アーバンエックステクノロジーズ(以下、アーバンエックス)は、東京大学から生まれたベンチャー企業です。各自治体が実施する、高額な専用点検車両を用いた道路点検(路面性状調査)を、スマートフォンで撮影した画像をAI解析することで安価に提供することを実現しました。
我らアーバンエックスに、2022年11月から顧問として参画しているのが、一般財団法人道路新産業開発機構理事長、そして一般財団法人 首都高速道路技術センター主席研究員を務める宮田です。「道路」の領域で幅広い知識を経験を有する宮田が、なぜ今AIベンチャーを支援しているのか。今回は、その理由について語ります。
宮田 年耕
国土交通省九州地方整備局長、同道路局長、首都高速道路株式会社代表取締役社長を経て、一般財団法人道路新産業開発機構理事長、一般財団法人 首都高速道路技術センター主席研究員。2022年11月よりアーバンエックスの顧問に就任。
都市インフラを整備する仕事からスタートしたキャリア
— これまでのご経歴について教えてください。
初めは建設省に入省しました。その後省庁再編で国土交通省となり、いろいろな部署を経験してきましたが、最も地に足をついた仕事をしたのは地方整備局でした。地方整備局は現場を実際にあずかる部署です。主たる業務はインフラの整備。インフラとは、河川、道路、公園などを指します。それらの調査、計画、建設から維持管理、運用までを含めた幅広い領域を担当します。
— 国の重要なインフラ全てに責任があるのですね。具体的にはどのような業務を行うのでしょうか?
例えば大きな河川で、国の管理領域の部分があるとした場合、そこの管理業務を行います。堤防を作る、ダムを作る、場合によっては立ち退きをお願いする等、様々な業務が発生し、それに伴い利害調整も必要になります。
公共事業は、もちろん住民の皆様へのメリットの創造のために実施します。しかし、住民の方の生活に関わることなので、意見は賛否どちらも出てきます。実行が決定した後、建設を行うのですが、建設に至るまでの道のりのほうが長期になることが多いです。
首都高を取り巻く環境の変化の速さ
— 少し想像するだけでも、簡単ではない仕事だと感じます。その後は、首都高速道路の代表を務めましたが、国交省時代の仕事との大きな違いはなんでしょうか?
首都高速が地方の道路と大きく異なるのは、道路の構造が複雑で、常時たくさんの交通量があることです。また、道路周辺にたくさんの人が住んでいるので、求められる対応のスピードも早いのが特徴です。
私がまだ建設省にいた頃は、首都高は「首都低速道路」と揶揄されるほど渋滞がひどい道路でした。元々首都高は、1964年の東京オリンピックの開催に向けて建設した経緯があります。その結果、都心から郊外部に向けて、放射状に道路をつくっています。この構造では、車の保有台数の増加に伴って、首都高のキャパを超えるのは必然でした。環状道路を作るようになって、渋滞もかなり緩和されてきたと思います。
— 時代の変化とともに、道路を取り巻く環境にどのような違いが生じてきたのでしょうか?
「作る時代」から、「管理する」時代へ変化しています。もちろん、未だ道路ストックが十分でない地域、箇所はあります。こうした道路の整備が需要なのは言うまでもありませんが、一方で戦後営々として建設してきた道路ストックは膨大でこれをいかに的確に、効率的に管理するかが大きな課題になってきています。
首都高は他の道路に先駆けて「管理の時代」に入りました。この「管理」を効率化するためには工夫が必要です。首都高速道路株式会社に在籍していた頃に、この領域にDXが入り始めました。ちょうど、首都高の維持管理を効率化するための技術や、点検の見逃しを防ぐための技術の発掘が始まったのです。
技術の応用とアーバンエックスへの可能性
— やはり、国交省で地方都市のインフラの状況を見てきたご経験から、コスト・人員の課題をクリアできるアーバンエックスの技術へ可能性を感じてくださったのでしょうか。
実は少し違うんです。私の経験からくるコスト意識がアーバンエックスへの興味に繋がったのではなく、首都高速道路で会長を務めていた渡辺捷昭(わたなべ かつあき)さんから「技術を応用する大切さ」を教えられていたからなんです。
渡辺さんは、トヨタ自動車で社長を務めた後に、首都高速道路の会長に就任しています。
私がまだ渡辺さんのもとで専務をしていた頃、車のエンジン開発の際に用いていた技術を首都高の路面の凹凸の検査に応用できないかと話してくれました。エンジンにレーザー光線をあてて3次元の点群データを取得することで、傷がないか確認する技術です。
首都高の点検では、エンジンの傷を確認するレベルの精度がマッチしなかったため、道路点検用に技術改良をする話が進みました。この際、複数の民間企業が集まり、使える技術を組み合わせ、応用し、新しいものを生み出すことで精度が高いシステムを構築することにつながったのです。この経験が、私の「技術を応用する大切さ」の原点です。
そんな経験があったからこそ、アーバンエックスの技術の話を聞いた時に可能性を感じ、顧問を務めさせていただくことになったのです。
— 最後に、これから共に歩んでいくアーバンエックスのメンバーへ激励の言葉をお願いします!
意欲的なメンバーが集まり頑張っている素晴らしい組織だと思っています。少し先輩である私としては「会社がどうやって社会が有する課題の解決に貢献できるのか」について考えていき、常に新しいフィールドを追い求めることが大切だと考えます。
例えば、現在の技術を応用すること。最近発表した「盛り土」の応用例はいいですね。もっと想像力をはたらかせて横展開し、アーバンエックスの技術が応用されるフィールドが増えることを期待しています。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000100663.html
良い技術は強みになりますが、すぐに追いつかれるものです。他社に真似されてしまえば、コスト競争に持ち込まれる。これからも世間のニーズを先読みし、独自のポジションを築いていくために一緒に頑張りましょう。
— 宮田さん、ありがとうございました。
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