現在のアーキテクチャを単にコピーして増やすだけでは、各量子の振る舞いを高度に制御しつつ量子ビット数を増やすことは不可能だ。
Google AI Quantumチームはこの課題を解決するための第一歩として、第1世代の極低温CMOSシングル量子ビットコントローラを発表した。
・Bristleconeは量子ビットごとに配線
制御信号の形状および周波数をいかにうまく定義するかが、量子コンピュータの性能に大きく影響する。演算をおこなうにはアナログ信号を各量子ビットに伝える必要がある。このためBristleconeでは、低温維持装置(クライオスタット)内で個々の量子ビットに同軸ケーブルを接続している。このアプローチはBristleconeクラスの量子プロセッサでは理にかなっている。ただ、量子ビットあたり2つの制御配線を必要とし、物理スペースを消費することから量子ビットのスケール拡大に耐えられない。
配線の数を減らすために、デジタルからアナログへの信号変換を担うD/Aコントローラを量子プロセッサに近接させる方法がある。ただ、各量子ビットを制御するために使用されているD/Aコントローラは、量子ビットあたり約1ワットの熱量を消費し、これがクライオスタットの冷却能力を圧迫してしまう。
・低消費電力の量子ビットコントローラ
こうした課題を解決するべくGoogle AI Quantumチームは、マサチューセッツ大学の研究者と共同で、クライオスタット内から量子ビットを制御するためのカスタム集積回路(IC)の開発に着手した。同ICは極低温環境で動作し、量子ビット制御用のデジタル信号をアナログ信号に変換するように設計されている。重要なのは、クライオスタットの加熱を防ぐために、低消費電力を実現したことだ。
同ICを搭載した極低温CMOS量子ビットコントローラは、3ケルビン(-270.15℃)で動作し、サイズはわずか1 x 1.6ミリ。消費電力は2ミリワット未満で従来のものの約1/1000となる。
まだ単一量子ビットにしか対応していないため、今後は量子ビット数を増やすことや、エラー率を定量化することが課題となる。
参照元:On the Path to Cryogenic Control of Quantum Processors/Google AI Blog