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STORY 国内グループ会社38社が使用する社内GPT「PERSOL Chat Assistant」―約3カ月で導入を実現した内製開発の裏側

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国内グループ会社38社が使用する社内GPT「PERSOL Chat Assistant」―約3カ月で導入を実現した内製開発の裏側

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パーソルグループは中期経営計画2026において、事業成長のエンジンとしてテクノロジーを掲げています。テクノロジーによる従業員のはたらく環境のさらなる改善をはじめ、コア事業のサービス価値の向上や新たな価値創造に積極的に取り組むなか、生成AIの事業・業務への適用拡大を目指し、取り組みを加速。入力したプロンプトが生成AIの学習に利用されないシステム環境、ガバナンス/ルールの両面から安心して業務に活用できる、パーソル版社内GPT「PERSOL Chat Assistant」のグループ展開が行われました。


今回はこの取り組みを主導した上田と岩田にインタビュー。パーソルグループにおける「ChatGPT」活用の現在地や取り組みの裏側、今後の展望まで、詳しく話を聞きました。


パーソルグループにおける生成AI活用の戦略についてはこちらをご覧ください。


PERSOL Chat Assistant(愛称:CHASSU)概要

“ChatGPTを安心して活用できる環境”として展開された、パーソル版社内GPT「PERSOL Chat Assistant」。2023年5月にプロジェクトを立ち上げ、約2週間でプロトタイプを開発。2023年8月に、入力したプロンプトが生成AIの学習に利用されないシステム環境を内製で構築し、2023年10月に国内グループ38社、利用対象約20,000人への展開が完了した。対象人数のうち約25%が利用するなど、パーソルグループの日常業務の中で利活用が進んでいる。


なお、2023年12月に「”ちゃっす!”という略式挨拶のように、軽快にAIとチャットする」という意味を込め、CHASSU(ちゃっす)という愛称が付けられた。


約2週間でプロトタイプを開発、約3カ月後には社内GPTを導入開始するスピード感

―まずは今回パーソルグループにおいて展開された「PERSOL Chat Assistant」について、概要からお聞かせいただけますか。


上田: シンプルにお伝えすると、「PERSOL Chat Assistant」は“パーソルグループの社員の皆さんが入力したプロンプトが生成AIの学習に利用されないシステム環境、ガバナンス/ルールの両面で安心して使える環境のChatGPT”です。

生成AIはまさに今後インフラになる、しっかりと活用していくべき重要なテクノロジーだと捉えており、このテクノロジーを活用することで人が世の中にすばらしい事業やプロダクトをこれまで以上に生み出せるようになるのではないか、そんな期待を持っています。

―このプロジェクトはどのようなきっかけから始動したのでしょうか。

上田: ChatGPTの活用とガバナンス観点での対策の必要性を強く感じたことをきっかけに、個人的な活動として社内版ChatGPTを作っていました。

これをさらにブラッシュアップし、取り組みをスピードアップさせるためにも、確固たる地盤になるエンジニアリングを欲していたのです。そんな折、隣の本部で岩田さんがChatGPTの取り組みを進めていると聞いて……。


岩田: 当時は、ちょうど半期ごとの目標設定で生成AI、ChatGPTをテーマとして取り上げており、社内での展開や、学習の場づくりを目標として掲げて動き始めたタイミングでした。


上田: 以前から岩田さんが活躍されているのを横目に見て、いつか一緒に仕事をしたいと思っていたので、これを機に上長に岩田さんと繋いでもらって。思いの丈をお互い会話して意気投合したことから、組織の垣根を越えて一緒にプロジェクトを推進することになりました。当時は、ちょうど半期ごとの目標設定で生成AI、ChatGPTをテーマとして取り上げており、社内での展開や、学習の場づくりを目標として掲げて動き始めたタイミングでした。

