グローバルで6千社以上の導入実績をもつプロダクト分析ツール「Mixpanel」のAPACプロフェッショナルサービスリードとして日々世界中のデジタル企業を支援しているペイシャン・タン氏に、「製品主導の成長」を成功させるポイント聞きました。
「製品主導の成長」とは何か
製品主導の成長(Product-led Growth)は、ユーザー中心のストラテジーです。プロダクト自体が、コンバージョン獲得、リテンション、拡大のため主要なチャネルとなるのです。この戦略では、エンドユーザーにフォーカスしてプロダクトを作ります。ユーザーにとって、他者に共有したくなるほどの素晴らしいプロダクト体験を作り上げることに重点をおいたアプローチ方法です。
製品主導の成長戦略が最も効果的なのは、データに基づいて、その後のアクションを決定する時です。プロダクトのロードマップを決定する際には、プロダクトの主要な指標をマップ化して測定します。このようなデータ主導のアプローチをすれば、プロダクトのロードマップをただの憶測だけで決めてしまうという事態を防げます。プロダクトの状況が順調かどうかを素早く把握し、順調でない場合には、すぐに軌道修正することができるようになるのです。
「製品主導の成長」を理解する
製品主導の成長の要となるのは、顧客にとってのプロダクトの価値を理解することです。
この価値が理解できれば、行き当たりばったりに新機能を考え出す必要がなくなり、より構造的で考え抜かれたプロダクト作りができるようになります。ユーザーにとって必要でない部分に、時間とリソースを費やすことを避けられるのです。
ここでは、製品主導の成長戦略を始めるために重要な、4つのステップをご紹介します。
- ユーザーが、どのようにプロダクトを利用しているのかを知る
- どの機能を使ったときにユーザーが離脱してしまったのかを把握する
- ユーザーが、素晴らしいプロダクト体験や、ひらめきや気づきを感じる瞬間を定義する
- カスタマージャーニーを追跡し、どのようにバリューモーメント(価値を感じる瞬間)にたどり着いたかを特定する
バリューモーメントを特定するための、普遍的な方法はありません。なぜなら、各企業のプロダクト、ビジネス、戦略、目標の性質や成熟度によって、大きく異なるからです。
多くの企業は、データ不足のために、バリューモーメントを正確に定義できていません。そんなときは、必要に応じて、分析ツールを使ってみると良いかもしれません。手始めに指標を設定し、バリューモーメントの仮説をテストを行い、再認識することができます。
実際の企業のプロダクトでは、どのような瞬間をバリューモーメントと定義しているか、例をご紹介します。
- 「楽天Viber」(無料通話&メッセージアプリ)の場合:ユーザーがアプリ内でグループチャットを作成した瞬間
- 「Twitch」(ライブストリーミング配信プラットフォーム)の場合:ユーザーがライブストリーミング配信を5分以上視聴した瞬間
同じ業種のプロダクトでも、バリューモーメントの定義が異なる場合があります。例えば「Twitch」と「TikTok」は、どちらのプロダクトにもソーシャルネットワークと動画の要素があります。しかしそれぞれの性質が違うため、バリューモーメントの定義は異なってきます。
「Twitch」は、ユーザーがライブストリーミング配信を5分以上視聴した瞬間を、バリューモーメントと定義しています。一方「TikTok」では、60秒以下のショートムービーを配信しているため、ユーザーが「TikTok」の動画全体を見終わった瞬間を、バリューモーメントと定義することができるでしょう。
ユーザーをバリューモーメントに導くことは、製品主導の成長戦略においてのキーポイントです。
ではプロダクトマネージャーはどのようにして、バリューモーメントを正確に特定していけば良いのでしょうか。
バリューモーメントや、重要なプロダクト指標の特定とモニタリング方法
例えば、あなたが動画配信プラットフォームのプロダクトマネージャーだとします。そしてこのプロダクトのバリューモーメントは、ユーザーが1週間に60分の動画を視聴した瞬間と定義したとします。
このシナリオの場合、モニターすべき指標は、ユーザー1人あたりの平均視聴時間です。この数字が下がる原因を特定して対処し、またこの数字が上がるようなアクションを積み重ねてください。何がバリューモーメントに影響するのかを、より深く知る必要があることに気がつくでしょう。
このシナリオの場合、次のような疑問も生まれてくるのでしょうないでしょうか。
- ユーザーアクティベーション率:サインアップしてから、動画を再生する前に離脱してしまうユーザーがどのくらいいるのか。
- アクションまでの時間:新規ユーザーが、バリューモーメントに到達するまでにどのくらいの時間がかかっているか。時間を短縮させることはできるか。
- ソーシャルエンゲージメント指標:エンゲージメントが下がっていないか。プラットフォーム上でのシェアを通じて見つけられる動画の本数が減少していないか。
- ユーザー指標:指定したユーザーグループは、時間とともに増加しているか。増加しているユーザーは、どのような人たちなのか。新規ユーザーか、リピーターか、再エンゲージメントされた休眠ユーザーか。
特に、指標の数字やバリューモーメントに到達するユーザーが減少している場合には、このように深くプロダクト指標を掘り下げ、適切な質問を作れるかどうか確認することが非常に重要になります。
数字が下がる理由を分析し、数字の傾向を逆転させていくためのプロダクト修正を加えていかなければなりません。
プロダクト指標へアクセスする方法
Mixpanelが450人以上のプロダクトマネージャーを対象に行ったグローバル調査では、プロダクトチームの50%以上が、プロダクトに関する重要な質問に対する回答を迅速に得られていないことが明らかになりました。理由としては、質問に答えるための必要なデータにアクセスできない、必要な技術スキルがない、また分析ツールの設計がプロダクトチームのニーズに合っていないことなどが挙げられました。
強力なプロダクト分析ツールを使うと、次のようなことが実現できます。
- ファネル構築、最も一般的なユーザーフローの解明、ユーザーコホート(ユーザーセグメントとも言います)の作成を、わずか数クリックで実現すること。
- 完全にセルフサービスで、プロダクト指標を素早く追跡すること。レポート作成のために、データエンジニアやデータアナリストのサポートを待ったり、何時間もかけてSQLを書いたりする必要がなくなります。
- 他のツールと統合させることで、プロダクト指標のパフォーマンスについてのさらなる洞察を発見し、迅速に次のアクションを起こせるようになること。例えば、顧客データプラットフォーム、エンゲージメントとメッセージングツール、アトリビューションツール、クラウドデータウェアハウスなどの技術スタックと統合させることができます。
このように、プロダクト管理指標へのアクセスを強化するには、Mixpanelのようなプロダクト分析ツールを利用することも効果的です。
「製品主導の成長戦略」を成功させるためのチーム作り
プロダクトチーム内にデータドリブンな文化を構築することが、製品主導の成長戦略を成功させるための重要な鍵となります。プロダクトに関する方針決定は、顧客やユーザーがデータで物語る事実に基づいて行われなければなりません。
チャットボットのスタートアップである、Kommunicate社の共同創業者兼CEOのDevashish Mamgain氏は、次のように話してくれました。
「デジタルファーストのスタートアップ企業は、初日からプロダクト分析を設定するのがお勧めです。最初のうちは全てが実験的だとは思いますが、プロダクトの中のどの機能が効果を出しているか、また効果が出せていないのかを把握していく必要があります。これらのデータを測定できるようにしておけば、限られたリソースを適切な箇所に集中させることができるのです。」
プロダクト指標を有効活用し、プロダクトバリューモーメントを把握すること。そして、適切なツールを使ってチームを強化することが、成功には不可欠なのです。
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