DASH素材(DNA-based Assembly and Synthesis of Hierarchical)と呼ばれるバイオ素材を利用したこの人工物は、代謝能力を持ち独自の方法で移動もする。
人工代謝システムの発明は、ロボット工学の新たなフロンティアを開く可能性がある。
・ナノスケールの生物分子を成長させた人工物
コーネル大の研究者らは、DNAを構成する塩基配列を持つ素材を数十万倍に増殖させた。ナノスケールの分子は最終的には数ミリメートルにまで成長。これを、マイクロ流体装置に入れた。反応溶液の流れにさらすことで、素材は新しい生体分子を合成し、前端が成長し後端はバランスよく分解。これにより、自律的に前方に移動した。
つまりこれは、生体分子から動的な機械を作るための新しい手法の発明ともいえる。
・寿命の延長により自己複製能力を備える可能性も
この素材は、2サイクルの合成と分解で寿命を終える。今後、寿命が延長されることになれば、自己複製して新しい世代を残す可能性も出てくる。そうなれば、自己進化により複雑なものも表現できるようになるかもしれない。理論的には、後続の世代が数秒以内に複製されるような設計が可能とのことで、そうなれば実験室のなかでの高速の進化が実現する。
また研究者らは、素材に環境刺激を認識させ、たとえば光や食べ物を自律的に見つけ出す方法や、有害物質を回避する方法を模索しているとのこと。
人工素材に代謝をプログラムできたことは革新的。現段階での設計はまだまだ原始的なものだが、将来的にはさらに生命感がある素材に発展するだろう。
参照元:Cornell Chronicle