このダークマターの候補となっている素粒子が「アクシオン(axion)」で、電気と磁気の基本法則を説明するうえでのカギとなる性質を持つことからも、その存在が期待されている。
ヒッグス粒子を観測したCERNなども、アクシオンを見つけようと試みているのは有名だが、このほどMITもアクシオンを検出すべく新しい手法による実験をおこなった。
・磁場増幅装置「ABRACADABRA」を開発
アクシオンの検出には、非常に強力な磁場を持つ中性子星の性質を利用する。もしアクシオンが存在する場合は、中性子星の磁場により、電波に変換されると理論づけられている。電波であれば専用望遠鏡などで観測可能で、間接的にアクシオンの存在が確認できるというわけだ。実験では、中性子星の替わりにドーナツ型の磁場増幅装置を使う。「ABRACADABRA」と呼ばれるこの装置は、絶対零度に近い状態に置かれ、わずかな振動の影響も受けないように細い糸で吊り下げられるなど外部からの影響をほとんど受けないように設計されている
もしアクシオンが存在すれば、理論的にはドーナツの中心に兆候となる磁場が観察できるはずだ。
・今後は装置をバスケットボール大に
ところが実際は、アクシオンの兆候は観察できなかった。MITの研究チームが2018年7~8月にかけて継続しておこなったサンプリングからは、0.31~8.3ナノ電子ボルト(陽子の質量の約5分の1)の質量範囲内における、100億分の1以上の割合での電気、磁気への変換は検出されなかった。
この実験でアクシオンの兆候が見られないということは、実験で設定した質量範囲内にアクシオンは存在しないか、あるいはこれまで考えられていたよりも電気や磁気への影響がさらに小さいということになる。
さらに小さくて影響力の少ないアクシオンを探すために、研究チームはバスケットボール大の装置を開発して実験を継続していく予定だ。さらにはその後は、装置をコンパクトカー大にスケールアップすることも検討していて、これにより検出の可能の可能性も高まる。
アクシオンが検出されれば、ヒッグス粒子以来の世紀の大発見となり、次回実験結果に注目したい。
参照元:Dark matter experiment finds no evidence of axions/MIT News