そんな世の中に、一石を投じるシステムが登場した。「props」と名付けられたこの仕組みは、誰かが立ち上げたプロジェクトに対し、資本に関係なく評価するというもの。クラウドファンディングとの違いは、継続的に支援されるという点。応援したい。その気持ち1つで、永続的にプロジェクト(事業)をサポートすることができるのだ。
提供元は、昨年設立のYourTopia。代表取締役プロジェクトアーティストの竹内 祐太(たけうち ゆうた)氏に、話を聞いた。
・資本主義とクラウドファンディングの次の形
Q1:「props」とは、どんなサービスなのでしょうか?仕組みや特長など、詳細について、あらためて教えてください。「props」とは、株式市場とは異なるルールで動く市場です。“市場、文化、経済”の創出をめざすものなので、いわゆる“(ITの)サービス”とは、少し違います。
応援チケットの取引所とも言えます。上場したプロジェクトは、応援チケットを発行することで、支援者と資金を募れます。チケットの価格は、需要と供給で変化し、ユーザー間での売買が可能です。
特徴は、発行したチケットがユーザー間で売買されるたびに、売買手数料の一部が、プロジェクトに入ること。支援額によって、ユーザーが評価される価値主義文化も、大きなポイントです。
Q2:このようなサービスを提供するに至った理由は、何でしょうか。きっかけと経緯について、お聞かせください。
最も大きな理由は、私の中に、「“自分に正直に生きられる世界”に近づけたい」というエゴがあることです。やりたいことができない理由として、お金をあげる人は多いはず。そこを解決する一つの選択肢になれば、と考えています。
価値とお金の隔たり、お金の目的化、お金以外の価値の存在など、自分の中にさまざまな問題意識があったことも、関係しています。ちょうどその頃、クラウドファンディング と資本主義の次の形を、自分自身が模索していたため、先ほど述べた要素を、一つの作品に落とし込んだという感じです。
・1つの選択肢として浸透させたい
Q3:日本を含め、ほとんどの先進国経済は、資本主義によって動いています。価値主義市場を導入することで、経済はどのように変わるのでしょうか。既存の経済を変えるというよりは、一つの選択肢として存在するものだ、と考えています。例えば、資本主義を100メートル走とするならば、社会主義はみんなで一緒にゴールすること。価値主義は、水泳という新しい種目を作ることだと言えます。
変化という点では、境界の消失・目的への回帰が進むのではないでしょうか。価値主義市場でのチケット購入基準は、“応援したかどうか”という一点です。分野や属性といった境界がないのはもちろん、プロジェクトそのものが評価の対象となるため、目的に目が向きやすくなります。参加するユーザーにとって、お金を与えた額が評価対象となるので、よりアクティブな経済圏となるはずです。
Q4:正式リリースまでの展開と、その後の予定について、教えてください。
現在は、2019年1月の市場オープンを、目標にしています。これから本格的に、資金や人を募っていくという段階です。従来のサービス概念から脱却するため、ゼロ行程からのプロセス共有と透明化を、テーマにしています。そうすることで、いちサービスではなく、市場・文化・経済として、認識してもらえるのでは、と考えています。
規模としては、まず実験的に、10個ほどのプロジェクトから始める予定です。ウェブには、最低限の機能を稼働します。その後、様子を見ながら、インフラとなる規模まで、順次拡大していければ、と思っています。
お金ではなく、その人の中にある“価値”が、資産や信用になる。マネークレイジーになりがちな現代に、新たな主義を提供することができるか。来年以降の展開に注目したい。(取材・文 乾 雅美)
価値主義市場 props