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STORY リスクマネジメントの観点から宇宙ビジネスを支援!宇宙マーケットの成長を支える損保ジャパンの挑戦

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リスクマネジメントの観点から宇宙ビジネスを支援!宇宙マーケットの成長を支える損保ジャパンの挑戦

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「宇宙産業(宇宙ビジネス)」と聞くと、大型ロケットや衛星の製造・開発などを連想するかもしれませんが、宇宙産業のすそ野は広く、参入する企業も年々増えています。


宇宙産業マーケットの拡大に伴い必要となるのが、新たなリスクに対応した保険サービスです。従来から宇宙事業者に対してロケットや衛星の輸送、打上げ時のリスクをカバーする「宇宙保険」を提供してきた損保ジャパン。2023年4月から「宇宙産業開発課」を新設しました。宇宙という未開のフロンティアに挑むメンバーたちの活動を、インタビューとともにご紹介します。


INDEX

  • 2030年までに2.4兆円を目指す成長マーケット
  • 宇宙産業の専門部署「航空宇宙保険部 宇宙産業開発課」
  • 宇宙空間における「まだ起こっていないリスク」を洗い出す
  • 「衛星開発のプロ」だからできる、精度の高いリスク評価
  • ていねいに信頼を築きながら宇宙保険の必要性を伝える
  • 「宇宙保険といえば損保ジャパン」と信頼される未来を目指して


2030年までに2.4兆円を目指す成長マーケット


2024年2月17日。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の開発した新型主力ロケット「H3」2号機が鹿児島県の種子島宇宙センターから無事に打上げられました。失敗を乗り越え、宇宙空間へと飛び立っていったその姿に感動した方も多かったことでしょう。


宇宙という未知の世界への挑戦は、いつの時代もロマンをかき立てられるビッグ・プロジェクト。一方で、宇宙産業はビジネスの観点からも注目を集めています。

かつて、ロケットや人工衛星の製造・開発の担い手は、JAXAや重工業メーカーなど「エスタブリッシュドスペース」と呼ばれる一部の事業者に限られていました。それが2000年代に入ると、小型ロケットや小型衛星の開発に取り組むベンチャー企業や大学などの「ニュースペース」が続々とマーケットに参入するようになります。



特にここ数年では、世界中で打上げられるロケットや衛星の数は飛躍的に増えており、2021年に世界で打上げられた衛星の数は1,809機。10年前(2011年:129機)と比べると実に14倍に上ります(UNITED NATIONS Office for Outer Space Affairs 公表資料による)。



政府の「宇宙基本計画」では、国内の宇宙産業(宇宙機器産業・宇宙利用産業)の市場規模を2030年代の早期に1.2兆円(2020年)から2.4兆円に倍増することを目指しています。宇宙産業は、日本経済の新たな成長のドライバーとしても大きな期待を集めているのです。


宇宙産業の専門部署「航空宇宙保険部 宇宙産業開発課」


このように宇宙産業への期待と関心が高まる一方で、損保ジャパン 航空宇宙保険部 部長の山中聡子は、新たな「課題」について次のように語ります。

「損保ジャパンでは、1970年代からエスタブリッシュドスペースの事業者向けに、ロケットや衛星の製造から打上げ、運用にいたるリスクを補償する『宇宙保険』を提供してきました。それが、近年ではエスタブリッシュドスペース以外の異業種の企業からの相談や問い合わせが増えており、そういった声に対応する体制強化の必要性を感じていました」


同時に、新たな課題として浮上しているのが、宇宙でのビジネスに付随する新たなリスクへの備えです。宇宙産業のマーケットは未知の領域。どこに、どんなリスクが潜んでいるのか多くのことが解明できておらず、従来の宇宙保険だけではリスクへの対応が不十分なのが実情です。



「当社も140年近くにわたり損害保険事業を行ってきましたが、その商品のほとんどは地球上で発生するリスクに備えるもの。企業の方々に安心して宇宙でのビジネスに取り組んでいただくためにも、宇宙空間で発生しうる新たなリスクに対応した保険の開発が急がれています」


こういった課題に対応するため、2023年4月、損保ジャパンに新たな部署が生まれました。宇宙産業の専門部署「宇宙産業開発課」です。宇宙ビジネスにまつわるさまざまなリスクを想定した、新たな保険商品を開発・提供することで、宇宙産業の成長に貢献することをミッションに掲げ、誕生しました。


この宇宙産業開発課がワンストップの相談窓口となり、損保ジャパンの全国にある営業店ネットワークと連携しながら、さまざまな企業の宇宙ビジネスにまつわる課題を解決するソリューションを提供しています。


