・演奏ロボットからイノベーション型へ
トヨタがロボットの開発に着手したのは、1980年代から。産業用ロボットに始まり、やがて、人間と共生するヒューマノイドロボットへと移行していく。第1弾は、楽器を演奏するロボット。人工の唇、肺と動く指で、トランペットを吹くことができる。このときは、プログラミングに基づく位置制御の正確さなど、ひたすらロボティクス技術を追求していたようだ。その後同社の目標は、さらに現実味を帯びてくる。来たるべき高齢化社会に備え、お年よりや、障害者の暮らしに寄り添った製品をめざすようになる。その理念を形にしたものが、ヒューマノイドロボットT-HR3だ。コア技術は、トルクサーボモジュール。ロボットの関節を柔軟に制御しつつ、しなやかな動きを実現し、ロボットが外から受ける力を、操縦者に伝えることができる2017年には、国際ロボット展に出展し、大きな反響を得た。
・より現実味のある生活支援型が誕生
イノベーション型のT-HR3に対し、より直感的で家庭寄りのプロダクトとして開発されたのが、生活支援ロボットHSRだ。上部にビデオスクリーンを備えた、車輪付きの格納式アーム型ロボットで、落とした物を拾ったり、棚にある物を持ってくることができる。コントローラー代わりにタブレットを使うので、操作も簡単だ、トヨタでは、HSRをホームヘルパーとして、介護・医療分野に導入したい、と考えている。具体的なスケジュールは不明だが、ロボットプログラムの元最高責任者である杉山 雅則顧問は、2〜3年ほどで、食事の片付けや配達といった簡単な作業を行うことができるだろう、と語っている。
同社は3年前、AIを中心としたトヨタ研究所をシリコンバレーに開設するため、10億ドル(約1100億円)を費やした。昨年には、新興企業と新しいロボット技術に投資する目的で、さらに1億ドル(約110億円)の資金を投入。今年に入ってから、意思決定を迅速化し、開発期間を短縮するよう、パートナーロボット部門を再編成している。
同社のロボット開発に賭ける熱意は、投資金額から見ても明らかだ。あとはいかに早く、市場へ導入できるか。そうなるには、もう1つ、ハードルを越えなければならない。それを示唆するのが、杉山氏の言葉。「まず、ロボットが人間の感情を理解し、共感できるようになること。ロボットが人間の友達になることです」。
souce by Industry Week