―そこからどのようにプロジェクトが進んでいったのですか? お二人それぞれの役割も含めて教えてください。

上田: お互いの役割を一言で表現するなら、結果として私がプロダクトオーナーを、岩田さんがエンジニアリングを担ったような形ですが、基本的にはどちらの仕事も二人三脚で一緒にやってきたという感覚が強くあります。

2023年5月にプロジェクトを立ち上げ、約2週間でプロトタイプを開発するスピードで進みました。


岩田: 取り組みのスタートラインとしては、まずはガバナンスの観点から、ChatGPTを活用するにあたってのリスクをしっかりと低減しなければなりません。情報漏洩のリスクが抑えられ、社外からも信頼していただけるような“安心して”使える環境を整備する、というのが第一段階のコンセプトです。


オープンソースも活用してシステムの開発を進めるとともに、法務・コンプライアンス・セキュリティ領域の担当者、グループ各社や各事業の担当者など、多岐にわたるステークホルダーの方々との調整も進め、6月頭くらいには内製でセキュアな環境での構築を行い社内での業務利用を開始しました。


その後、10月には、国内グループ38社への展開が完了した流れです。


お互いの強みを活かして、補い合いながら進んでいったかなと思います。

プロンプト共有機能やレベル別生成AI研修など、社員の生成AIへの感度を高める取り組みも

―“安心して”が一つのカギになりそうですが、この「PERSOL Chat Assistant」にはどのような特徴があるのでしょうか。

岩田:「PERSOL Chat Assistant」にアクセスすることで、入力したプロンプトが生成AIの学習に利用されないシステム環境、ガバナンス/ルールの両面で安心なChatGPTを使っていただくことができ、また活用のサポートやヒントも得られる仕組みになっています。

この“活用のヒント”の観点で大きな特徴になっているのが、プロンプト(ChatGPTに対する質問や指示文)を共有する「プロンプトギャラリー」です。

このギャラリーでは誰がどのようなプロンプトを書いているのかを見ることができ、「こんなプロンプトを作ってみたよ」と社員同士のコミュニケーションが生まれています。


上田: 集約管理型でIT部門から良いプロンプトを提供するのではなく、コミュニティを活性化させることによって、社員の生成AIにまつわる感度を高めていきたいという思いを込めて「プロンプトギャラリー」を作りました。

―プロジェクトを進める中で、特に苦労されたことはありますか?

上田: 人材サービス事業を手がけるこれだけの規模の会社ですと、守るべきデータが非常に多く、またその機微情報度も高くなるため、法務・コンプライアンス・セキュリティにおいてガードレールをどこに敷くべきかが非常に重要になります。グループ会社ごとにガバナンス機能が独立している中で、ホールディングスと各事業独自の視点をふまえて全体最適に導いていく、ステークホルダーとの調整には非常に苦労しました。


岩田: その調整をスピード感持って進めるというのがポイントでしたよね。生成AIに関してパーソルグループとして真剣に取り組んでいくという姿勢を、社内にも社外にも示していくことを考えると、今年度が勝負だなと二人で毎日のように会話していました。私たちとしても、経営としてもそう認識していましたから、スピード感のあるプロジェクト推進が求められる中でなんとかやりきろうと奔走してきたかなと振り返ります。

―そんな苦労の末にグループ展開に至った後、「PERSOL Chat Assistant」の社内普及に向けてはどのような取り組みをされてきたのでしょうか。

上田: 最初は「PERSOL Chat Assistant」について知っていただくために、ChatGPTとは異なる社内版のコンセプトや言語モデルの動作原理、生成AIとの関わり方を自分の言葉で噛み砕いて説明する動画を複数配信しました。動画ならいつでも・どこでも、そして倍速でも観られますから、できるだけ広範囲の社員のみなさんに好きな時間に見ていただけたらという狙いがありました。

