIの使われ方は、「1つの大きい人工知能」があらゆる企業のコピーを考える、という使い方が多かったと思います。
おそらく、現在世の中にある多くのAIライティングツールもそのようになっていると思います。でも、村上は「クリエイティブは顧客の商品の代弁者であり、共通して、ただきれいな言葉が言えればいい脳みそではいけない」と考えています。本来、共有できるものはテクニックであり、「なぜ」「何を」「どういうのか」がとても重要だと思うのです。
例えば、吉野家が「ハイクラスの牛丼」というと少しおかしいと感じませんか?確かに「ハイクラス」という高級感と商品の組み合わせは有効な場面もあるかもしれません。でも、それを吉野家の売りを理解していれば、そう表現はしないと思うのです。
このようなことが、単純にAIを使うだけでは、ここまでわかりやすくなくてもたくさん起きてしまうのです。
村上の理想では、商品とターゲットごとに、少しずつ言葉を使い分けられる必要があります。例えば、コカコーラ社とペプシコーラ社が、同じコーラであっても、広告を出し分けられる世界。マクドナルド社とバーガーキング社の記事の書き方がそれぞれの趣向を理解して書き分けている世界。そのような世界を創ることで、企業のアイデンティティを残しつつ、時代と共に反応が変わる市場に合わせて、より適切な表現を見つけていくことが可能になると考えています。いずれ、広告が何十年の歴史を持っていても、それすらも把握し、効果が高く顧客に寄り添った表現を提案できるようになるのです。
図:UniCopiは、マーケターが使いやすい補足付きでコピー提案をしてくれる!
(7) これから生成AI活用で、マーケティング界は激変する!
〜理論上、1人のマーケターで1000人の施策が可能に。生成AI活用の本格スタート〜
2024年に入り、Geminiがいよいよ100万トークンに対応すると発表しました。これを皮切りにおそらくOpenAI社やAnthropic社でも100万トークンへ対応してくるでしょう。
我々はデータを蓄積し、反応データを獲得し、ナレッジに変換し、それらを適切にプロンプトに反映していく仕組みを構築することにより、ブランドごとの脳みそを確実に作れると言う確信を得ています。PDCAというナレッジを産み続けるフィードバックループを従来の10倍から100倍以上回せる仕組みが構築できるのです。
さらにこの脳みそは低コストで並列実行が可能です。しかも、デュアルとかトリプルといったレベルではなく、数千と言う単位で並列実行すら理論的には可能になるのです。
つまり、1人のマーケターが、一瞬だけ1000人のアシスタントを雇うことができるということなのです。
1人のマーケターが1つの施策しかできないと、メインの施策しか実行されません。これが1000の施策ができるようになるとロングテールまでカバーされるようになるのです。
我々の焦点は、その先にあります。究極的にはクリエイティブのパーソナライゼーションを実現できる世界を構築していきたいと考えていますし、広告文と記事、PR文章、SNS投稿、メールマガジンなどを別々の部署で考えられてしまっていますが、どこかで得られたナレッジは、他にも転用が可能だと思います。これらを自然に実現するツールに進化させていくことを考えております。
なお、たまに「ChatGPTでできそう(できますよね?)」と言われる方もいらっしゃいます。確かにできるかできないかで言えば、できます。ただ、多くの方が精度上げるためにインプットを精緻に準備したり、どのようにプロンプトを書くと良い結果が得られるかの実験の繰り返しにかかっている人件費は全く考えられていません。そして、これから100万トークンの時代が来ます。例えば、「昨日と今日に発生した口コミを全て読み込んで学習し、広告文を書く、これもChatGPTでできますか?」と聞くとあなたならどう答えられるでしょうか。もちろん、OpenAI社がそれをやらないとも限りません。それを待ち続けるのも1つの選択肢でしょう。
でも、我々と一緒にそれを創るというのも1つの選択肢ではないでしょうか。それを選ぶのは、読み手のみなさま次第です。
最後に。
多くのスタートアップ企業がそうであると思いますが、「当社のプロダクトの半分は、"想い入れ"と"夢"でできています。」と声を大にして言いたいです。
だから、我こそはイノベーターであるという方に、ぜひ使って頂きたいと考えています。想い入れと夢を共鳴させられるからです。我々はそのような方々のフィードバックに一つ一つ向き合い、良いツールを作り、皆様に貢献するとともに世界に出していけるツールを創っていきたいと考えています。
その両者の共鳴が、我々自身の住む世界を変える力になると信じております。
一人でも多くの皆様が、我々と共鳴をしてくれることを願っております。
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