装置は2重構造になっていて、上層が太陽光パネルの素材、下層が冷却のための新素材となっている。光のまったく別の性質を利用することで、上でエネルギーを吸収し、下では逃がすということをやっている。
発電しながら冷却することで、建物を冷やすための電力を節約することが可能になり、効率よく電力を生み出すことができるだろう。
・空気のブランケットに空いた小さな穴を熱がすり抜ける
装置の太陽に面する層には、特段新しい技術があるわけでなく、従来の太陽光パネルがやるように、一般的な半導体素材で光を電気に変換する。研究者らが開発したのは下層のシステムで、素材には、屋根からの放射冷却を通して大気中に熱を逃がすようなものが用いられている。
放射冷却では、赤外線によって熱を放出しているが、通常のやり方ではうまくいかない。なぜなら、大気が厚いブランケットのように働いて熱のほとんどは閉じ込められてしまうからだ。
じつは、この厚い大気ブランケットには小さな穴が開いていて、今回開発の冷却技術は、この穴をする抜けるという特定の赤外線波長の性質を利用したもの。
・ビルの熱を特定の赤外線波長に変換
研究チームは、ビルの熱を特定の赤外線波長に変換する新素材を開発。まず建物内部の空調システムに利用し、冷却に要する電力節約を実現した。今回は同じことを建物の屋上でおこなう。太陽光パネルで発電しながら建物の熱を逃がすことで、一石二鳥で電力が節約できるというわけだ。プロトタイプを設置したところ、デバイス下層の温度が屋上の空気よりもかなり低くなり、熱の放出に成功したことが判明した。
この実験では通常の太陽光パネルのような金属箔を施さず、赤外線が逃げないようにした。このため実際には発電はおこなわれず、今後は研究チームは金属箔なしで機能する太陽光パネルの開発を進めることになる。
参照元:Stanford researchers develop a rooftop device that can make solar power and cool buildings/Stanford News