”時間の逆行”というと、光速を超える方法を思い浮かべるかもしれないが、今回用いられたのはこれとは違った方法だ。
研究チームは、物理学の基本原理である「熱力学第二法則」から外れた現象を量子スケールで作り出したのだ。
・85%の確率でエントロピーが減少
インクを水に垂らすと時間とともに拡散していく。このように、熱力学第二法則では、エネルギーを加えない条件下において、物質の乱雑さが増していく(エントロピーの増大)ことになっている。今回研究チームは、量子スケールでこれを逆転させることに成功した。
複雑系から単純系へと移行させることを可能にするアルゴリズムによって、量子情報の基本単位である3量子ビットを、数分の1秒前の状態に戻した。
実験では、2量子ビットで約85%で、3量子ビットで約50%の確率で、同現象が発生したとのこと。
・ブレイクショットの直後に球が整列
実験で起きたことをビリヤードに例えると、ブレイクショットの直後に球が元の状態に戻ったようなものだが、じつは量子の世界においては、ヒトが観測するまで球が盤上どこにあるかは決まっていない。今回開発されたアルゴリズムでは、未確定状態にある球の位置の可能性を制限したかたち。当然のことながら球数が増えるに連れて、また時間の経過に伴ってこうした操作が極端に難しくなるため、同実験が即タイムマシンの開発につながることはない。
また、MIT Technology Reviewによると、”コンピュータ上でシミュレーションの方向を変えただけの現象に、本質的な意味は見い出せない”といった専門家の意見もあるようだ。
研究チームは、研究を進めるでより効果的な量子の操作方法を探っていく計画を示していて、量子コンピュータの精度向上など実用的レベルでの成果に期待したい。
参照元:Physicists Just Reversed Time on The Smallest Scale by Using a Quantum Computer/Science Alert
SCIENTISTS HAVE REVERSED TIME IN A QUANTUM COMPUTER/Newsweek
No, scientists didn’t just “reverse time” with a quantum computer/MIT Technology Review