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STORY 「マネジメントのデジタル化」を本気で突き詰める。   TRIBUSの枠組みを超えて進化する共創プロジェクト

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「マネジメントのデジタル化」を本気で突き詰める。   TRIBUSの枠組みを超えて進化する共創プロジェクト

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 「TRIBUSは生き物だ」と言ったのはリコー社長山下だが、それはTRIBUSが予め定められたなにがしかの枠ではなく、参加する人々が自律的能動的に活動し、あたかも生き物のようにTRIBUSを動かしていくことに期待しているということにほかならない。逆にいえば参加者はTRIBUSというフレームに「はめこんでいく」のではなく、 そのフレームれを「超えていく」ことにこそ意味がある。それを体現しているのが、2020年に採択されたKBEだ。期間中にソリューション『researcHR』をローンチ、2021年3月にアクセラレータープログラムが終了した後も当たり前のようにリコーと協業を続け、2021年12月には共同リリースを発表、今も両社の取り組みが続けられている。KBEとリコーの間で何が起きているのか、また、何かを起こすには何が必要なのか。KBEの代表取締役 白壁和彦氏とカタリストの中村光男、researcHRの社内実践に協力したデジタル戦略部の田中諭、林貴彦に話を聞いた。

インタビュイー

KBE株式会社 代表取締役 白壁和彦氏

株式会社リコー デジタル戦略部 CS推進センター DX価値創造室 室長 田中諭

株式会社リコー デジタル戦略部 CS推進センター DX価値創造室 林 貴彦

TRIBUS2020 カタリスト:株式会社リコー プロフェッショナルサービス部 ワークフロー革新センター EDW企画室 中村 光男


――まずTRIBUSにエントリーされた経緯、理由を教えてください。

 

白壁「弊社は東工大発ベンチャーを謳っており、TRIBUSにエントリーした当時は社員10名ほどのうち、8割5分がエンジニアという組織でした。なのでプロダクトを作ったはいいが、販売する力がない。その点をこれから伸ばしていかなければいけないと考えていたところ、自前で変えるというよりは強い会社と組もうと思ったのが最初のきっかけですね。

弊社の『researcHR』は、現状、SlackやMicrosoft Teamsに追加して使うAIベースのマネジメントツールで、デジタルの情報共有の活性化、メンバーのコンディションの把握、蓄積データからの意思決定の支援などを行うものです。つまり、これまでマネージャーの属人的な力量に依存していた部分を、データを起点にしたマネジメントにしましょう、というもので、働き方改革やDXという文脈で新しいことをやりたいという企業と組みたいなと思っていました。

そこで、運やタイミングが良かったんでしょう、「働き方改革」とか「HRテック」「協業」で検索していたら、たまたまリコーのTRIBUSを見つけたんです。その時はまだプロダクトを制作途中だったので協業系では応募してなかったんですが、ちょうど翌月締め切りだし、ピンポイントで応募してしまいました。

 

そしてリバースピッチを見たときに、リコーってコピー機の会社だと思いこんでいたので、働き方とかデータの文脈に来るんだという新鮮な驚きを覚えたのと、本気で張っている感覚が伝わってきたんです。大手と協業するとき、ベンチャーは結構リソースも投入するし、本気で「張る」んですよ。だからコケるとものすごく痛いし、その分予算を割く気があるか、リソースを投入してくれるか、大手側の本気度に鼻が利くようになる。その点、リコーはかなり本気で張ってる感じが伝わってきたんです。今この場で言うのもなんですが、本業のコピー機だけでは厳しいだろうと思いましたし、予算もつけて役員もコミットしてるところから、マジで次のタネ探ししてるんだろうという読みもありました」


――採択されてからアクセラ期間中、何をやったのでしょうか。

 

白壁「タイミングでいうと、弊社のプロダクト『researcHR』がリリースするかしないかというところで、中村さんや他のカタリストの皆さんとディスカッションするなかで、リコーの文化的に外販前に社内実践したほうが良いということになりました。これは僕ら的にもありがたくて、3部署でトライアルし、フィードバックをいただきました」

