ニューヨークのロチェスター工科大学(RIT)の研究チームは、スマート便座を通してこれに貢献するかもしれない。
研究チームが開発したのは心臓の健康状態をトラッキングするものだ。TOTOやPanasonicはすでにIoTトイレをリリースしているし、Googleもトイレの健康モニタリングシステムで特許を取得しているが、これらのトイレット技術は、排泄物の分析に焦点を当てている。
これに対してRITのものは便座のセンサーを使ってバイタルサインを分析する。
・毎日の行為を通して健康状態をトラッキング
RITが開発した技術は、毎日の行為の中で心臓の健康状態がトラッキングできて、時間や手間がかからない。患者の心臓の健康状態が悪化していることがわかれば、医師の診察を受けるタイミングを早期に発見できる。便座のセンサーは、心臓病患者の血圧、血中酸素濃度、その他心臓のデータを正確に取得してクラウドにデータを送る。
いまのところFDA承認の心不全モニタはCardioMEMS HF Systemのみ。これですら、心臓近くの動脈に小型の圧力センサーを埋め込み、1日1回ベッド型の装置に横たわってデータを計測しなければならない。
それと比較してRITのスマート便座は手軽で、心臓の健康状態悪化の兆候を早期に捉えて、患者の入院日数を減らすのにも貢献するだろう。
・心臓の活動を測定する3つのセンサーを搭載
シートには3つのセンサーが備わっている。心臓の電気的活動を測定する心電図(ECG)および血中酸素濃度を測定するためのセンサー(PPG)、そして心臓の運動による体の微細な揺れを測定する弾道心電図(BCG)だ。弾道心電図に関しては、心エコーの開発とともに衰退してきた技術だが、小型の電子部品に搭載できることから最近になって再び注目が高まっている。
RIT開発のスマート便座でも、血液の一回拍出量を測定するのにBCGを採用している。
38人の健康な被験者および111人の心臓病患者からの実験では、一回拍出量の測定および心臓の健康の指標を分析。結果は3つの心臓測定値すべてで、病院の機器と同程度の精度だった。
今後はスマート便座の製品化および、がん患者の化学療法や放射線療法による心臓のダメージの早期兆候の検出を試みるということで、実用への期待がかかる。
参照元:Monitoring Heart Health, One Toilet Seat at a Time/IEEE Spectrum