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STORY 【スタートアップインタビュー】アノテーションデータを通して誰もが社会に貢献できる未来へ

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【スタートアップインタビュー】アノテーションデータを通して誰もが社会に貢献できる未来へ

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学習データの作成は、AIの開発や運用において欠かせない。AIに学習させたいデータに意味づけ(タグ付け)を行い、判断・抽出精度を上げる工程を「アノテーション」といい、アノテーションデータの収集は多くの企業にとって課題となっている。TRIBUS2021で採択された株式会社APTOは、自社サービスの開発を進めるなかでデータ収集のハードルの高さに悩んだ経験から、クラウドワーカーによって大量のデータを収集し、企業に提供するためのプラットフォーム「harBest(ハーベスト)」を開発。大量かつ高品質のデータを求める企業に対してデータ提供を行う仕組みを作り上げた。TRIBUS2021のプログラムでは、SV事業のバーチャルツアーサービス「RICOH360 Tours」におけるAI機能拡充として「harBest」を提供した。この取り組みを通してさらなるサービスの水平展開を目指す、株式会社APTO代表の高品良氏にTRIBUS2021での半年間について伺った。

 

株式会社APTO 代表取締役 高品良氏



AI事業の課題である「大量で高品質なデータ」を提供

 

――最初に「harBest」の開発が始まった経緯について教えてください。

 

2021年にリリースした「harBest」は、AI・人工知能開発で時間と手間のかかる学習データ作成を、低コスト・高品質にて提供するアノテーションツールです。

この「harBest」 を開発している株式会社APTO は、私にとって2社目の立ち上げとなります。1社目は2017年にvLab株式会社というVRの会社を立ち上げていて、AIに精通した人や若いエンジニアと出会う機会があり、もっといろいろなことをやってみたいと考えるようになりました。



そうして新しいビジネスアイデアを考えていく中、24時間365日、人が監視して運用を行っている企業のリスクマネジメント直結する「自動炎上検知サービス」を知り、この仕組みをAIで解決できないかと思ったんです。いざ自動炎上検知サービスの開発を始めたのですが、AIに学習させるための文章が何十万件と必要でした。データの収集は単純作業であるものの、外注すると費用が高く、サービスの性能を上げることが難しいと壁にぶち当たったんです。それと同時に、これは自分達に当てはまるのではなく、AIに関する事業に取り組む企業のほとんどが、「大量で高品質なデータ」をいかにして集めるかという課題を持っているのではと気付きました。

そこで、データに関わるサービスを提供し、インフラをつくろうと考えて、「harBest」が生まれました。仕組みとしては、クラウドワーカーが一斉に作業をすることで、大量のデータを素早く、高品質に集め、企業に対してダイレクトにデータを提供することを可能にします。


――TRIBUSに応募されたきっかけ、理由を教えて下さい。

 

ずっとアクセラレータープログラムをやってみたいと思っていて、事業会社として行っているものを探していました。そのなかで、リコーではAI分野に取り組んでいんでいることを知り、なにかシナジーが生まれるのではと思って応募しました。

TRIBUSに参加してからはカタリストの方々が多くのところに働きかけていただき、複数の部署で案件化を進めるができました。「このようなデータを集めたい」というご相談をいただいたり、費用と品質を求めてBPO会社から当社に乗り換えていただいたりと部署により課題は様々です。特に「データはあるものの、整理しきれない」というケースが多く、その点のサポートで入らせていただくこともありました。


データを通して社会に貢献し、稼ぐための仕組みをつくる

 

――リコーとはどのような取り組みを行ったのですか?

 

具体的には、360°カメラの「RICOH THETA(リコーシータ)」で、AI機能拡充のためのデータを集めるアノテーションを行いました。リコーのR&Dの方とやりとりさせていただいたなかで、特殊なアノテーションの方法を使えたのは勉強になりましたね。「harBest」では、免許証の登録やNDAを結んだ人をProユーザーに認定して、秘匿性の高い情報や精度の高い内容を扱うことができます。今回のリコーの案件もProユーザーに担当してもらいました。Proユーザーは職業も登録するので、分野に対して専門性のあるユーザーや研究者に依頼を行い、より精度を高めて対応することもできました。

 

――TRIBUSではリコー社内のリソースを活用できたり、各部署との連携を担う「カタリスト」が伴走しますが、どのようなやりとりを行っていましたか?

 

今回が初めてのアクセラレータープログラムでしたが、カタリストの方にはとてもよく動いていただき感謝しています。多岐に渡る部署にヒアリングや提案をさせていただくことができましたが、関係各所との交渉をカタリストさんがすべて担ってくれたおかげです。

私がやろうとしていることを理解して、「AI開発ではデータが重要」という点を攻めきってくださり、実際に案件にも繋がったことがとても良かったと思っています。リコーからは、アクセラレーター期間が終わってからも問い合わせをいただくなど、潜在的な需要も感じていますし、距離の近さがありますね。



――今後注力していきたいことはありますか。

 

「harBest」はBtoBtoC向けのサービスです。企業からの案件がないとユーザーは集まりませんし、ユーザーがいないと企業も案件を依頼できません。そのため、まず尖らせようと思っているのがユーザー数で、2022年内に5万人の登録を目標としています。具体的には、企業が「このデータが欲しい」と思ったら2~3日で集まることを目指しています。他のBPOサービスを使うと数十万円かかるところを、低単価かつ高品質に、簡単にデータを集めることも可能にしたいです。一般的に、副業アプリのユーザー数は集まりやすく、100万人登録しているサービスもざらにありますが、比較すると当社のほうがユーザーへの還元率が高い点は強みですね。当社のポジションとしては、副業とUber Eatsなどのギグワークの中間にいると考えています。やはり「秘匿性の高いデータを使いたい」という声は多いので、Proユーザーも1万人を集めていきたいと思っています。