その後、グループ社員のみなさんにもっと親しんで使ってもらえるように、「CHASSU」というプロダクトの愛称であったり、イメージキャラクターを作りました。


さらに「生成AIマスターへの道のり」というタイトルで生成AIの学習ロードマップをつくり、「知識を得るための研修」「楽しく学べるイベント」「最新情報のインプット」といった3つの軸でコンテンツの提供を開始。入門編・応用編・活用編・実践編とレベル別にわけて、利活用を後押ししています。


目まぐるしく変化する時流を捉え、事業やプロダクトにおける生成AI活用に向けた最適解を探っていきたい

―プロジェクトの現在地についてお聞かせください。

上田: 3万人に及ぶ国内のグループ社員に向けてサービス提供を開始し、岩田さんの高いエンジニアリングスキルのおかげで、問題なく安心して運用することができています。また、GPT-4モデルの提供など、こまめな機能改修も実施しています。


普及の観点では、パーソルホールディングス主催のものとは別に、グループ各社が独自に企画する生成AIに関する研修やイベントも実施されています。それらのイベントや研修は、毎回参加者が数百人規模で集まるような状況となっており、皆さんの生成AIに対するアンテナが高くなってきているなという手応えを感じますね。


岩田: 日々の利用者数も安定して伸びており、リリース1カ月後の時点で約5,000名の社員の方々に使っていただけるようになりました。今期中に10,000名の利用を目指して、さらに取り組みを進めていきたいところです。

―「PERSOL Chat Assistant」は今後どのように発展していくのでしょうか? 今後の展望をお聞かせください。

上田:「PERSOL Chat Assistant」は、あくまでこの新しい技術を事業やプロダクトに活かすための手段ですから、このツールに固執した長期的なロードマップを描きすぎないことを意識しています。


生成AI全般に言えることですが、昨日の正解だと思っていたことが今日不正解になるようなレベルのスピード感で新しい技術が発表されたりと環境が目まぐるしく変化しているため、しっかりと時流を捉えることがより重要になってくるはずです。

そういった意味で今後も、最新機能を取り入れてサービスを進化させることも、プロンプトの勉強など社員のリテラシーを向上させていくことも含めて、「社員の皆さんにどのような価値を提供したいのか」という軸で最適解を探っていきたいなと考えています。

――ありがとうございます。それでは最後に、お二人の今後の展望やチャレンジしたいことを教えてください。

岩田: ChatGPT、そして生成AIはこれまで人にしかできなかった領域に踏み込み、さらに自然言語で簡単に扱える、非常に面白いテクノロジーだと改めて感じます。社員の皆さんには「PERSOL Chat Assistant」を通じてChatGPTにとにかく触れてみてもらうことで「ダメもとで触ってみると意外と面白い」という気づきを生み、そこからより良い使い方の発見に繋がっていけばいいなと思います。


上田: 私は生成AIというテクノロジーに関して、事業・社員・会社という三つの軸で価値を提供していきたいと考えています。事業に対しては、生成AIを活用したプロダクト開発のハードルを下げるために、高いアジリティを発揮できる環境をホールディングスという立場から用意すること。社員に対しては、生成AIの活用を軸に業務効率化を支援すること。そして会社に対しては、人材サービス業界における競争力やテクノロジー企業としての認知度を高め、優秀なエンジニアの方々にジョインしていただく土台をつくること。生成AIを担いでさまざまな取り組みを進めることで、これら三つの軸を満たしていきたいなと思います。


そして最後に。最新技術においては正解が見えづらいことが多々あるものの、グループの社員に対してどのような価値を生み出したいか、そしてどんなことが実現できたらパーソルではたらくことに喜びを感じてもらえるか…。これらを日々考えながら、一緒に試行錯誤し、意見をぶつけ合ってプロダクトづくりをしたい人はぜひパーソルグループへジョインしてほしいですね!


※2023年12月時点の情報です。


パーソルホールディングスが運営するWebメディア「TECH DOOR」では、パーソルグループ内で取り組んでいるITプロジェクトを紹介しています。本記事と併せてぜひご覧ください。





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