・AIを用いた新たな診断法を導入
ADHD は神経発達症の一つで、気が散りやすい、忘れ物が多い、間違いが多いといった不注意や、落ち着きがない、我慢するのが苦手というような多動性・衝動性が特徴。発症の要因としては、遺伝的な要因と脳発達要因とされているが、その仕組みと関係性についての明確な答えは見つかっていない。近年、世界中で種々の神経発達症に対し人工知能(AI)技術を用いた新たな診断法、 治療法の開発を目指す研究プロジェクトが開始。これまで、研究代表者の友田教授らのグループは ADHD 発症を巡る遺伝的要因と脳発達要因を MRI(磁気共鳴画像法)による脳構造・ネットワークの把握によって解明してきたという。
・国際的な指標としても応用可能か
今回の研究では、米国の精神疾患の診断・統計マニュアルに基づき児童の脳をMRIで撮像。全 148 の脳領域ごとに脳皮質の厚みと 面積のデータを取って、「サポート・ベクター・マシン」という機械学習の技法で解析。その結果、148 領域のうち眼窩前頭皮質外側など16領域の皮質の厚み、11領域の皮質の面積にADHDの特徴が現れることが判明したという。
各領域の厚み、面積の値の個々にADHDかどうかの境界値が明確にあるわけではないものの、この成果により16領域、11領域の値の全体像から74%~79%の精度で識別できることを確認されたという。
今回の成果は国際大規模データベースとも73%の精度で認識されることが確認されたため、将来、国際的な診断指標として応用できる可能性が示唆されているという。
福井大学