MITメディアラボのOpen Agricultureイニシアチブ(Open Ag)の研究チームは、植物学と機械学習を活用することで、かつてないほど美味しいバジルの栽培に成功したようだ。
このOpen Agの目標の1つは、農業テクノロジー(アグリテック)における技術のオープン化。ゆくゆくは同イニシアチブのハードウェア、ソフトウェア、およびデータを自由に利用できるようにする。
・機械学習によりバジルの風味と栄養価を最大化
MITの倉庫内プラントには、光、温度、湿度などの環境条件を緻密に制御できるように設計されたコンテナがある。そこで栽培されたバジルの味を分析した結果、1日24時間植物を光にさらすことが最良の風味を生み出すことがわかった。風味にはバジルの葉に含まれる特定の分子が関わっている。研究チームはプラントの条件を変化させて、そこから得られたデータを機械学習アルゴリズムに入力。何百万もの光と紫外線の照射時間の組み合わせを評価し、風味に関わる分子を最大化する条件セットを発見したようだ。
同分子には、貴重な栄養素と抗酸化物質が含まれている。また、バジルは血糖をコントロールするのを助ける化合物を含むことが知られている。
こうしたことから研究チームは、風味を増すだけにとどまらず、糖尿病などの疾病対策に貢献する化合物を含むバジルの開発に取り組んでいるとのこと。
・環境変数の調整により植物のポテンシャルを引き出す
さらに研究チームは、バジルに限らず、さまざまな植物栽培における環境変数を調整することで、植物のポテンシャルを引き出す研究を進めているようだ。ある研究では、植物を昆虫の殻の中にあるポリマーにさらし、これにより防虫効果のある化合物を含んだ植物が開発されている。
また研究チームは、抗癌化作用のある化合物「ビンクリスチン」や「ビンブラスチン」の供給源となる薬用植物の収穫量を増加させることも目指している。
・アグリテックのデータをオープンに
このように、センサーなどから収集したデータを機械学習に用いて農業を最適化する取り組みは、日本を含む世界で推進されている。ただ、まだまだデータのオープン性に課題があり、企業や研究機関が試行錯誤したデータや、機械学習のためのタグ付けされたデータのほとんどはクローズド。データ収集基準の制定も遅れている。
こうしたアグリテックにおけるデータのオープン性を切り開いていくのがOpen Agの狙いだ。また、ハードウェア・ソフトウェアの開放もおこなっていて、生育条件が制御できる小型の「パーソナルフードコンピュータ」を世界65カ国の高校生や中学生に配布し、データやアイデアを共有できるようにしている。
生育条件の制御システムなら、天候にも左右されない研究ができて、アグリテックの加速が期待できそうだ。
参照元:The future of agriculture is computerized/MIT News