今回MITとNASAを中心とする研究チームが開発したのは、翼が飛行中に変形する飛行機だ。
・飛びながら翼が形を変える
従来の飛行機の翼は、補助翼のような別々の可動面で飛行制御を行っており、離陸や着陸、巡航時などの各飛行段階において最適な翼形状になっていない。そこで研究チームが開発したのが、飛びながら翼全体または翼の一部が形を変える翼だ。
この翼は、何百個もの小さな同一部品を組立ててつくられた。その構造はほぼ空洞で、格子の密度は1立方メートルあたり5.6kg。同じ剛性を持つゴムの密度の約0.4%だ。
また、格子枠組を形成する小さな部分組立体をポリマーに似た材料の薄層で覆ったことで、超軽量を達成した。
そして、翼変形にはエネルギーが必要になるが、研究チームは、空力荷重条件の変化を自動調整して受動的に翼を再構成させるプロセスを開発し、エネルギー効率を高めた。
・飛行船や宇宙構造物、風力タービンの翼に適用できる可能性
数年前に研究チームはこの翼の基本原理を実証し、約1メートルの翼を作成した。今回は約5倍の長さで、1人乗りの飛行機の翼に匹敵するサイズとなっている。各部品は、ポリエチレン樹脂を用いた射出成形を使用して、わずか17秒で製造。また、今回の飛行機は研究チームが手作業で組立てたが、小型の単純な自動組立ロボットで簡単に組立てできるように設計されており、産業規模生産に近いレベルとなっている。
この翼は、大きく軽量で硬い構造物のコスト削減と性能向上において可能性を秘めており、最も有望な近い将来の用途は、飛行船やアンテナのような宇宙構造物における使用だという。
さらに、軽量で現場で組立てできることから、風力タービンの羽根などへの適用も可能だと研究チームはみている。
さまざまな用途の可能性を持つ、変形する飛行機の翼。今後の開発が楽しみだ。
MIT