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STORY 生成AIの積極的な利活用を促進するパーソルの2つのガイドライン

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生成AIの積極的な利活用を促進するパーソルの2つのガイドライン

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パーソルグループは中期経営計画2026において、「テクノロジードリブンの人材サービス企業」という経営の方向性を掲げ、顧客体験のみならず、従業員体験におけるテクノロジー活用を推進しています。中でも生成AIは、グループの成長の柱として、積極的な利用を行っています。

一方で、さまざまな事業を展開する中で、お客さまおよび自らの情報資産を保護し、適切に取り扱うためにも、生成AIを利用する前に、セキュリティやガバナンスをしっかり整備することが必要でした。


今回はパーソルグループの生成AIにおけるガイドライン策定に携わった法務の安原と情報セキュリティガバナンスを担う武山にインタビュー。生成AIの利用推進に向け、スピード感をもってガイドラインやガバナンスの整備ができた裏側、ポイントとなった点を詳しく聞きました。


パーソルホールディングスが運営するWebメディア「TECH DOOR」では、パーソルグループ内で取り組んでいるITプロジェクトを紹介しています。本記事と併せてぜひご覧ください。

ガイドライン策定に向けて実施した、協力体制の構築

 ―パーソルグループでは積極的に生成AIを利用しているそうですね。おふたりはどのような立場で生成AI利用の取り組みに関わっているのでしょうか?

武山:私は情報セキュリティ部に所属し、パーソルグループ全体の情報セキュリティガバナンスを担当しています。生成AIのガバナンスを整備する上では、テクノロジー部門と情報セキュリティ・法務部門の知識を組み合わせることが不可欠です。その橋渡しができることを期待され、生成AI利用推進のプロジェクトに参画することになりました。

安原:私は普段、法務部でプライバシー保護や人権にかかわるプロジェクトを担当しています。インターネットサービス・SaaSサービスなどのIT領域での経験が多く、その当時すでに生成AIも適度に利用していたため、最善のアウトプットを期待され、法務として生成AIの利用ガイドライン策定に関わることになりました。

 ―生成AI利用におけるガバナンス整備は、いつごろから取り組まれてきたのでしょうか。

武山:セキュリティの立場では、2023年に入って間もない段階から生成AI利用に関する議論を開始していました。生成AIで取り扱う情報の保護を大前提としつつ、スピード感をもって生成AIの利用が開始できるよう環境を整備する必要があると考えていたためです。2023年4月の段階で、生成AIサービスをユーザーとして利用するにあたっての「生成AIサービス利用に関するガイドライン」を定めて、グループに展開しました。その後、事業上の活用に向けたガイドに拡張するうえで、法務との連携を開始し、それが2023年の5月頃だったと記憶しています。

安原:私が関わり始めたのは2023年5月の半ばくらいです。当時、パーソルグループでは生成AI利用推進を重要事項として捉えており、経営でも議論が進められていました。それと同時に具体的な企画や施策を検討する上でのガイドラインがあれば嬉しいという声が多く挙がりはじめていました。

生成AIに関する法的なリスク、情報セキュリティ上のリスク、利用上のリスクなどは各方面で整理が進み、セキュリティ企業や弁護士によるセミナーが開催されていました。しかし、それらを総合的に判断しパーソルグループ内のサービスや企画において、検討すべきリスクが網羅的に整理されている状況ではありませんでした。これらを整理したうえで、サービスや企画の検討に使えるガイドラインを策定することで、生成AI活用を加速できるよう、検討を開始しました。

情報セキュリティガバナンスや外部の専門家との連携をしつつ、生成AIを事業やサービス、ツールや業務システムに組み込んで利用しようとする場合に備え、新たに企画者と審査者向けに「生成AIを活用した企画に関するグループ共通ガイドライン」を整備し、2023年10月にリリースを行いました。

スピーディに、ガイドラインの策定から展開を実現

 ―ガイドラインの策定から展開まで、スピード感をもって実現したんですね。なぜ2つのガイドラインが必要だったのでしょうか?

武山:生成AIを業務に活かす形を考えていくと、2つのガイドラインが必要という結論に至りました。ひとつは業務を効率化するためにグループではたらく社員の皆さんが生成AIを利用する際、社員が参照すべきガイドラインです。もうひとつは、生成AIを事業や業務システムに組み込んで利用しようとするときに参照するガイドラインです。


業務効率化のために生成AIサービスを利用する場合には、注意すべきことを明確にし、安全に利用できるようにすることが重要です。一方、生成AIを事業や業務システムで活用する場合は、生成AI固有の観点でリスクの洗い出しと検討ができるようにし、円滑なリスク対応を促進することが重要です。重要視するポイントが違うため、それぞれが参照するべきガイドラインを作成する必要がありました。

 ―利用に関するガイドラインでは、どのような点を重視しているのですか?

武山:パーソルグループではたらくすべての社員に向けたガイドラインですので、非常に多くの対象者がいます。誰が見ても内容を正しく理解できるよう、生成AIを利用する際に守るべきルールをわかりやすくシンプルに表現することで、生成AI利用がスムーズに開始できるように意識しました。

 ―企画に関するグループ共通ガイドラインでは、どのような点を重視しているのですか?