 

中村「導入してもらったのは、将来この製品を売ることになりそうな、リコージャパンの一部署のほか、田中さんの部署などです」


田中「僕はTRIBUSのピッチで見た、白壁さんのプレゼンのスタイルがシンプルですごく刺さったんです。まだプロダクトができていない段階でしたが、SlackとMicrosoft Teamsに乗せるというのが、目の付け所がいいなと感じました。日々の動線を変えずに新しいことができるので。あと、白壁さん本人も聡明かつ価値観が近そうな印象があり、話をしてみたいですねって林さんにチャットで伝えたんですよね。あとでそれを白壁さん本人に伝えたらうろたえてましたが(笑)」

 

林「ちょうど僕らの部署で人事、HR系の新しいサービスを立ち上げようと企画していたときだったんです。リコーとして掲げていた「”はたらく”に歓びを」という2036年ビジョン、それから自律的な働き方や働き方のデジタル化といった方向で、KBEのresearcHRと同じようなソリューションを作ろうと考えていました。それで、田中さんと相談して、社内実践に手を挙げました」

 

中村「実際に導入してみると、部署名が長かったり、人数が多すぎるとうまく検索できないといった課題が浮き彫りになったんですよね。特にリコーは長い部署名が多いので」


――アクセラレーションプログラムで苦労したことは。

 

白壁「中村さんにはものすごくご苦労をおかけしてしまったんですが、やはり大企業だけあって、社内実践に対してセキュリティが厳しかったこと。社内のトライアルだったらその辺スピーディーに行けるかと思ったのですが、全社的に導入して大丈夫なのか、会社のルールに則ってフローをチェックするというんですね。ちょっと見積もりが甘かったというか、それで中村さんに頑張っていただいた次第です」

 

中村「私も社内実践してから販売へ進むというフローがあることは知っていたのですが、申請したのはこれが初めてだったんです。それが結構大変でした。社内のポータルサイトから申請するというのも初めて知ったし、ものすごく手順が多くて単純に面倒だということもあったし(笑)。そして、社内トライアルできる状態にまで持っていくのも手がかかりました。あちこちに持っていって、これどうでしょうと聞いて回ったり、販売を視野に入れてリコージャパンに話を持っていっても、規模が大きくてどの部署がマッチするのか分からなかったりしましたね。

 

ただ、TRIBUS自体の認知は社内でも広まっていたし、知り合いをたどっていくことで、なんとか希望通りの部署にたどりつくこともできました。カタリストというと、なにか特別な能力が必要かと思っていましたが、自分が今までやってきたことで役に立てますし、自分が持っているコネクションを思い切り活用すればなんとかなるということも分かったので、もしカタリストをやりたいけど悩んでいるという人がいたら、安心して応募してほしいですね」

 

白壁「社内実践の導入までは苦労がありましたが、それ以外は結構うまく進んだと思います。もし、 TRIBUSとしてある部署と組む形の共創の例がまだ少ない中でうまく進めたのだとしたら、それはシナリオがきれいだったこと、わがままを言ったことが理由だったのかもしれません。


シナリオというのは、お互いのやりたいことがきれいに決まっていたということ。ベンチャーと大企業の協業で最初に時間が掛かるのはそこなんですよ。『何やる?』という話し合いに時間が取られる。しかし僕らの場合下心がクリアで(笑)、リコーとすぐ合致することができたんです。

 

もうひとつの『わがまま』というのは、こちらがわがままを言いまくったということ。協業を始めるときに、お互いのリソースを出し合いましょう、ということになるんですけど、リコークラスの大企業になるとリソースも死ぬほどあって何を持ってきていいか分からないんです。なのでベンチャー側からクリアに『これこれをお願いします』『こういうケースをお願いします』と、クリアに、きちんと的確にわがままを言いまくることをかなり意識してやりました。その分中村さんにはご迷惑をお掛けしてしまいましたが」