 

海外ではアノテーションのアプリは2012年には存在しており、2019年にはUberに買収されています。日本では同様のサービスは10年経っても無かったため、当社が開発に至りました。海外にあるから日本にはなくていいというわけではなく、日本人でなければできない作業もあると思っています。


ゆくゆくは企業の案件を増やしながら、ワーカーを集めてアノテーションで稼げる人を増やしていき、Uber Eatsのようなギグワーカーとして働ける世界を目指しています。日本はAI後進国と言われていますが、データを通してAI開発に貢献できる、かつお金も稼げるということを浸透させれば、底上げができると思っています。そのためには、「ただ作業をした」ではなくて「なぜこれをやるのか」、たとえば「この作業をすることでリコーさんの案件に貢献した」というように、目的を認知させられるようなデザインになるように変えていきたいです。

 

――最後にメッセージをお願いします。

 

カタリストの皆さん、ゼロワンブースターの皆さんにも、とても協力していただきました。この期間のなかでAIについての知識を身につけて、伴走していただいたのがとてもありがたかったです。TRIBUSには成果発表会があり、その中で応援動画をつくっていただきました。皆さんお忙しい中で、細かいこと、苦手なこともメンバーが役割分担してしっかりとやっていただいたことにも、とても感激しています。ありがとうございました。




カタリストからのコメント

高品氏のインタビューでも語られていたように、カタリストから「多くのところに働きかけ」がなされたようだが、実際にどのようにスタートアップとのコミュニケーションを深め、それぞれサポートを担っていたのだろうか。APTOに伴走したカタリストは3名からコメントが届いたので紹介する。


●前田 裕司

リコーデジタルサービスビジネスユニット デジタルサービス開発本部 アドバンストバリュー開発センター


Q1. APTOや事業への第一印象やカタリストとして関わるにあたってどういった想いがありましたか?


APTOさんはビジネスの狙いが明確で、弊社への期待事項もはっきりしていましたので、カタリストとして伴走のベクトルを合わせるのに時間がかからなかった印象があります。

また、AI分野に関するカタリストの経験値がほとんどない中で、我々のレベルに合わせて丁寧に説明頂いたり、活動中にも将来の方向性や課題などについて真摯に語っていただけて、誠実さも感じ、各カタリストも何とか力になれればと思って活動していたように思います。


Q2. APTO に伴走していく中での気付きはありましたか?


APTOさんとの活動を通して、社内のAI開発における課題/特性などを知り、それらの課題とAPTOさんのソリューションとのマッチングポイントも見えて来ました。

また、社内の協力を得るための交渉手法についてはカタリストとして悩みながら実践した結果、他の業務にも生かせる学びを得られたと思います。

APTOさんは技術を強みとして今後のビジネス拡大のきっかけをつかもうとしているスタートアップのひとつの典型例のように見えて、スタートアップの世界を知るという観点でも大変参考になりました。


ーーー


●小松 秀樹

リコーデジタルプロダクツビジネスユニット 生産購買本部 資材統括センター


Q1. APTOや事業への第一印象やカタリストとして関わるにあたってどういった想いがありましたか?


採択当初、APTOさんはプラットフォーマーを目指しているというお話があり、それに対してカタリスト、ひいてはリコーは何が支援できるだろうと考えました。

 01Boosterの方に相談したところ、「プラットフォーマーとして成功するのは極わずか。成功パターンが明確にあるわけでもない」という話から、「スタートアップ企業にとっては、大きな企業で実績を出したことがものすごく大きなこと」と言われ、自分の中ではリコーで実績を出すことを目指そうと考えました。


Q2. APTO に伴走していく中での気付きはありますか?


高品さんは自身がやりたいことがはっきりしていているタイプの人かと思います。

リコーで実績を出すためには、データの秘匿性を担保することがハードルになっていましたが、いろいろな対処方法があるなかで、高品さんはスマホベースに拘りがあり、Proユーザーを提案することで問題をクリアされました。

信念がぶれないというか、強いというか、起業家ってこういう人なんだろうなと感じています。

Uber Eats のようになりたいと言われていたので、今後の戦略をお聞きできるのを楽しみにしています。


●平井恭子

リコー先端技術研究所 共通基盤センター 第一エレキ設計室 アナログ設計二グループ


Q1. APTOや事業への第一印象やカタリストとして関わるにあたってどういった想いがありましたか?


私自身はAIの開発に携わったことがないのですが、最初高品さんからの説明で、AI開発工程のうち、必要な大量のデータ入手とアノテーション作業が最もたいへんな工程であることを知りました。

また、一般のクラウドワーカーが街なかで撮った風景やアンケートの回答内容、スマホでのアノテーション作業が、新たな製品サービス開発につながっていくというビジネスモデルは興味深く、新たな働き方の可能性を感じました。


Q2. APTO に伴走していく中での気付きはありますか?


今回は社内で適合する案件を探すにあたりさまざまな部署と面談を進める中で、APTOさんのコンセプトと合う開発部署と出会うまではリコー社内で開発されているAIは秘匿性があるものも多くあると知り、社内展開の難しさを感じました。

一見技術的に難しそうなことでも、こうすれば解決できるのではないかと考えて実行する高品さんの行動力は素晴らしいと思いました。




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