安原:企画に関するグループ共通ガイドラインでは、企画者・審査者の立場から利用しやすい手順にまとめることを重視しました。実際の事業の企画の検討は、コンセプト、スキーム、生成AIモデルの選定といった仕様、利用シーンといった流れで深められていきますので、この流れで検討ができるようにすることで、影響の大きなリスクから対処ができ、企画が最終段階に進んでからの不承認が発生しないようにしたかったのです。そこでガイドラインはこの流れで整理し、チェックリストを用意して展開しました。

 ―ガイドラインを2つ展開するにあたり、苦労したポイントがあれば教えてください。

安原:生成AIは利用者や利用シーンが広く、テキスト・画像・コードといった機能のバリエーションも多いため、検討するべきセキュリティ上のリスク・法的リスクは多岐に渡ります。それらのリスクを適切に、かつスピーディに検討できるようなバランスが難しいところだと思います。


今回は、生成AIをめぐる環境が目まぐるしくアップデートされていく状況下で、ガイドライン策定にもスピード感が求められていました。生成AIという先進的なテクノロジーに対し、鮮度の高いうちに利用環境を整え、パーソルグループが世の中の生成AI活用をリードする立場となるためです。そして、各SBU*からあがる「生成AIを利用したい」という声も、早急なガバナンス整備が求められる要因でした。

 *SBU(Strategic Business Unit):意思決定の権限を委譲し、経営判断のスピードを高めて事業価値を最大化するべく組織されたビジネスユニットを指す。


武山:パーソルグループが生成AI利用をリードする立場を目指すということで、生みの苦しみともいうべき悩みはありましたね。生成AIの利用に関しては、参考となる事例がまだ少なく、参照する規範がない中で検討を行いました。


『このガイドライン・チェックリストに沿っていればOKです』と言い切るためには、考え得るすべてのセキュリティ上のポイントや法律上のポイントを考慮する必要があり、遺漏のないよう、くまなく調べましたね。テクノロジーを活かすために安全性が足かせとならないように特に留意しました。

今後のパーソルグループの生成AI利用の姿

 ―ガバナンス整備後、社内への浸透状況はいかがでしょうか?

武山:社内における業務効率化のための生成AI利用については、PERSOL Chat Assistantの導入もあり多くの社員が利用し、フィードバックも返ってきています。

安原:事業や業務システムに組み込んだ生成AIの利用については、企画者・審査者向けにガイドラインの説明会を実施しました。実際に企画・審査を担当する社員を中心に約100名の参加があり、ガイドラインによって検討観点が整理されたことによって踏み込んだ確認も増えており、事業活用に向けた手ごたえを感じます。

 ―今後も生成AIに関わる状況は変化していくと思われますが、どうやって安全性を確保していく想定でしょうか?

安原:自分のアンテナを張っておくことも一つですが、注目度の高い領域で、パーソルグループ内にもアンテナが高い社員がいますので、法的な変化の情報は自然と集まってきています。「政府がAI原則のアップデートを図っている」といった情報や「著作権についての議論が進展している」といった情報は適宜キャッチアップできていると思います。これを適宜反映・展開していきたいと考えています。


武山:グループにおける生成AI活用も進んでおり、事例やノウハウが集まってきていると感じます。今後はこれらの情報を踏まえながら、ガイドラインのアップデートを行い、継続的な安全性確保に取り組んでいきます。

 ―パーソルグループの生成AI活用における、今後の期待を教えてください。

武山:生成AIもある種のツールなので、「まずは使ってみて、試行錯誤して、それから課題が出る、ノウハウが溜まっていく」ものだと感じています。安全性のために最低限守らなければならないところをガイドラインでは定めました。これからは積極的に利用して課題やノウハウが出てくる段階になってくると考えています。

また、生成AIの利用はパーソルグループだけでなく社会全体で広がる動きです。その中で、生成AIをうまく使いこなし、リードしていくグループでありたいですよね。テクノロジーに対する親和性、ガイドラインをもとに安全に利用できるリテラシーをパーソルグループは持っているので、生成AIとの相性は良いと考えています。スピード感としても、出遅れずにリードできる位置につけられたのではないでしょうか。


安原:生成AIに慣れ親しんで、たくさん使う状況になってほしいと考えています。法務部では実際にPERSOL Chat Assistantと音楽ソフトを使って簡単なBGMを作ってみるなど、「まずは自分たちが触ってみる」ことを意識しています。実際に触れると、イメージだけだったところに手触り感が出て、安全性やリスクに関する感度もちょうど良い水準に近づいていくと感じています。


他の部署やグループ会社でも最低限検討すべきポイントはガイドラインで定めたので、実際に活用シーンを広げていくフェーズに入ったと考えています。さまざまな活用シーンから得られた知見のフィードバックを取り込むことでより良いガイドラインに更新していくサイクルを回していきたいです。

※2024年2月時点の情報です。


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