・惑星深部から伝わった音
火星の表面に地震計が設置されたのは2018年12月のこと。当初捉えた音は惑星の風の音として公開され、震動音とはみなされていない。しかし、6日に発生した音は明らかにこれとは異なり、惑星の深部から沸き起こったものと断定された。直近では3月14日、4月10日、4月11日にも同様の動きを観測。ただし、6日の音と比べてかなり微弱なため、精査が必要だとのこと。InSightの地震計はSEIS (Seismic Experiment for Interior Structure)と呼ばれ、強力な断熱バリアによって惑星の極端な気温変化や強風から保護されている。高感度な広帯域センサーを擁し、微弱な音も正確にキャッチすることができる。
研究チームは火星の地震は地球とは異なる理由で起る、と考えている。地球上では地下の構造プレートのずれによって揺れが生じるが、火星と月は構造プレートを持たない。火星の場合、隕石の衝突時など何らかのストレスが惑星にかかったときに発生する継続的な冷却と収縮が原因だ、と推測されている。
・“火星の地震学”確立か?
NASAによる火星の地震計測計画は今に始まったことではなく、1970年代のバイキングミッションから続いている。当時地震計は搭載していたもの計器自体は着陸船に乗せられたままだったため、震動音どころか意味のある信号すら拾うことができなかった。今回の結果はまさに長年の苦労の賜物。報われた思いを表すかのように、NASAジェット推進研究所の地球物理学者でありInSightミッションの主任研究員であるBruce・Banerdt氏は次のように述べている。「InSightの任務はアポロミッション以来の科学を証明すること。震動音を検知したことで“火星の地震学”という新たな分野を開拓できた」。
souce by SPACE.com