株式会社NTT QONOQ(以下、コノキュー)は、2023年6月30日(金)、オフィス向けに特化したメタバースサービス「NTT XR Lounge(エヌティティ エックスアール ラウンジ)」(以下、XR Lounge)をリリースいたしました。
XR Loungeは、3Dアバターを通してチームメンバーが離れていても隣にいるかのような
リアルオフィス同等のコミュニケーションが可能な、法人向けのバーチャルオフィスソリューションです。
XR Loungeでは、各自任意の場所で働きながらも業務で利用するPCの横に置いたスマートフォン、タブレットからカジュアルな空間に好きな3Dアバターで参加いただくことで常にチームメンバーを近くに感じながら働くことができ、気軽に話しかけることができます。みんなの「今」を共有し、ベストなタイミングでストレスなくコミュニケーションができるため、社員の心理的安全性を高め、「ちょっとした相談」や「気軽なアイディアの共有」がしやすい雰囲気を醸成し、生産性・創造性の向上を図ることができます。
実際に、XR Loungeリリース前にコノキュー社内テストを行ったところ、90%以上のメンバーがXR Loungeの利用により、「会話の障壁が下がる」「話しかけるタイミングが分かりやすい」と感じたといいます。
今回は、そんなXR Loungeの起案から開発・リリースに至るまでにあったストーリーを、NTTコノキュー オフィスDX担当の社員にインタビューしました。
(NTTコノキュー オフィスDXメンバー)
【1】きっかけはリモートワーク下での実体験。「心理的安全性」の追求から生まれたNTT XR Lounge
自身がリモートワークで体験した「ちょっとした会話のしにくさ」「心理的な距離感」
―XR Loungeの起案に至った背景を教えてください。
磯部:
実際にリモートワークをしていると、「雑談がしにくくなった」「相手の忙しさが分からず、ちょっとした相談がしにくい」という話をよく耳にします。また、たとえ出社していても、別拠点/別組織のメンバーと業務を行うケースも増えてきています。こういった「場所」や「組織」によるコミュニケーションの壁をバーチャルオフィスで克服し、物理的な距離を超えて人間関係を深めることで、心理的安全性の高いチームを作れるのではないかと考えました。
(NTTコノキュー オフィスDX 磯部 孝幸)
園田:
リモートワークにおいて会話を始める為には、相手の状態を確認して明確に「話したい」とアピールする必要があるなど、会話成立までの手間やストレスになるためか、小さな会話の機会は極端に減少したように感じます。
この小さな会話には、「新しいアイディアの気づき」や「早期の意識ズレ発見」など、無視できない要素が多分に含まれていましたが、 既存のツールやソフトウェアでは解決が難しく、最終段階の会議で設計にズレが発覚するなど、思っていた以上に深刻な状況となっていました。
そこで、「意思疎通のハードルを下げる」という点にニーズがあると思い、まずは私たち自身の問題を解決することを目標としました。
(NTTコノキュー オフィスDX 園田 武)
田中:
コノキューでは、リモートワークと出社のハイブリッドワークがスタンダードとなっています。
私自身、新型コロナウイルス流行前の出社が当たり前のワークスタイルと、現在のハイブリッドワークのどちらも経験しているのですが、やはりリモートワークでのコミュニケーションの取りづらさは大きな課題と感じていました。
出社していれば隣の先輩にすぐに相談できたのに、リモートワークだとそうはいかず、物理的な距離だけでなく、心理的な距離も広がってしまったように感じました。
私は最初にこのプロジェクトに関わったとき、自分事として、この課題を解決できるソリューションを作りたいと思い、チームに参画しました。
(NTTコノキュー オフィスDX 田中 祐貴)
アバターや空間デザイン、システムへのこだわりが強み
ーXR Loungeならではの強みは何だと考えますか?