――中村さんがカタリストに立候補した理由は。

 

中村「私はずっと組み込み系のソフト開発をやってきまして。ファクスから始まりその後は複合機をずっとやっていたのですが、長年やっていて、違う製品も体験してみたいという気持ちがあったんですよね。社外の人、スタートアップ企業と一緒に活動できるというのもあり、TRIBUSのことを知って応募しました。その時はKBEのことはもちろん知らなかったのですが、社外の人の考え方や仕事の仕方を勉強してみたいと思っていました。

それでご一緒してみると、とにかくフットワークが軽い。こういうのをやってほしいとお願いすればすぐ対応してくれるし、毎週のペースでバージョンアップをリリースしてくるんです。リコーだったら半年とか1年掛かりますよ。考えられない速さですよね。自分もソフト開発やっているので、これは見習わないとなと思いました。また、今回のカタリストの仕事で知った社内実践のプロセスは今後私たちの仕事でも活かせると思います。

 

一方で、白壁さんたちはアクセラ期間内に販売まで持って行きたかったのだと思うのですが、そこは力が及ばず、あっという間に期間が終わってしまって申し訳なかったです。結局アクセラ期間後にまで延びてしまいました」

 

――アクセラ期間終了後の流れ、動きを教えて下さい。

 

田中「統合ピッチのときの話だと、もっと早めにMicrosoft Teams版をリリースするという話だったのですが、システム側の対応やテスト、仕様詰めなどに想定よりも時間が掛かり、結局リリースされたのがアクセラ期間終了後の5月くらいだったんです。

先程の林さんの話にあったように、もともと僕らの部署では、コロナ前からバラバラに仕事しているメンバーが、自律的に機能するようなチーム用コミュニケーションツールの開発を企画していたので、Teams版が出て安定してきたところを見計らって、改めて情報交換をしながらじゃあちょっとやってみようかとなりました。本当に本格的に始まったのは9月くらい。その頃は白壁さん、林さんと僕との3人でもう毎週のように濃密な議論を重ねてましたね」


白壁「僕ら視点で言えば、1回打席に立たせてもらって、社内実践とはいえ、リコーの課題にちゃんとフィットするような価値を提供できたことが評価いただけたのかなと思います」

 

――密なコミュニケーションが取れた理由は何だったのでしょうか。

 

田中「僕は2019年頃からベンチャー、スタートアップ企業の社長の方とお話しする機会が増えたのですが、ビジョンや価値観が合うか、共創のイメージが持てるかということが、だんだん最初のコンタクト時に分かるようになってきました。白壁さんの場合、ピッチを見て話したら話が通じる人だろうなと印象を受けたのが最初の入り口。それで中村さんのナビゲートで実際に会ってみると波長が合うというか、初対面でも会話がすごく成立していくんですよ。もちろん僕らのアペタイト、プログラムにフィットしたということはありますけど、ロジックの部分よりも話が合うという感覚的なところが大きかったですね」

 

林「話してみると、お互い似ているところ、価値観が近いところがあるという点は大きかったと思います。例えば白壁さんも僕も毎日や毎週の区切りでジャーナリングをして内省をしていたり、新しいものを受容するのが早かったり。僕は比較的リコーの中でもいろいろな職種を経験してはいますが、それでも20年同じ会社にいますから、やはり外部のスタートアップやベンチャーの方に興味があって。TRIBUSに限らず、いろいろな接点を持つようにしているんですけど、同じ価値観を持っている人、課題感を持っている人とは話したくなるんですよね。

 

そして、いざ社内実践をやってみると仕事が早くて、毎週毎週アウトプットが出てくる。それが積み重なって、お互いの信頼関係ができてきて、一緒に気持ちよく仕事ができるようになってきた。僕はそれがすごくいいなと思った。一緒に出口まで持っていきたいし、持っていけるだろうなという感覚を持てるようになったんです」

 

