海外・国内のベンチャー系ニュースサイト | TECHABLE

TECHABLE

STORY 社長へ直談判してAI専任チーム設立。自社の理念・行動指針を基に返答してくれるChatGPT技術を活用した相談チャット開発の裏側

Story

社長へ直談判してAI専任チーム設立。自社の理念・行動指針を基に返答してくれるChatGPT技術を活用した相談チャット開発の裏側

SHARE ON

このエントリーをはてなブックマークに追加

お客さまと共に新たな価値を創るパートナー型デジタル・エージェンシーTAMは、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援しています。TAMは「AI技術が持つ可能性を引き出し、業務の効率化と品質向上に貢献する」ことを目指し、2023年5月1日にAI活用のR&D専任チーム「TAM AI Lab」を設立しました。


AIと大規模言語モデル(LLM)の活用法を模索してきたTAM AI Labは、2023年6月6日に「TAMくん相談チャット」を公開しました。TAMくん相談チャットは、ChatGPTの技術が活用されており、TAMの公式キャラクター「タムくん」が企業のクレドや理念に基づいて返答をしてくれる企業独自のチャットボットです。


https://tamkun-sodan-chat.vercel.app/


このストーリーでは、TAM AI Labチーム設立と、「TAMくん相談チャット」が生まれた経緯について、TAM AI Labリーダー佐川にお話しを聞きました。


「僕は絶対にAIをやりたかった」。社長に直談判し、AIチームが発足

TAM AI 専任チーム「TAM AI Lab」リーダーの佐川史弥さんがチーム立ち上げた背景をお伺いしたいです。



佐川:きっかけは、「Midjourney」が2022年の夏頃にリリースされたことです。このサービスはユーザーの入力に基づいてリアルな画像を生成するもので、AIが私たちの想像力を形にできる可能性を示しました。そして、「ChatGPT」が文章作成も可能にし、これからの働き方とビジネスに大きな変革が訪れることを感じ、衝撃的でした。


そこで「OpenAIがChatGPTのAPIを公開した」とのニュースを受けて、すぐに所属していたチームリーダーの角谷さんに相談を持ちかけました。「これからはAIを専門に学びたい」と。


エンジニアとしての仕事との兼ね合いもあったのですが、僕は絶対にAIをやりたかった。他の会社に転職する選択肢もありましたが、TAMの人や文化がすごく好きなので「貢献するならここで」と考えていたので、TAM代表の爲廣さんに直談判しました。


角谷さんと爲廣さんの理解と協力を得て、AI専門チーム「TAM AI Lab」の設立が決定しました。

他の企業ならば、代表に直談判するのは難しかったかもしれないし、反感もあったのかもしれないですね。しかし、TAMは個々の挑戦を応援する文化があり、それがAIチームの設立をスムーズに進められた大きな理由だと思います。


こうして、生まれた「TAM AI Lab」は、AIの可能性を追求し、ビジネスに活かすという目標を明確に持ち、新しい時代に一歩を踏み出すこととなりました。


社内のslackに投稿されたつぶやきが発端となり「TAMくん相談チャット」開発を開始


TAM AI LabのLLM(大規模言語モデル)の実証実験の一環として開発された「TAMくん相談チャット」について教えてください。


佐川:まず、TAMくん相談チャットとは、TAM公式キャラクター「タムくん」と気軽に会話ができるチャットツールです。

ChatGPTの技術を活用していて、面白い特徴としては、TAMの理念や行動指針を基にコテコテの関西弁で返答してくれるところ。


×


開発に至ったきっかけは、ある日TAM社内のslackに投稿されたつぶやきでした。


”タムくんにTAMの理念ベースでアドバイスをもらうプロンプト。

気さくに話してくれるので、気持ちがほぐれるかも。”


TAMの理念ベースでアドバイスをもらうプロンプトを活用したメンバーが、「TAMくんの助言に全米が泣いた 」「幸せって何?とか、仕事って何?とか聞いてみたんやけど普通に良いセンパイすぎた」「上司に欲しい」という感想をあげており、社内で小さな話題となっていました。


そのような背景から、まずは「TAMくんと気さくに相談ができる」という当初のコンセプトをミニマムな形でアプリケーション化を目指しました。

最初は、質問し返答してくれる、そして会話のログとTAMくんの画像が表示されるだけのシンプルなものでした。TAMくんが視覚的に存在していることで、ユーザーとの距離感が近くなったように思えますが、得られる体験自体はChatGPTと大差はなかったですね。


最初のプロトタイプイメージ


殺風景でどことなく寂しさも感じられる…

ここからより良い形にしていこうと考えますが、本格的な開発に入る前に「なぜ今回の試みに魅力を感じたのか」プロジェクトの方向性を再確認することにしました。それは、TAMメンバーが「TAMくんから適切かつ暖かい助言がもらえる」という点にありました。


TAMくんは私たちTAM社内の人々にとっては馴染み深いキャラクターですが、社外の方から見れば初見の存在で、興味関心を持ちにくいです。

そこで、当初のアイディアである「TAMのマスコットキャラクター "TAMくん" に、TAMの行動指針に基づいた働き方相談を楽しみながら行える」というものに、エンターテイメント性を加えることで、TAMを知らない方でもアプリケーションに親しみを感じやすい形にすることを目指しました。


まずは、「従来のアプリケーションUIとゲーム画面の融合」を試みました。TAMくんの画面占有率を高め、ゲーム的なUIを用いることで、ユーザーが楽しみながら体験できるデザインを目指しました。さらに、TAMが31周年を迎る企業と言うこともあり、あえて少し古めのゲームをモチーフにしています。


ゲーム的な要素を含む画面はアプリケーションのUIですが、企業の経営者の方に興味を持っていただきたかったこともあり、少し硬めのUIを採用し、信頼感を演出することも意識しました。


「TAMくん相談チャット」の裏側で動く独特なプロンプト設計とは


TAMくん相談チャットはChatGPTの技術が使われているとのことですが、コテコテの関西弁での返答や、TAMの理念や行動指針(クレド)を元に返してくれているのは、裏側でどのようなことが起きているのでしょうか?