田中:
XR Loungeの利用シーンは、通常のデスクワークをしながら、スマホを自身のすぐ横に置いて常にリモートのチームメンバーと繋がっている、というものです。一方、通常の業務に支障が出ないよう、またゲームやアバターの操作などに慣れた人も慣れていない人も操作を極力簡単にする必要がありました。 競合のいわゆるメタバースサービスとの比較としては、
- ゲームやアバターの操作などに慣れた人も慣れていない人も簡単に操作できるユーザインターフェース
- ビジネスの場ではあるがチームメンバーとはゆるく深く繋がっている状態を提供できるコミュニケーションサービス(音声通話やエモートなど)
を強みとしており、特にアバターのデザインや空間のデザインにはこだわっております。
▼オフィスライクなルーム(業務)
▼リフレッシュできるルーム(休憩・コミュニケーション)
園田:
動物などの3Dアバターを使ったカジュアルな見た目に反して、目に見えないクラウド上のシステムは従来のビジネスサービスと比べてもタフな設計になっています。数々のソフトを世に出している親会社であるドコモならではのノウハウを活かし、セキュリティや耐障害構成などを余すことなく盛り込んでいますので、企業や団体といったお客さまに安心してご利用いただけます。
心理的安全性を追求した結果、3Dアバターを採用
―3Dアバターにこだわった理由を教えてください。
磯部:
既存会議ツールの2Dアイコンや絵文字では、相手の反応・感情が読み取りづらく寂しさを感じることがあり、これがリモートワーク下で雑談や情報共有が希薄化する要因だと考えています。
3Dアバターによって相手へのリアクションが感情豊かなものとなり、心理的安全性の高い、より優しいコミュニケーションが実現できると考えました。
田中:
「離れているけれど隣にいる感覚」が、3Dの方が強く生まれるからです。
実際に私のチームの中で、Web会議サービス/2Dバーチャルオフィスサービス/3Dメタバースサービスの3つを、日常の業務を常につながった状態で利用してみよう、という実験を行いました。
コミュニケーションの円滑化のためというのなら、Web会議サービスの場合「カメラで顔出しすれば良いのでは?」という疑問が出ると思います。ただし、カメラの前では心理的なハードルがあったのです。リアルオフィスならお互いの顔を見せるのに、カメラでの顔出しはハードルがあるというのは不思議ですよね。
また、2Dのバーチャルオフィスサービスについては、「仮想空間の中で一緒に仕事をしている感」は良かったのですが、「隣にいる感覚」はやはり薄れてしまいました。
一方、3Dのメタバースで実験をした際は、一緒に体験していたメンバーほぼ全員が、「離れているけれど隣にいる感覚」を感じており、リアルのオフィスでチームメンバーに気軽に相談できる感覚があったようです。アバター同士の距離感、方向がその感覚を生み出しているようです。私もそれをこの実験を通して強く感じました。 これが2Dにはなくて3Dにはある強みなのではないか、と思います。
▼3Dアバター
▼エモート(感情表現)
園田:
技術的な観点では、3Dと対極の表現であるドット絵はリソースには優しいのですが、反対に見た目で個人の差を出しにくいという難点があるため、大人数での利用を想定するXR Loungeとは相性は良くありません。
ただし、アプリを起動するための端末にはリソースに限りがあります。特に「法人のお客さま向け」と考えた場合、利用される端末自体のライフサイクルが長い傾向にあるため、リソースの下限を見込んで設計する必要がありました。
そのため、リソースに優しく視認しやすい、かつ、ゲームの作りこまれたクオリティを見慣れた方でも違和感なく利用していただけるよう、クオリティを維持しつつ、専門的にギリギリまでチューニングしたモデルデータを使用しました。
敢えてスマホ・タブレット端末のアプリにすることで、「近くに仲間がいる感覚」を生み出した
―ブラウザベースの会議ツールが多い中、スマホ・タブレット端末のアプリとした理由を教えてください。
園田:
近年、リモートワークやフリーアドレスの普及に伴い、場所にとらわれないワークスタイルの方が増えてきました。その結果、ノートPC一台で業務を遂行されている方も多いことと思います。
このような状況から、XR LoungeをブラウザサービスやPC専用アプリとして提供した場合、限られた表示領域の中で仕事に関連するアプリケーションに隠れてしまい、貴重な「近くに仲間がいる」をいう感覚を得ることが難しくなると判断し、まずはスマートフォン・タブレット向けのアプリとして提供することになりました。
田中:
他にも、PC用アプリとして提供した場合、PCメモリやCPUなどのリソースを使ってしまい動作が遅くなってしまうリスクがあったり、通常業務で資料を作りたいのにこのサービスが画面を占領してしまったりしている、ということになってしまう場合、本末転倒になってしまうと考えました。
【2】開発へのこだわり。ほぼ全員が初のアジャイル開発の中、生まれた苦労とやりがい。
―開発中の印象的なエピソードはありますか?