宇宙空間における「まだ起こっていないリスク」を洗い出す


「もし100回に1回墜落する飛行機があったら、誰も乗りたいとは思わないですよね?でも、ロケットの打上げは平均すると5回に1回は失敗するもの。常にリスクと隣り合わせの世界なんです」

宇宙産業開発課 課長代理の川田烈はそう語ります。ロケットや衛星の打上げはそれだけ失敗の確率が高く、しかも失敗したときの損害額は最低でも数億円規模に上ります。そのリスクを補償するために提供しているのが、損保ジャパンの宇宙保険です。


ロケット・衛星を打上げるフェーズごとに、想定されるリスクは異なります。その各フェーズに応じて、①打上げ前保険、②打上げ保険、③軌道上(寿命)保険、の大きく3種類の保険商品でリスクをカバーしています。



こういった従来型の宇宙保険に加えて、「これまでの打上げ・分離・運用に関する保険ではカバーできない、多様化・複雑化するリスクに対応した補償を検討しなければなりません」と川田は言います。


宇宙空間における「まだ起こっていないリスク」には何があるのか? さまざまなシチュエーションを想定しながら、新たな保険商品として形にすることで、企業が安心して宇宙産業に挑戦できる環境づくりをお手伝いするのが、宇宙産業開発課のメンバーに与えられたミッション。宇宙産業で世界をリードしている欧米を中心とする海外の事例をリサーチしたり、宇宙産業のさまざまなプレーヤーとディスカッションしながら「まだ起こっていないリスク」を手探りで洗い出しています。


「宇宙空間におけるリスクに対する法整備もまだ進んでいないので、当社を含む民間のプレーヤーがまずはリードする形で、宇宙空間におけるリスクを検討し、知見やノウハウを蓄積しています」


「衛星開発のプロ」だからできる、精度の高いリスク評価


宇宙産業開発課のメンバーは5名。損保ジャパンで保険の営業や商品開発を経験してきたメンバーもいれば、宇宙産業の中でキャリアを築いてきたメンバーもいます。


宇宙産業開発課 チーフの河村知浩は、大手電機メーカーや宇宙ベンチャーで20年弱にわたり衛星開発に携わってきた「衛星のプロ」。「事業者の側から、宇宙産業に挑戦する事業者をサポートする側に回ってみたい」と、損保ジャパンの宇宙産業開発課に加わりました。河村が担っているのが、宇宙産業への参入を検討する企業に対するコンサルティング業務です。


「物を動かす原理原則は、実は地上でも宇宙空間でも変わりません。それぞれの企業が持つ既存の技術をどうすれば宇宙空間に応用できるか、衛星の仕事をしてきた過去の経験をふまえながら、事業化に向けたアドバイスを行っています」


一例として、超小型衛星の設計・製作・運用を手がけるアークエッジ・スペース社に対し、小型人工衛星開発のプロジェクトに伴うリスク分析・課題抽出とソリューション提案を、河村が中心となって行いました。




※衛星事業者の方々が直面するリスクの例(特定の企業に関するものではありません)


「アークエッジ・スペース社も衛星開発の専門家なので、想定されるリスクはかなりの精度で把握していました。これに対して私たちが第三者的な視点から補完することで、より精度の高いアセスメントができたと評価をいただきました」



川田も話したように、さまざまな事業者とディスカッションを重ねながら未知のリスクを洗い出し、リスクマネジメントの知見を蓄積していくことが、現在の宇宙産業開発課が担っているフェーズ。その積み重ねが、将来的な宇宙産業の発展につながるとの思いで取り組んでいます。


「私自身、衛星の開発に携わりながら多くの苦労や悩みを経験したからこそ、宇宙ビジネスに挑戦する企業の皆さまの力になりたい、との思いでご相談に耳を傾けています。『リスク』という言葉には後ろ向きなイメージがありますが、逆にリスクが見えることで『ここに気をつければいいんだ』ということが分かれば、宇宙にチャレンジする意欲も高まります。そのようにリスクに対してポジティブに向き合えるよう、お客さまをサポートしていきたいです」


ていねいに信頼を築きながら宇宙保険の必要性を伝える


宇宙産業における技術開発やビジネスモデルは、実は一社のみで完結するものはほとんどありません。国やJAXAなど公共セクター、実績と経験のあるエスタブリッシュドスペース各社、新しい技術とアイデアを持ったスタートアップや研究機関など、業種や規模の違いを超えたプレーヤー同士のコラボレーションによって、最先端の技術や画期的なビジネスモデルが生まれ、発展していきます。