――アクセラ期間が終わってから、「ここまで進める」というようなゴールを想定して動いていたのでしょうか。

 

白壁「もともとアクセラ期間が終わって『ハイおしまい』だと思っていなくて、良い意味でアクセラの終わりを無視して、『じゃあ来週もお願いします』と普通に続けていました(笑)。あくまでもTRIBUSはきっかけで、TRIBUSに伴ってプロジェクトがスタートするものだと考えていたんです。遠い未来だとしてもここでちゃんとやったら、ちゃんとなにかが生み出されるという雰囲気を感じたので、ここは張ってもいいかなと思いました。とはいえ、アクセラの終わりに大手側が一歩踏み出すことはあまりありません。だから最初に持ち出しをするのはこちら側、ベンチャー側かなと思って、どんどんこちらのリソースを出していきました。

 

しかし、最初からどこまでやるというゴールを考えていたわけではありません。『3カ月後に商品出します』と言って出せるそんな天才は世の中にはいないわけですし、『いつまでにこれだけ売上出します』なんて握るのも難しいじゃないですか。なのでそのあたりの思いを共有できていれば話はできるし、“お絵描き”では終わらないんだろうと感じてはいました。お互い本気だったのが良かったんだろうと思います。アクセラレータープログラムに参加するベンチャーには、大手企業の導入事例を作れれば十分、というところも多いと思うんですよ。でもそういうのではなく、僕らは本気で形にしたかった」

 

田中「12月にリリースを出しましたが、これが成果かっていうとちょっと違うんですよ。たまたまいろいろな都合があって今回のリリースになりましたが、これで終わりじゃなくて、第二弾、第三弾と機能追加なり、何しろ実際に活用してどう効果がでているか、というのをどんどん出していきたい。いまは実際に自分たちので使い倒して、いろいろな効果を社内や、グループとしてお客様に訴求できるようにすることが出始めているところ。この先、やっぱり自分たちで使って良いものだと、売るときにも良いなと思いますし、ここをリコーグループの武器にしていきたいな、とは思います。」


――今後の目標、方針などありましたら教えてください。

 

田中「今後かあ…長くなりそうですよね(笑)。何をどうリリースしていくか、という細かい話は置いといて、今回は『協業』じゃなく『共創』、つまりリコーがKBEの『reseacHR』を売るという単純な話ではなくて、共に新しい価値を作っていくという取り組みです。ベンチャー×大手の共創事例のプラクティス案件を作っていくつもりです」

 

白壁「ベンチャーの立場で言わせていただくと、販売はもちろんプロダクトでも自社だけでできることは限られていると思います。テクノロジーの流れでいっても、今後他社と組んでユーザーへの提供価値を最大化していくというのが今後のトレンドだと思います。その両面でやる気のあるリコーとご一緒させていただいているので、販売の確立とともに、機能面でも充実させていきたいと思います」

 

中村「短期的な話で恐縮ですけど、もうちょっとマネージャーに働きかけて社内実践を増やすのが目標です。TRIBUS的な意味でのカタリストとしての仕事はすでに終わっているんですけど(笑)、引き続きサポーターとしてKBEの応援をしていけたらと思います」

 

白壁「いや、中村さんはもうプロジェクトメンバーですよ。勝手にいつもcc入れさせてもらっていますから、引き続きよろしくお願いします!(笑)」

 

林「大きな流れはもう皆さんにお話しいただいた通りで、これからはいかに使い続けられるソリューションに育てるか、価値を感じてもらえるようにするかです。UX(顧客体験)のブラッシュアップ、提供価値を積み上げていくといったことが必要です。

広い視点で言うと、今後複業やジョブ型の働き方も増えていきます。自律的に働き、キャリアも自分で形成していくという社会になっていくと思います。これまでは組織ツリーの上司によるマネジメントやキャリア設計も、メンバーが多様化していくとますます難しくなるでしょう。researcHRが効いてくるのは、そういう部分だと思います。ぜひ引き続き、一緒にやっていきたいと思います」






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