温暖化による影響も深刻で、局地的な水の移動により広大な干ばつ地帯がうまれると予想されている。
すでに世界で約8億人が水不足に直面していて、近い将来これが他人ごとでなくなるだろう。
こうした世界の水不足問題に対処するための技術コンペが心強い。
・空気から真水を抽出するコンペ「XPrize」
2016年から開催される「XPrize」の今年の勝者はSkywater Alliance。彼らは「WEDEW(wood-to-energy deployed water)」と呼ばれる新しいシステムを発表し、賞金150万ドル(約170万円)を獲得した。
XPrizeのルールは、1日に2000リットル以上の水(100人程度の日常的なニーズに十分な量)を大気から抽出し、その際クリーンなエネルギーを活用。コストは1リットルあたり2セント以下に抑えるというもの。
コストがかかりすぎて効率が悪い海水の淡水化に対し、大気に含まれる水は利用しやすい。
大気には12兆ガロンの水資源が含まれていて、70億人が生活で使う水の総量350~400億ガロンを十分まかなうことができるものだ。
・雲のしくみを利用した「Skywater」とバイオマス発電を組み合わせ
WEDEWは、既存の2つのシステムの組み合わせでできている。
1つは、雲が形成されるしくみを再現したボックス「Skywater」だ。湿気を含んだ温かい空気を送り込むことで、それが冷たい空気にぶつかって水滴を生成する。こうして生成された真水は集められてコンテナ内のタンクに保管。飲み水としてボトルに注ぐことができる。
さらには、水生成プロセスで使用する電力をまかなうべく、低コストなエネルギー源であるバイオマス発電装置を組み合わせている。装置に木材チップやココナッツの殻などを詰め込むと、熱分解により蒸発が起こる。
・エコフレンドリーな「WEDEW」を世界で展開
バイオマス発電によりできた炭は、土に混ぜると植物の成長を促す肥料となるため地球にやさしい。地域によってはバイオマス発電の材料に、干ばつや害虫によって枯れた松の木を使うこともできる。これらが森に残っていると、火災が発生してCO2を放出する危険性がある。
また、木材が少ない地域では、バイオマスではなく太陽光やバッテリーによる電力で稼動させてもよい。
Skywaterはすでに一部の地域で実用されているが、バイオマス発電と組み合わせたWEDEWはXPrize用に試作されたものだ。Skywater Allianceは、獲得した賞金を使って、WEDEWを世界中で展開していく計画だ。
参照元:A device that can pull drinking water from the air just won the latest XPrize/Fast Company