佐川:TAMくん相談チャットの秘密は、裏で動いている独特のプロンプト設計にあります。

設計は主に3つのステップに分けられます。


ステップ①TAMくんにプロフィールを与える

ステップ②TAMくんが行動指針に基づいた相談ができるようにするための設計

ステップ③振る舞いを決める


これらの設計ステップにより、TAMくん相談チャットは、楽しさを感じながら、TAMの行動指針にのっとったアドバイスをもらえる環境を実現することができました。


しかし、設計にする中で課題もあって、ChatGPTは扱えるテキストの長さに制限があるため、「TAMについて聞く」モードはテキストの制限に引っかかってしまうという懸念点がありました。この課題は、他の技術と掛け合わせることで解決することができました。

今後、ChatGPTの技術を活用した開発において、ChatGPTの機能だけでなく、他のシステムや技術との連携を通じて、その可能性を広げられることが分かりますね。


リリース後の社内のフィードバックを受けて改善を繰り返した


裏側ので起きていることや、今後ChatGPTの技術を活用する上で他のシステムと連携させることで可能性の幅が広がることがわかりました。ユーザー体験の向上を目指し工夫

して開発されたTAMくん相談チャットですが、リリース後のメンバーの反応はいかがでしたか?


TAMくん相談チャットを使用したメンバーにインタビュー中


佐川:TAMくん相談チャットのリリース後、メンバーからの評価は良かったという印象です。普段から企業キャラクターとして触れる機会の多いTAMくんとお話しできるという点は大きいと思います。キャラクターが存在することで体験が有機的に感じられ、表情の変化や背景設定がコミュニケーションの一部となり楽しみながら利用できたとのことでした。

一方で使い方が分かりにくい、解答に誤りがある、UIがあまり良くないかも…という意見もありました。


メンバーのフィードバックを受けて、一部改良しました。特に、キャラクター性が好評だったため、TAMくんに触れると反応するようなアニメーションの追加や、TAMくんの表現を豊かにするなど工夫してみました。

使い方が分かりにくいという意見に対しては、TAMくんのセリフによるガイドを追加し、使い方を直感的に理解できるように改善しました。


特に、チャットの待機時間をカバーするために、「思い出しながら答えるね」というセリフ設定を追加したのはユニークなポイントだと思います。また、解答の信頼性を向上させるために、出典リンクをキーワードに付与する改良も行いました。UIも全体的にブラッシュアップされ、ユーザー体験が向上したと思います。


「ちょっと思い出しながら答えるね」というフレーズ部分


黄色い箇所:出典リンクをキーワードに付与部分


最終的に、これらの改善によりTAMくん相談チャットは、良い部分を伸ばし、課題部分を改良することで、よりユーザーフレンドリーで有益なツールになったと思います。


TAMの30年間の「共創」のコンセプトを今後も大切にしてゆく


3週間という短期間でしたが、満足のいくサービスを作り上げることができたと思っています。プロジェクトの過程で、TAMが長年守り続けてきた基本的な制作手法、つまり「誰がどんな悩みを持っていて、どんな解決策が必要なのか。そしてそれをどのように届けるのか」という問いが、時代が変わっても変わらず重要であることを再認識しました。


時代はLLMの登場により急激に変化していますが、重視すべきはいつもユーザー、すなわち人間であるという事実は変わりません。新たなAI時代においても、「本質的な課題は何か」という問いをより一層重視し、解決策を提供するべきだと感じました。


AI時代は、情報を「伝えて終わり」ではなく、双方向のコミュニケーションを重視する時代になるでしょう。この新しい時代に対応するために、私たちはより良い伝え方・コミュニケーションの方法を模索し続けるつもりです。これこそが、ユーザーにとっての最大の体験価値と幸せを提供する方法だと信じています。


LLMの力によって実現されるキャラクターとの対話体験から、生成AIによって生み出されるパーソナライズされたインタラクションなど、誰かの役に立つ、そしてワクワクする体験の可能性が夢のように広がっています。


これまでTAMは30年間、共創をテーマに活動を続けてきました。新たなAI時代においても、お客様と共に新たな体験を創り出していくことを目的にTAM AI Labとして動いていきたいと思います!


企業情報

TAMは、お客さまと共に新しい価値を創る、パートナー型デジタル・エージェンシーです。制作・開発のモノづくりから、マーケティング、現場運用まで伴走し、共創パートナーとして、DX(デジタルトランスフォーメーション)を支援します。


設立:1992年4月25日

代表取締役:爲廣慎二

所在地:大阪市北区末広町3-7

事業内容:パートナー型デジタル・エージェンシー

URL:https://www.tam-tam.co.jp/





行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ
Techableの最新情報をお届けします。
前の記事

WHAT'S NEW

最新情報