この新しい手法は、脳の組織を拡張して高い解像度でのイメージングを可能にする技術と、スピーディな3D顕微鏡技術とを組み合わせたものだ。
同手法により、脳内の大規模回路をマッピングすると同時に、個々のニューロンの機能についての洞察を得ることができる。
・ナノスケールの生体分子構造を視覚化
Science 1月17日号に掲載された論文の中では、ミバエとマウスの脳の広い範囲を、従来よりもはるかに速く繊細にイメージングできることが示されている。拡大顕微鏡法と格子顕微鏡法とを併用することで、ナノスケールの生体分子構造を見失うことなく大規模なイメージングが可能になったという。
拡大した組織サンプルをイメージングすると、1サンプルあたり最大で数十TBという膨大な量のデータが生成される。このため、データをより小さなチャンクに分割して分析し、つなぎ合わせるための高度な並列計算による画像処理手法が考案された。
・脳組織のスピーディな分析が可能に
この手法により、従来数年かかかっていたシナプスの数/密度および、ニューロンの周りにある鞘、ミエリンの変形パターン分析がほんの数日で可能となった。また、ニューロン内部の細胞小器官、ミトコンドリアやリソソームを同定して形の変化を観測できた。
さらに脳組織を分析・比較もでき、研究では脳領域をまたいで存在するミバエの嗅覚回路をたどり、すべてのドーパミン作動性ニューロンをイメージング。脳全体のすべてのシナプスを数えることに成功している。
今後の研究では、記憶形成と想起や、感覚入力と行動、感情と意思決定の分析に同手法を用いるという。また、神経科学領域以外では、HIVが免疫システムをどのように回避するかを研究していく計画。
ほかにも、癌細胞と免疫細胞の相互作用の研究などにも応用できるようで、生物の機能解明を加速することが期待される。
参照元:Mapping the brain at high resolution/MIT News