健康食品や化粧品開発のイメージが強い同社だが、バイオテクノロジー企業として新たな取り組みを始めている。それが“バイオ燃料”だ。
・ユーグレナ、日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラント設立
株式会社ユーグレナは、横浜市鶴見区の京浜臨海部において日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントを2018年10月31日に竣工する。横浜市、千代田化工建設株式会社、伊藤忠エネクス株式会社、いすゞ自動車株式会社、ANAホールディングス株式会社、ひろしま自動車産学官連携推進会議の協力のもと、SDGs (国連サミットにて採択された持続可能な開発目標)※1 の「GOAL(目標)13:気候変動に具体的な対策を」に貢献する取り組みとして、日本をバイオ燃料先進国にすることを目指す『GREEN OIL JAPAN(グリーンオイルジャパン)』の取り組みを開始するという。・新たなバイオ燃料で世界の環境問題へ貢献
バイオ燃料は、既存の化石燃料と比べると、CO2排出量が少なく、再生可能な液体燃料であり、欧米を中心に世界中で普及が進んでいる。一方、これまでバイオ燃料というと、トウモロコシやサトウキビ、大豆、パームといった作物を主な原料としており、弊害として食料問題や森林破壊問題などが生じている。ユーグレナが製造するバイオジェット・ディーゼル燃料は、ミドリムシ油脂や廃食油などを主原料としているのが特徴。また、化石燃料を使用している既存のエンジンに問題なく適用可能であり、水素や電気といった代替エネルギーへの移行に必要とされる多大なインフラコストもかからないのも大きなメリット。既存インフラを維持しながら効率的な普及が見込める。
・日本のCO2削減のため、バイオ燃料を活用
2015年9月に国連サミットで制定されたSDGsや、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みである「パリ協定」など、国際的な協定に日本も加わっている。2030年までにCO2を主とする温室効果ガスの排出を2013年の水準から26%削減することが日本の目標だ。自動車や飛行機にバイオ燃料を導入する動きは世界的に広まっているものの、日本では、バイオジェット燃料を使用した有償飛行は実現していない。わが国は、世界主要国に対してバイオジェット燃料の導入が遅れているのが現状だ。
また、自動車用バイオ燃料については、米国では2022年までに約18% ※2、EU各国では2020年までに10%、自動車用燃料全体の内訳として使用することが目標 ※3とされているが、日本ではガソリンとディーゼル代替のバイオ燃料の導入目標は2022年までで年間数%程度 ※4に留まっている。
・横浜市、千代田化工建設、いすゞ自動車などと協力
同社では、2015年12月1日に横浜市、千代田化工建設、伊藤忠エネクス、いすゞ自動車とANAホールディングスの協力のもと、2020 年に向けた国産バイオジェット・ディーゼル燃料の実用化計画を始動。2017年6月1日に日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料の実証プラント建設に着工し、2018年10月31日に竣工を迎えた。2019年春より本格稼働し、微細藻類ミドリムシ(学名:ユーグレナ)や廃食油を主原料としたバイオジェット・ディーゼル燃料の製造を開始する予定だ。
また現在、2020年目途の国産バイオジェット燃料有償飛行と2019年夏の次世代バイオディーゼル燃料供給開始を目指している。今回完成した実証プラントで製造する国産バイオジェット燃料での有償飛行を2020年までに実現するほか、2019年夏からは実証プラントで製造した次世代バイオディーゼル燃料の供給を開始する。
次世代バイオディーゼル燃料は、2014年6月より同社といすゞ自動車と共同で取り組んでいる「次世代バイオディーゼルの実用化に関する研究」の一環で、実証プラントと同様の原料および精製方法により製造した次世代バイオディーゼル燃料を用いた性能試験を実施した。いすゞ自動車では2018年12月より、次世代バイオディーゼル燃料を含有した燃料を用いて、いすゞ自動車藤沢工場と湘南台駅間シャトルバスの定期運行による実証走行をスタートさせる。
ユーグレナの『GREEN OIL JAPAN』宣言では、2030年までにバイオ燃料を製造・使用するサポーターを日本中に広げることでバイオ燃料事業を産業として確立することを目標に掲げており、CO2排出量を抑えることで、SDGs「GOAL13:気候変動に具体的な対策を」へに貢献していきたい考えだ。
同社の志大きな取り組みをきっかけとして、バイオ燃料大国「日本」といわれる日がいつか来るのかもしれない。
GREEN OIL JAPAN
株式会社ユーグレナ
PR TIMESリリース
※1:2015年9月の国連サミットにて、国連加盟193か国が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げた、「貧困に終止符を打ち、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることを目指す普遍的な行動」の目標。
※2:米国のバイオ燃料導入目標は、2022年に360億ガロンと設定されており、同社試算によると米国の輸送用燃料全体の約20%にあたる。
※3:「平成26年度石油産業体制等調査研究 (バイオ燃料に関する諸外国の動向と持続可能性基 準の制度運用等に関する調査)報告書」(株式会社三菱総合研究所)より。
※4:「バイオ燃料の導入に係る 高度化法告示の検討状況について」(資源エネルギー庁 資源・燃料部 政策課)より。