しかし、正確なモニタリングには、脳にプラグを差し込み有線で接続する必要があり、身体へのダメージが課題となっていた。
そこでMITの研究チームは、MRIで用いられるセンサーを用いて、脳内の電気信号や光を検出する新しい技術を考案した。
無線通信機能を備えた小型センサーを用いたこの方法は、侵襲性は低いのに微量な電流も測定できる優れものだ。
・脳の活動部位を空間的に捉えられる
MITの研究チームはセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質を検出できるMRIセンサーを開発している。従来、MRIでは血流の変化を見ることで脳の活動を間接的に測定する。MITの研究チームの開発した新しい技術では、情報伝達の際に発生する電気信号を直接観測することで、より精密に脳の活動を測定できる。
脳内の電気的活動を測定する脳波検査(EEG)では、脳のどの部位での活動かを特定できないのに対し、新しい方法では活動が起こっている脳の部位を空間的に把握できる。
・MRIセンサーを数ミリにまで縮小
MRIでは、血液中の水分に含まれる水素原子から放出される電波を検出することによって機能する。電波は通常、MRIスキャナ内の無線センサーによって検出される。MITチームはこの無線センサーのサイズを数ミリにまで縮小し、脳に直接埋め込むことで電波を受信することに成功した。
センサーは水素原子からの電波の周波数と同調。センサーが電波を検知したとたんにチューニングして周波数がずれる。これをきっかけに、外部のMRIデバイスによるスキャンが開始されて画像を生成するしくみ。
センサーは、単一のニューロンによる電気信号、ニューロン群による電気信号のどちらのものも同様に検出できた。
・電力供給は外部デバイスから
ラットを用いて生体の脳組織内で機能するか調べたところ、従来難しかった組織の深部にある発光酵素の正確な位置が特定できた。センサーへの電力供給は外部MRIデバイスの電波によりおこない、バッテリーは不要だ。
より多くのセンサーを脳に組み込み、広範囲にわたる脳の活動をセンシングするために、さらなる小型化の計画もある。
センサーを数百ミクロン程度にできれば、注射器などでも挿入できるようになり、身体のいたるところに設置できるようになる。これにより、筋肉収縮や心臓活動など、脳以外のさまざまな身体部位の電気的活動もモニタリングできるようになるとのこと。
参照元:Monitoring electromagnetic signals in the brain with MRI/MIT News