園田:
XR Loungeは、一般的で安定した開発機能・手法に頼らず、良いと思えるものであれば新旧問わず利用する方針で開発しました。
その中の一つに完成前のモジュールがあり、完成間近ということで利用に踏み切ったわけですが、実際には専門性が高いうえに当時は不具合も残っているなど、あまりに使いこなすのが難しく、途中で他のものに変更するという案も出たほどです。
最終的には担当の方々がギリギリまで尽力してくれたおかげで形になったわけですが、重要なのは目的を達成するための下調べと、ルールにこだわらない柔軟性だなと、反省しました。
田中:
これまではウォーターフォール開発に慣れ親しんでいましたが、XR Loungeではアジャイル開発にドラスティックに変更しました。
なぜアジャイル開発にこだわったのかというと、やはりこういった新しい仮想空間サービスというのは何がお客さまにとっての価値であり、心に刺さるものか分からないためです。まずはMVP(Minimum Viable Product)でお客さまに価値を提供できるミニマムなソリューションを作り出し、それを実際に触っていただきながらアップデートをしていくこと、そしてそのプロセスを高速で回していくことが重要であると考えました。
私はこのチームのスクラムマスターを担当しましたが、パートナー会社さま含め、社内外のチームメンバーがほぼ全員アジャイル初経験でした。アジャイルチームのあるべき姿・本質を理解したり、スクラムイベントの進め方をチーム全員で学習したりしながら進めていく必要があり、チームでの仕事の進め方を浸透させるまでの過程はなかなか大変でした。
特に、最初はベロシティ(生産性)が上がらず本当にやり遂げられるのか、という不安がチーム全体にあったかと思いますが、スプリント(短く区切った作業期間)を繰り返すたび、皆で進め方の課題を発見し改善を繰り返すことで、徐々に開発スピードも上がりました。
チームが成長していく過程と、徐々に目に見える「動くもの」が出来上がっていく感覚が、大変だけれど非常にやりがいがあって楽しいものでした。
【3】苦労の開発を経てリリースされたNTT XR Lounge。今後の展望とは?
―今後、XR Loungeのどういった機能を開発したいですか?
磯部:
現在市場にあるバーチャルオフィスサービス全般の課題として、「最初はとても楽しいが、徐々に飽きて使われなくなってしまう」ことが挙げられるのではないでしょうか。
XR Loungeの空間にいることで、「新しい発見がある」「業務の困りごとがすぐ解決できる」「新しいメンバーともすぐに打ち解けられる」といった価値を提供できるような仕掛けを用意したいと考えています。
園田:
XR Loungeの利用はまだ一つの組織単位に限定されていますが、企業間の交流促進など、より広範囲で円滑な情報共有機能を実装し日本企業の競争力向上に貢献できる、そんな機能を提供したいです。
田中:
まずは現状のサービスをお客さまにご利用いただき、いただいた声を機能という形で実現していきたいです。
個人的には、「3D空間でできることならでは」という視点で、ゲーム要素があっても面白いと思います。そういった遊び要素から生まれるコミュニケーションもあるはずだからです。
―最後に、XR Loungeを通して実現したい世界観を教えてください。
磯部:
実際のオフィスでは、話しかける側が相手の様子を見ながらタイミングを決めて声をかけることができます。XR Loungeでも同様に、双方が「今」の状態を共有し合い、ベストなタイミングでコミュニケーションをとれる環境を作ることで、信頼関係が醸成され、気持ちよく、長く働き続けたいと思えるような職場環境を作り出したいです。
園田:
既存の専門性の高いサービスからの乗り換えを押し付けたり、従来のルールや運用の妨げになったりするようなソリューションにはならないよう、常に心がけています。
XR Loungeの中で過ごしていただいたその延長で、初めて現実で対面することになった場合も、「いつものように」対話していただけるような、仮想と現実をシームレスに繋ぐ、そういったソリューションをめざします。
田中:
XR Loungeの最大の価値は、リモートに散らばった上司・同僚・後輩と「リモートなのにすぐそばにいる感覚とコミュニケーションの取りやすさ」を提供することだと考えています。
物理的な距離と心理的な距離を縮められるような工夫を、テクノロジーで実現していきたいです。
■会社概要
【株式会社 NTTコノキュー】
代表取締役社⻑:丸山 誠治
所在地:東京都千代田区永田町2丁目11番 1号山王パークタワー7階
2022年10月1日より株式会社NTTドコモ100%子会社として事業を開始いたしまし た。 個人のお客さま・法人のお客さまに対して、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)などXRを用いて、メタバース・デジタルツイン・XRデバイスの3つの事業を柱に、さまざまなサービス、ソリューションを提供いたします。
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