今回は、シタテル株式会社CTOの和泉氏に、テクノロジーの力でアパレル産業の衣服生産を可視化する取り組みと今後の展望について話を伺った。
アパレル産業のレガシーな構造をITの力で変革する
Q1. シタテルについて簡単に教えて下さい。
シタテルは衣服生産のプラットフォーム事業を展開していて、衣服生産を「誰でも必要なときに必要なだけ利用できる」リソースとして提供できるよう事業開発を続けています。
日本全国およびアジア地域の縫製工場や加工工場、資材サプライヤーと連携して、ユーザーの要望に最適な生産リソースの割当と生産管理をワンストップで提供しています。
今は、靴を除いたほぼすべての種類の衣服生産を、最小50着から最大1万着ぐらいまで一般的な生産価格で提供できる仕組みを持っています。
Q2. シタテルはアパレル産業のどのような課題解決のために立ち上げたのでしょうか。
衣服生産が「誰でも日々の活動の中で選択して活用できる手段」となる世界を目指して立ち上げました。
シタテルは複雑な業界構造をシンプルにし、小規模から大規模までを柔軟に対応できる生産機能が提供可能な、衣服生産プラットフォームの実現を目指しています。
衣服生産は多くの人や企業が関わる必要のある複雑な産業です。歴史も長いため、個別最適な組織が乱立しており、特定の組織に所属していないと衣服生産のアイディアを実現することが困難な状況でした。また、縫製工場などの生産現場は構造的な問題に起因した負荷を引き受ける形になり低賃金長時間労働によって疲弊していました。
一方で、インターネットの普及により多様化する嗜好に対して、大量生産で安価に製品を提供する従来のアパレルモデルの限界に業界も危機感を持ち、高付加価値なものを少量多品種で生産できる機能が必要とされていました。
衣服は個人のアイデンティティを強力に表現するものです。自分の思うファッションに適したもの、体型にフィットするもの、機能性が高いもの、環境や健康に配慮したものなど、衣服によって自己の持つ課題を解決できると考えている方は多くいます。
衣服生産が身近になればこれまでにないアイディアが生まれ、生産現場にも新しい活力が生まれると思います。
プラットフォーム化によって事業者間の対話をスムーズに
Q3. アパレル生産をどのように可視化し衣服生産のプロセスをワンストップで提供しているのでしょうか?
衣服は工業製品でありながら多様性やアイデンティティに結びついた非常に複雑なプロダクトであり、文化や芸術的側面も持ち合わせています。
1つの衣服を生産するためには多くのプレイヤーが関わる必要があり、コミュニケーションが欠かせません。シタテルはコミュニケーションを最適化し、プレイヤーの間の意思決定をはやめ、適切な情報が共有されるようにすることで、生産を可視化してワンストップのプロセスを提供しています。
また、プロセスを実現するために必要なITシステムも自社で開発しています。
Q4. 企業がシタテルを導入するメリットと成功事例について教えて下さい。
複雑な衣服生産の機能を、ワンストップで「必要なときに必要なだけ利用できるリソース」として扱える用になることが、導入のメリットです。シタテルの活用の仕方はユーザーによって様々です。
インターネットライバーの方々が、フォロワーの方と「ライブで製品デザインを作り販売する」という企画で、シタテルが生産をサポートしました。柔軟な生産ができる機能を最大限活用いただいた事例だと思います。
また、個人でサンドイッチの形状をしたポーチを作って小規模で販売していた方については、人気が出たおかげで制作に追われ疲弊していたところ、シタテルのプラットフォームを使い、時間を有効に活用いただけた事例もあります。
一般的には、既にアパレル事業をされている比較的大手の企業であれば、新しいブランドを立ち上げたい、アイテムラインナップを作りたい、これまでにない切り口の商品にチャレンジしたいといった場合にご活用いただくことが多いです。
中規模から小規模の場合は、生産、及び生産管理全体をアウトソーシングするためにシタテルを活用し、社内は商品開発や顧客対応に集中するという使い方をしていただいています。
アパレル以外の企業の場合、従業員の働きやすさに貢献できるオリジナルのユニフォームや企業アイデンティティを表現できるノベルティの作成などでご活用いただいています。
Q5. 最後に今後の展望について教えて下さい。
まずは多くの方にシタテルを知っていただき、様々な衣服生産にプラットフォームを活用していただけるように事業開発を行なっていきます。国内のみならず海外の縫製工場やサプライヤーとの連携や、英語でのサポートを通じて海外に向けた生産も対応しています。
さらに、今は生産管理などのマネジメント業務をシタテルの人員だけが行なっていますが、今後はこのようなユーザーと生産の間の中間業務にも他社が参入いただけるよう、プラットフォームを開放していくクラウド計画を進めています。
これまで衣服生産を業務としてこられた商社やOEM企業の方々のノウハウを適切なユーザーや生産者と結びつけることで、より柔軟な衣服生産プラットフォームへの進化を目指していきます。
企業ブランド形成のために、オリジナルユニフォームやCIを表現するノベルティなどにも活用できるシタテル。
プラットフォーマーとしての今後の動向に注目していきたい。
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