いまでも新たなユースケースが日々創設されているし、ブロックチェーン人材の需要は増すばかりだ。このように、ブロックチェーンに対する期待がつのる一方で、"ほんとうに役立つのか"との懸念も広がりつつあるようにも見える。
ブロックチェーンに対しての評価が混迷が増すなか、マッキンゼーによる見解が記事に示された。その要旨は以下のようなものだ。
・ユースケースの多くは実用レベルに程遠い
2016年までに金融業界を中心にブロックチェーンへの投資が急増した。決済プロセスでの仲介を省こうとした金融業界に続き、保険業界は契約の自動化/効率化をもくろみ、公共機関は公共記録の透明性とアクセシビリティを高められると考え、シェアリング業界はスマートな決済と利用記録に分散型台帳の活用を試みた。また、ブロックチェーンのポテンシャルを鑑みた規制当局は、課題に目を向けるのではなく、議論していくことを前提にした比較的前向きな方針を打ち立ててきた。
ところが2017年末には、業界の人々は、ブロックチェーン技術が未熟すぎるゆえにエンタープライズレベルのアプリケーションに対応できない、またはそもそも不要なことに気づいていしまう。
・メリットに増して新たな課題も
ブロックチェーンから得られると期待していたメリットには、じつのところ既存のクラウドソリューションからでも得られるものも多く、場合によってはシステム代替により発生する課題がメリットを上回る。また、ブロックチェーンのメリットのひとつはデータの公開性だが、そもそも業界のメインプレイヤーたちにとって、データを公開するメリットが薄い場合、企業間の協力が難しい。またデータの標準化にも多大な労力を要するだろう。
分散化された統治機構もメリットばかりでなく、意思決定がむつかしいことや自己責任の重みが増すなどの課題がある。
そして技術的な課題。例えば2020年までに200億を超えるデバイスがインターネットに接続すると推定されているが、ことブロックチェーンに関しては、ブロックへのデータ保存容量/処理速度の問題から、データの急増に対応するのが難しい。量子コンピューティング技術の発展に伴うセキュリティ面での懸念もある。
・必要性を公正な視点で判断することが重要
ただ技術に関しては、Cardano(カルダノ)のような量子コンピュータによる攻撃に耐性のある技術もでてきており、多くのブロックチェーン技術が2~3年以内にアップデートされていく可能性がある。また、いくつかの有望なユースケースがあることも確かで、例えば、サプライチェーンにおける食料品や製品の追跡/産地証明といった活用や、貿易における煩雑な確認/契約作業の自動化や積み荷の追跡などがそれにあたる。
分権化、契約の自動化、透明性・アクセシビリティの拡大、セキュリティ強化…など、ブロックチェーンは概念的には、さまざまな業界に革命を起こす可能性を秘めている。ただ、いまだに大規模なアプリケーションが登場しておらず、構造的な課題に直面していることも念頭に置かなければならない。
記事では「オッカムの剃刀(不要な前提を削ぎ落とすことの重要性を表す)」との表現が何度か用いられており、ブロックチェーンを活用しようとする際は、既存のソリューションの活用よりもメリットがあるかどうかを公正な視点で判断し、そうでない場合は棄却することの重要性が説かれている。
参照元:Blockchain’s Occam problem/Mckinsey.com/Our Insights