そんな問題を解決するために誕生したのが、「PAN(パン)」だ。日本を訪れる外国人観光客が、スムーズにコミュニケーションを取れるよう開発された、音声チャット翻訳サービス。ユーザーが、チャット画面に母国語で文字入力した言葉が、そのまま日本語の音声に翻訳され、相手に伝わる。同じように、相手側の日本語も翻訳した後、観光客の画面に表示される仕組みだ。
開発元は、インターネットサービスの企画・運営を手がける東風津梁(とんぷうしんりょう)社。代表取締役社長の津島 越朗(つしま えつろう)氏が、取材に応じてくれた。
・電話で気軽に利用できる無料の翻訳サービス
Q1:まずは、このようなサービスを提供するに至ったきっかけから、お聞かせください。私自身が忙しく、電話をしなければならないのに、なかなかできませんでした。そのたびに電話は、場所やタイミングの制約が、極めて大きいコミュケーション手段だな、と実感していたのです。(中略)Q2:市場にはさまざまな翻訳サービスが存在しますが、それらとの決定的な違いは、どこにあるのでしょうか。「PAN」ならではの特長(強み)をお聞かせください。
私の周りにも、電話が苦手な人が、一定以上の割合でいるように思えましたので、具体的な方法を模索しました。その結果、技術的には実現できそうなこと、同時に翻訳機能を組み込めば、海外の方にも日本の電話を母国語のままで、使ってもらえることがわかりました。
未だに、ネット予約普及率が高いとは言えない日本の状況や、英語で応対できる人が少ないこと、今後外国人が増えることを踏まえれば、ニーズがあると思われます。むしろ、現状の代替手段の数や、ターゲットの母数を考えると、外国人向けの価値提供がメインになるでしょう。それで、サービスの提供に踏み切ったのです。
「PAN」は、人手を介さず、無料の翻訳電話ができるという意味では世界初で、今のところ唯一のサービスです。同じニーズを満たす既存のサービスと比較すると、「PAN」ならではの特徴は5つある、と思います。
まず、電話で利用できること。外国人が固定電話にスマホを押し当てて、翻訳を試みるシーンを目にすることがありますが、感度の問題もあり、電話という通信手段では成立していません。
次に、無料であること。また、電話番号さえわかれば、国内のどこにでもかけられますし、海外からでも追加料金なしで日本に電話をかけられるので、旅行の前に予め予約しておくことも可能です。最後は、カテゴリ別に、予め定型文が用意されていること。事務的な連絡をメインに想定して、手入力の必要をなるべく少なくしました。
・最初に流れる自動音声の内容にひと苦労
Q3:開発に当たって最も苦労したのは、どのようなところでしょうか。電話がつながったとき、趣旨説明のために、最初に相手側に流れる自動音声の内容を、チューニングしたところでしょうか。(中略)丁寧な説明(30秒超)は長すぎて逆効果、シンプルな説明(10秒未満)は趣旨の理解に不十分、という状態で、どうすればできるだけ短く、効果的に趣旨を伝えられるか、試行錯誤しました。Q4:正式リリースは、いつ頃になりますか?それまでの展開と併せて、教えてください。
そこで、飲食店で実際に予約を取る人々に、何も説明せず、自動音声を聞いてもらって(中略)意見を収集し、メッセージ要素を分解しつつ、取捨選択しました。その結果、現在の19秒程度の形に、落ち着いたのです。
来年2月上旬頃を、予定しています。それまでに中国語(簡体字)版をリリースし、1月下旬には、英語版をリリースするつもりです。
言葉が通じなければ、旅の楽しさは半減する。それは、世界中、どこの国でも同じだ。アプリ1つで、自分の意志が伝わる「PAN」のようなサービスは、今後、国内の観光事業を盛り上げていく上で、必要不可欠なものとなるだろう。翻訳精度の高さも、お墨付き。専用サイトに、クオリティテストが設けられているので、ぜひお試しあれ。
音声チャット翻訳サービス PAN