メガネブランド「Zoff」でおなじみの株式会社インターメスティック。業界に先駆けてSPAモデル(※1)を導入し、低価格かつ多様な商品展開によりメガネをファッションとして楽しむ文化を生み出してきました。そんな「Zoff」は昨年2021年に20周年を迎え、新ブランド戦略「Eye Performance」を掲げました。研究・開発機関、“Zoff Eye Performance Studio”(以下ZEPS)を新たに設立し、目だけではなく人間のパフォーマンスを向上させるための「新しい機能」「新しい商品」「新しいサービス」を 研究・開発し、社会実装するという挑戦をしています。今回はそんな新しい挑戦の一つで、株式会社ACESと共同開発したレコメンド機能「Zoff Match」に焦点を当て、本プロジェクトの背景と取り組みを振り返ります。
※1 ファッション商品の企画から生産、販売までの機能を垂直統合したビジネスモデル
「Zoff Match」とは、スマートフォンでメガネを試着できるバーチャル試着サービス「Zoff Virtual Counter(ゾフ バーチャルカウンター)」内の機能。アプリ内で試着のシミュレーションをする際に、 AIが接客のエキスパートさながらお客様の要望に応じたお似合いのメガネをお勧めしてくれるというものです。簡単な質問に答えるだけでZoffの店舗スタッフお勧めの商品をバーチャル上で試着できるので、店舗に行けないお客様もメガネ選びを楽しめます。
新型コロナウイルスの感染拡大下においては、お客様にとってもスタッフにとってもメリットの大きいサービスですが、実は新型コロナウイルスの感染拡大以前からもオンラインでのメガネの購買を選択されるお客様は一定数いらっしゃいました。ただ、メガネの試着や接客エキスパートによるメガネ選びといった「リアルな店舗ならではのサービス」が受けられない。そこでACESとZoffは、全国の接客経験豊富なZoffスタッフのうち特に接客スキルの高い約720名の協力のもと、約17万件の顔画像評価データをもとにレコメンドアルゴリズムを独自に開発しました。
Zoff独自の購買体験をデジタル上で実現!一般的なリコメンド機能との違いとは?
アパレル・美容業界では既に、パーソナライズされた接客サービスを提供する技術がリリースされていますが、写真や体格情報(身長・体重)、嗜好の入力によって提案(正解)を導き出すプログラムが一般的です。しかしそれだけだと、多くの日本人の骨格にマッチするもの=正解と位置付けられ、個性に合わせた提案を受けられないという課題がありました。
Zoffのコアバリューは、お客様一人ひとりの個性やニーズに合わせてプロのスタッフにメガネを提案してもらえるという体験にあります。そのため、既存のレコメンドエンジンの発想を超える必要があると考えました。そこで本プロジェクトでは、Zoffならではの購買体験をデジタル上でも実現するためのレコメンドエンジン開発にフォーカスを当てました。
「エキスパート店員の知見」が鍵に 約17万件の顔画像評価データから生まれたアルゴリズム
「Zoff Match」を開発するにあたって、まずはメガネ選びのプロフェッショナルである「エキスパート店員の知見」の特定を行いました。実際に売り場のエキスパート店員の方々にインタビューを行った結果、「コミュニケーションを通じた来店者の情報の収集力」と「獲得した情報から最適なメガネを推薦する提案力」がお客様の満足度に大きく寄与していることがわかりました。そこでレコメンドアルゴリズムには、2つの推定技術を用いて似合い度スコアを算出する方式を採用しました。
本プロジェクトで用いたアルゴリズム:顔検出AI、顔タイプ判定AI、顔認識AI、顔特徴点認識AI、顧客ニーズの感性評価(スコアリング)、商品の感性評価(スコアリング)
レコメンドアルゴリズムの具体的な開発フローとしては、エキスパート店員のメガネ選びの知見をAIで再現するために、全国の接客経験豊富なZoffスタッフのうち特に接客スキルの高い約720名の協力のもと、約17万件の顔画像評価データを機械学習し独自のAIを開発。約3ヶ月で教師用データをゼロから収集しました。データ収集のためのプロジェクトマネジメントはもちろん、店頭在庫を考慮したデータ収集担当の振り分け、店舗スタッフでも簡単にアノテーションをできるようにするためのマニュアルやアンケートフォーム開発などをサポートしました。地道なデータ収集によって、関連しうる特徴量を多く入れた上でデータから学習することで、「エキスパートは暗に使用しているが言語化されていない知見」を組み込んだ推論を実現しました。
Project Member’s Voice
ZEPS開発者担当者
Zoffの考え方のベースは顧客起点です。すべてはここに集約すべきと考えています。ACESさんのミッション“アルゴリズムで社会はもっとシンプルになる“の通り、“人や社会を主役に考える“姿勢に共感しチームを結成しました。
レコメンドエンジン「Zoff Match」を共同開発するにあたり、メガネの買い方に悩まれているお客様がより簡単にメガネを選べるようになるサービスを提供できないかということを考えていました。
開発時、どのような課題を解決すべきかなどをACES様と共に議論しつつAI作成を進められたことで、利用シーンを常に高い解像度で共有しつつプロジェクトをスムーズに進めることが出来ました。
今後の展開としましては、アンケート収集したお客様の意見を元によりニーズに合わせたものにしていければと考えています。
ACES担当者
與島(Project Manager)
「Zoff Match」は、Zoffが長年大事にしてきた店舗での最高品質の購買体験を、web上にも実現していくための取り組みであると考えています。技術でこれを実現する際には、「お客さまのなりたいイメージをシンプルな質問から引き出して把握すること」と、「回答や顔の特徴を踏まえ、専属コンシェルジュのようになりたい姿を実現するメガネを提示すること」にこだわってアルゴリズムを開発しました。このサービスや今後の取り組みを通じて、簡単には店舗に来れないお客様を含めたあらゆるお客様が、メガネ選びをもっと気軽に、もっと楽しく経験することが出来るようにしていければと考えています。
市川 (Algorithm Engineer)
いただいた似合い度の評価データから単純に似合い度を推定するモデルの学習を実施すると、「多くの人に似合いやすい/似合いにくいメガネ」というメガネ側の特徴が強く反映され、「ユーザー毎の似合いやすさ」にカスタマイズされないモデルが出来上がってしまいました。そこで、よりユーザー間の似合いやすさにフォーカスするために「メガネの似合いやすさ」でデータを正規化した上で学習を実施しました。その結果、「他の人の似合い度はまずまずだけど、自分にはよく似合う」メガネがレコメンドされやすくなり、よりユーザー個人にカスタマイズされたレコメンドエンジンを実現することができました。
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