特筆すべきは、従来、1次元でしかできなかった測定を2次元に拡張したことだ。
同技術は、ニューロン発火のマッピングや新しい磁性材料の評価、量子物理現象の探索など、さまざまな用途に役立つ可能性があるという。
・NV中心によるセンシング技術を応用
ダイヤモンドの結晶の、炭素があるべきところを窒素で置換し、その隣りに空孔があるもの(NV中心)は、電子を1個捕獲して負に帯電した状態を保つことができる。この状態で起こる窒素原子の核スピンの向きを1量子ビットの信号として扱い、磁気センサーとして利用する。
NV中心によるセンサーは極めて正確な反面、単一の次元の測定しかできなかった。
研究者らは、スピンの軸をわずかにずらすことで生じるゆらぎを波形に変換し、数学的に計算することで横方向成分の大きさを求めることできることを発見。1次元と同程度の精度で2次元の測定が可能になり、ナノスケールの空間分解能を発揮できた。
・光の強さがスピンの状態を示す
結果を読み取るために、研究者らは緑色レーザー光の照射システムを備えた共焦点顕微鏡を利用した。緑色レーザーを当てることでNV中心が発光し、この強度がスピンの状態を示す。暗ければ1、明るければ0、中間なら0~1の間のどこか…といった具合で、スピンの状態を読み取れるという。
同技術では、極低温を保つ必要がある量子演算システムとは異なり、室温で機能するといった特徴を備える。
応用することで、ニューロン発火を調べる際には、信号の強度だけでなくその方向も検出することが可能になる。同様に、データの記録などに用いる新しい磁性材料をテストする際にも、より詳細な測定が可能になる。
参照元:Quantum sensing method measures minuscule magnetic fields/MIT News