そこで重要になるのが、異業種の企業や団体が集い、交流するプラットフォーム。

「宇宙産業はまだ特殊性の高いマーケットで、参入に抵抗を感じている企業も少なくありません。だからこそ、宇宙産業に携わってきたプレーヤーと、これから参入を検討するプレーヤーとが気軽に交流できる環境が大切なのです」

宇宙産業開発課で営業を担当する伊藤穂乃香は、宇宙産業におけるプラットフォームの意義をこのように語ります。


たとえば、「宇宙のまち・日本橋」を掲げる東京・日本橋のシェアオフィス「X-NIHONBASHI」では、さまざまな宇宙ベンチャー企業が入居するほか、宇宙関連のイベントや交流会が常に行われています。こうした場をはじめとして、各種イベントに出展・登壇するなど、積極的に機会を作り多様な企業と交流を重ねています。



伊藤の役割は、そういった異業種間の交流を通じて、宇宙保険の認知を高めること。「宇宙に保険って必要なの?」と驚く人も少なくない中で、「保険の必要性を伝えるコミュニケーションを大切にしています」と語ります。



「宇宙産業には最先端の技術が集まるだけに、秘匿性の高い情報も多くあります。一方で、新たなリスクに対応するための保険はオーダーメイドで設計するので、そういった技術的な情報も開示していただく必要があります。センシティブな問題だけに、企業の方々とは保険の必要性をていねいに説明しながら、関係性を構築するように心がけています」


幅広いネットワークを築きながらも、一社一社の企業とは対話を重ねながら少しずつ信頼を構築する。その両軸のコミュニケーションを通じて、損保ジャパンでは宇宙産業という特殊なマーケットにおける保険の存在と、その必要性を知ってもらうための努力をしています。


「宇宙保険といえば損保ジャパン」と信頼される未来を目指して


自動車保険や火災保険などと異なり、マーケットそのものが発展途上の宇宙産業には、保険のマニュアルは存在しません。宇宙産業開発課のメンバーも、さながら未開の荒れ地に鍬を入れ、一から耕すかのように、手探りで業務を行っています。

山中は、そんなメンバーの苦労を代弁するように語ります。


「宇宙産業は、まだまだこれからマーケットが成長していくフェーズにあります。従来の自動車保険や火災保険などまったく異なるアプローチが求められ、宇宙産業開発課のメンバーも日々走りながら考えています。その彼らが走りやすい環境を用意することが、部長である私の役割だと思っています」


宇宙産業のマーケットが成長し、多くの衛星からさまざまなデータが得られるようになると、実は損保ジャパン自身にも大きな価値がもたらされます。



例えば、小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・運用を手がけるSynspective社とは、SAR衛星のデータ解析技術を用いたPoC(概念実証)を進めています。この衛星データから、広域水災時の被害想定区域を高精度で把握することができ、災害発生時の保険金のお支払いをより迅速に行えるようになることが期待されています。


さらには、自動運転などのモビリティ技術や、農業など一次産業の発展にも、衛星データが大きな役割を果たします。それは同時に、損保ジャパンが提供する保険サービスのさらなる品質向上や、技術革新に伴うニューリスクへの迅速な対応にもつながります。その意味で、宇宙産業の成長・発展に貢献することは、私たちSOMPOグループが掲げるスローガン「“安心・安全・健康のテーマパーク”により、あらゆる人が自分らしい人生を豊かに楽しむことのできる社会の実現」そのものなのです。



1888年、損保ジャパンの前身である「東京火災」が日本初の民営火災保険会社として誕生。日本初の火災保険を生み出し、今日の保険マーケットの礎を築きました。

当時の先人たちは「保険って何?」という状態から、万が一のリスクに備える保険の必要性を人々に訴え、情熱と使命感をもって普及に取り組んできたことでしょう。


約140年後の今日、宇宙という未開のフロンティアに立ち、保険の必要性を説いて回る宇宙産業開発課のメンバー。彼らの姿は、火災保険をいち早く確立した当時の先人たちと重なるように見えます。


「芽が出て、花が咲くには時間がかかるでしょう。それでも10年後、20年後に宇宙のマーケットが拡大し、宇宙保険が多くの企業に必要とされる、その未来は必ずやってきます。そのときに『宇宙保険といえば損保ジャパンだね』とお客さまに信頼され、宇宙保険に携わる未来の後輩たちが誇りに思えるように、その礎づくりに地道に取り組んでいきます」と山中は締めくくりました。


※社員の所属およびインタビュー内容は、取材当時のものになります。





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